講演録『誰にも話せなかったセックスの話』Part2
「セックス」と一言でいっても、感じ方や、したい頻度は人それぞれ。大好きな人と心と体のコミュニケーションをしたければ、まずは自分の心と体をよく知ることから。伝えにくいことを相手にちゃんと伝えられる人は、普段どんなことを意識しているのか、その秘訣を聞いてみました。
2018年9月30日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション5C
▼登壇者情報
スピーカー/
ハートリー 明子
Body Mind Organic Consulting Inc.
中島 雅美
Love Guide Messenger / エッセイスト
鳴神 恵美
スーパーバイザー
山崎 明美
セクシュアルヘルス・コンシェルジュ&大学教員
質問家/
塩見 恵美
パートナーシップ研究家
セックスレスになる理由もいろいろで、性の話に「普通は」は無い
山崎:セックスする人としなくてもいい人と、30~40代くらいから分かれるのかなーと思いますね。
自分が企業で働いていたときに、ものすごく忙しかったので、やっぱりここまで働いちゃうと性欲がなくなる男性も多いのかなーと思います。仕事場で大学生を見ていても、20代っていちばん男性ホルモンや女性ホルモンが出て、セックスができる時期なんですけど、あまり興味がない人もいて、そうかと思うと男性性やセックスの能力が強い人もいるし、セクシャルヘルスや性の傾向を教えていると、「普通は」とか「通常は」という言葉は禁句なんですよね。
あと、男性はメタボリックシンドロームと性能力は関係するという話、知っていますか?
全員:……
山崎:聞きたい?
ハートリー:聞きたい聞きたい!
山崎:ペニスの中の血管って1ミリぐらいしかなくて、興奮するとそこに血液がガーって流れ込んで勃起するわけですね。ということは、そこが動脈硬化を起こしていると勃起しにくくなるんです。血液が通りにくいから。だから、ED薬って実は血流を良くするためにも使われるんですよね。EDって性のことだけでなく、健康管理なんですよね。セックスレスになる理由も本当にいろいろあると思います。
※ED:Erectile Dysfunction 勃起機能の低下
ハートリー:そうですね、いろんな視点があって、いろいろ複雑化してますね。
山崎:解決策はその人それぞれなんですけど……。
ハートリー:でも「問題」というのは、2人がいて、どっちかがセックスしたい、どっちかがセックスしたくない、これが問題なんですよ 。セックスしたくない、したくない、が両者だったら全然しなくていいですよね。「手つないで一緒にいて幸せ」でいいじゃないですか。だから「セックスしよう!」という会じゃないですよ、これは(笑)。
山崎:組み合わせですよね。
ハートリー:そう、組み合わせですね。
山崎:更年期の方の PTA の集まりに呼んでいただくことがあるんですけど、いつもは”子どもにとって”っていう講演を年に2回やってるんです。でも、”子どもにとって”ばかりが多いので、自分たちのことを少し考えたいということで「年齢変化と性の健康」みたいなことで話をしたことがあるんです。
あとで感想を見ると、「”今日だけ”はちょっとだんなさんに優しくなれそう」という意見があって。”今日だけ”じゃないんですけど……(泣)、みたいなのはありますね。
ハートリー:優しくないんだね、みんな、だんなに。
山崎:どうでしょうね、素直にセクシャルな話が言えないって、普段のコミュニケーションにも何か問題があるのかもしれないですね。
ずばり!あなたにとって”セックス”とは何ですか?
ハートリー:”おセックス”って一言で何ですか?りんごろにとって。
中島(りんごろ):えー、「心の潤い」。
ハートリー:いいねー、鳴ちゃんは?
