教えるのではなく、自発的に動く「環境」をつくる。そして、怒らない、期待しない、執着を手放す

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講演録『何があったら人は育つのか?』Part2

 

セッションの中盤では、スピーカーがそれぞれの経験をもとに、人が育つための具体的な実践についても語ってくれました。

2017年10月1日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション5C


▼登壇者情報

スピーカー/
山本 伸之
組織力&人間力向上型コンサルタント/講師。

小園 英昭
『コゾノ式良くなる人事組織研究所』主宰。和太鼓奏者。

鈴木 克彦
起業家育成の専門家

質問家/
多賀 健


教えると、教えられるのを待つようになる

多賀: 今、外し方として、それぞれのキャラクターの外し方とか動機づけの思い出し方というのが出たんですけど、のっぽさんは、その動機づけをもう一度思い出してもらうというか、強くするとか、それを邪魔してるものを外すってするときに、何かやっていることはありますか?

鈴木: 僕はですね、よく使う質問があって、「それ誰が決めたの?」って。

全体: ほぉ~!

鈴木: それをよく使いますね。あと僕はもう一つ言うのは、「100点目指すな」。

全体: ふ~ん。

鈴木: 教えるとね、100点を目指したがるんですよ。教えると間違えたくなくなるの。

全体: ふ~ん。

鈴木: 教えられた人が。だから、萎縮します。

さっき小園さんが言っていたように、勝手にやらせると自発性とか自由というのが出てきますから、想像以上というものが出てくる。で、想像未満かもしれない。その時はちょっと手を貸せばいいだけで、ちょっとでいいんです。

会場: ふ~ん。

鈴木: 教えると今度、教えられるのを待つようになります。

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全体: う~ん。

鈴木: だから、口うるさい上司の下でみなさん働きたくないでしょ? 自由度を奪われるからですよ。自由を奪われるから。そのちょうどいいところを探していくというのに、僕は質問というのは1番いいと思います。

(会場にいるミヒロさんに向かって)ミヒロさん、いいまとめ方になったかな?(笑)

小園: まとめるにはまだちょっと早いんじゃないですか?(笑)

鈴木: 質問ってやっぱりすごく大切で、僕、企業の上司の人たちからいろんな相談されるんですけど、「自発的に動く部下とか子どもってどうやって育てるの?」って言われるんです。

「聞きな」って言うんです。いつも聞くんです。いつも聞いてください。教えるから(相手が)待つんだよ。自発的に動いてほしかったら「君ならどうする?」って。

僕が言うのは、「いつも僕よりいい意見持ってきな」って。全部やらせてあげる。

多賀: う~ん。なんだろ…、さっきの恐れかな…。

たとえば任せられない人もいるじゃないですか。

鈴木: はい。いますね。

多賀: その人と任せられる人と、巷の本ではあるわけじゃないですか、任せたほうが伸びる。管理しないほうが伸びる。でも、できないという人もいっぱいいますよね。

そこは、何がそれを邪魔してるんですか?

鈴木: えっとね、その人がほんとにやりたいんだったら、「その結果の責任は僕がとる」ってはっきり