鳴神(鳴ちゃん):私、「体の対話」。体でする対話ですね。
ハートリー:すごい!私的には最高の、「最上級のコミュニケーション」って思っています。
山崎: そうですね、コミュニケーションですね。体と気持ちと両方整わないとうまくいかない。
ハートリー:女性って穴が空いてるじゃないですか。だから男性からそこを埋めてもらって初めて完結するという説もあるんです。そういう意味で女性ってその喜びを知らないで生きているとあれなのかな、結局、女性ってそこを求めてたりするんですよ。コミュニケーション+男性に穴を埋めて欲しい、みたいな。ちょっと依存的な考えになっちゃうかもしれないんですけど。
山崎:いろいろですね。人それぞれだけど、やっぱり自分の自己肯定というか、「自分の存在価値を男の人とのセックスで代替にしてる」ということがあって。
セックスは手っ取り早く親近感が持てる行為だと思うんですね。肌感覚があるから。だから若い人じゃなく、大人でもセックスをすると相手と信頼が結べたような錯覚しやすい行為でもあるのかなと思います。
ハートリー:それが SEX 依存症とかになるんですね。
山崎:依存症とか。まぁ、そこまでいかないまでも、すぐにあの……
ハートリー:お股開く?
山崎:(言ってくれて)ありがとうございます。そうですね、そういうこともありますね、たまにはね。
ハートリー:(鳴神を見て)ここ、顏的に……
鳴神(鳴ちゃん):顔的に?
ハートリー:匂うんですけど。すぐやっちゃうタイプ?
鳴神(鳴ちゃん):どうだろうなあー、今はずっと1人の人ですけど、でも本当に若い20代のときなんか、声をかけられてそのまま行ったことも、もちろんあります。
ハートリー:ありそう~~~(笑)。憧れます!私そういうのできない。
鳴神(鳴ちゃん):できないの?
ハートリー:こう言いながらも、下ネタ言いながらも、できないー!
鳴神(鳴ちゃん):でも本当にそうで、さっきの話にもあったように自分自身の軸がぶれていたり、ちゃんと定まっていないから誰かに自分を埋めてもらいたい。体もそうだし、心もそうだし、一時的な錯覚で自分を保てたっていう部分はありますね。
鳴神(鳴ちゃん):20代で大学を卒業して仕事に慣れないときは、自分自身にいつも不満があったから、そういうときに本当に優しくしてくれる人に単純に”流れやすい”。だけどその経験があるから、自分の軸ができていくし、自分が何が好きなのか、何をしてもらえる人だったら体の感覚が合って、自分の心も満たされるかがわかったように思います。条件じゃないんですよね、そこは。
お金持ちがいいとか背が高い方がいいとか、昔は結構言っていたけど。そうやって経験を積んでいくうちに本当に満たされていくんじゃない?
ハートリー:じゃあやったほうがいいよね、それって。
鳴神(鳴ちゃん):それも実験と経験のひとつだと思うから、あくまで”やりまん”の人が悪いとは思わない。
ハートリー:もちろんもちろん。
スキンシップも下ネタも当たり前の家庭環境が増えたらいい
中島(りんごり):仕事が忙しいというのはありますよね。プロセスにエネルギーを使うより、手っ取り早くできちゃうほうが楽というのはあって、そのときに満たされてエネルギーになるならとも思うけど、でもそれはプロセスやつながりに喜びを持てるということを知らないだけだと思うんですよね。
例えば、すごく仲良くて幸せそうでスキンシップが多い親って日本は特に少なくて、それが当たり前。むしろ親は子どもにはスキンシップを見せない人が多いから、子供がそうなっていかない。私は子どもが小さいときから、あえて触れることを10歳まではすごくやると決めていました。スキンシップがあることが当たり前、ないと寂しいぐらいになって欲しい、そして性のことを話せる環境でいたいなと思っていました。
上2人は男の子なので中学生ぐらいになったら下ネタも始まって、「母さんのパソコンを……」とか言い出して、「見え見えだろー」って(笑)。一生懸命履歴を消して、私が見てた履歴まで消えちゃうから「悪いけどやめてくれ」「ブックマークしてくれ」と。「君のフォルダーつくるから、そこは見ないから。それは健全だ、いいんだ」と。
親に堂々とするというのは難しいかもしれないけど「女の子の体というのはこういう仕組みなので大事にしたほうがいいよ」「すぐ妊娠してしまわないように」とか、そういう話はすごくしてきました。
ハートリー:いいですね。いいよね、お母さんがこんなにエロいとね(笑)。
中島(りんごろ):もう絶対に必要だと思うんですよね。だから、そこから逃げないように向き合えるような環境、しかも「それ当たり前だよ」と言える人になって欲しいんです。
中島(りんごろ):一番下が娘なんですけど、上のお兄ちゃん2人がすごい言うので娘もそれが普通と思ってるから、小学校の時に学校で「17,8(歳)ぐらいになってくるとセックスとか考えるよね~」って言って(笑)。それで学校の先生に呼ばれたことがあるんですよ。「お嬢さんがこういうことを皆さんの前で言っちゃったのですが、大丈夫ですか?」「ちょっと皆さんに刺激が強かったので」みたいなこと言われて(笑)。
「あのね、そういうのは、学校ではちょっと言わないほうがいいかもね」という話を娘としたり(笑)。私はこういう環境が増えたらいいんじゃないかなとすごく思います。
ハートリー:素晴らしい環境、それ! 下ネタオッケーな。
「どうしたらもっとお互いが気持ちよくなれるんだろう」と考える
山崎:今、学校の先生が「性の話や性教育をどうやったらいいかわからない」という声があるんですね。私も「性感染症予防」とか「望まない妊娠の予防」とか、先生方が心配なテーマを外部講師として依頼されることがあるんです。
そうかと言えば、保護者が集まるところで「性教育はすごい大事ですから!」という性教育に熱心な学校もあるんですよ。差があるんですよね。これは海外でも同じです。
りんごろみたいな親はまだまだ少数派で、大学生を見てると「性のことは言ってはいけないもの、隠すもの」という感覚の人も多いですよね。
ネットでは、ハートリーさんのように性のことを語っている人にメルマガの読者がすごくいるじゃないですか。性教育をやっているネットも人気だし、みんな欲していますよね。
ハートリー:みんな欲してます。欲してます。
中島(りんごろ):大っぴらにする必要はないかもしれないんですけど、唯一パートナーとは大っぴらにしていいと思うのよね。そこでいろんなことをやることが一番いいんじゃないかなと思って、私は研究を重ねているんです。
ハートリー:これ絶対に大事。
中島(りんごろ):そうそうそうそう。お互いに「言えない」とかそういうところに視点を置くのではなく、「どうしたらもっとお互いが気持ちよくなれるんだろう?」。
だって美味しいものを食べたい、じゃあ料理上手くなろう、本を読もう、とか思うわけじゃない? それと同じように考えたらいいと思うの。考え方を変えるということ。
例えばレイプとか、そういうことはまた違うと思うんだけど、そうじゃない場合は、あのとき傷ついたということも「ただ考え方を変えればいいだけ」。「今までが違ってたんだ、じゃあこっちなんだ」「今日からアメリカに暮らすから、アメリカのルールで」、みたいに受け入れていけばいいんじゃないかなと思うんです。簡単じゃないかもしれないけど、それが一歩かなと。
中島(りんごろ):私も”裸エプロン”のほうにいくにあたってはどこかで変えたんですよ。方向性をね。夫婦でもっともっと深く一生この人とやって行くんだったら、もっともっと知り得るところまで知りたいという方向に、どこかでポンと決めた時に「いいじゃないか、いいじゃないか」って。まぁ男みたいだけど(笑)。
全員:あはははは~~~(笑)。
鳴神(鳴ちゃん):おやじだった、今(笑)。
自分のツボを知るために、1人エッチを大推奨します
塩見:性のことって2人で築き上げていくものだと思うんですけれども、男性のことは男性に、女性のことも女性に聞かないとわからないじゃないですか。でも、どこをどうしたら気持ちいいのかとか、どういうふうに男性に伝えたらいいのか、というのがわからない人が結構多いと思うんですけど、そういうのって自分で知るために何かされてますか?
ハートリー:やっぱりあのー、”1人エッチ”をお勧めしてるんですね。自分のツボを知らないと教えられないじゃないですか。なので1人エッチを大推奨しています。でも1人エッチだけだとちょっと飽きて、みんな欲求不満になっちゃうんで、ちゃんとパートナーにどこが気持ちいいかって……でも結構伝えられないもんですかね、これ。
塩見:そうですね、力加減とか、ねー。
ハートリー:「そこじゃねーよ!」じゃなくて、「も、もうちょっと~……」みたいな、なんか優しく言うとか。2人のそれ(伝え方)をつくらないとダメなんですね。その習慣と言うか(山崎を見て)ねー。
山崎:そうですね、世代もあるかなと思います。傾向と対策、自分のパートナーがどんなタイプか見極める、お見立てする。この人にはどの辺から伝えていくといいのかなってあると思うんですね。
例えばちょっとプライドが高い人にストレートに「こうして」というのは、ちょっとムッとしちゃうかも。「こういうのがすごく好き」「こうしてもらうとすごくいい」とか言ったり、あまり堅い話にならないように、「女性の体ってこういうふうになってるから、こういうふうにされるとちょっと痛くなったりするんだよね、一般的に……」みたいな話を私の場合はしています。シチュエーションも選んで。
皆さんはどうですか?
ハートリー:一緒にビデオ見るとかね、そういうエロいビデオ。(塩見を見て)どう?
塩見:夫婦2人だけの家庭だったらありえるかもしれないんですけど、やっぱりね、家に子どもがいたりするとちょっと見にくいですよね。
ハートリー:夜中に。
塩見:夜中にね、音小さくして。
ハートリー:そうそうそう。
塩見:なるほど、そういうのもありですね。
ハートリー:海外は子どもと絶対に別の部屋なんですよ。夫婦というものはリスペクトされてるので。日本の環境ってすごく難しいだろうなって思います。子どもと一緒に川の字になって寝るとかね。どんどんセックスレスになりますよね。
山崎:”膣圧”を測る棒があるのは、結構女性誌でいろいろ書かれているんですけど、知ってますか?
ハートリー:皆さん”膣圧”知ってますか?”膣圧”。
山崎:出産した後に、女性の膣に棒を入れてぎゅっと力を入れてもらうと、どのくらいの圧がかかってるか数字が出るんですね。
これはフランスでは普通になっていて、なぜかと言うと「夫婦の速やかな夫婦生活(セックス)が幸せな家庭をつくる」という発想があるんです。みんながセックスしなければいけないというわけではないんですけど、出産したあと、普通の経膣分娩だとある程度膣が開くので、そのあと戻るのにやっぱりちょっと日にちを要するんです。
それで(膣圧を)測って、既定の数字になっていないときは、練習を教えてもらって、お家でエクササイズをして、また測るんですよね。
山崎:だからそういう「哲学」というか、生きていく上で「性」がどの位置づけにあるかというのが国によって違うんですけど、ありますね。
「性」は「生きること」と「生き方」と直結してるから、ものすごく大事なんです。生殖器やセックスだけではなくて、コミュニケーション、妊娠、出産の法律にも関わってくるし、子育てでも制度に関わるし、すごく(範囲が)広いです。
性=性行為、妊娠、出産とか、そこに集中しているような気がするから、話せなくなっちゃってハードルがかかったりするのかなって、性のことに長く関わっているとそう思います。
ハートリー:なるほどー。生き方ですよね、「性」はね。
山崎:どうですかね、皆さん「性」は自分の中にどういう感じであるのかな?
ハートリー:そうですね。それぞれみんな違う価値観ですよね。
(パート3へ続く)
写真記録チーム/田島聖子、多賀 健、猪野裕介
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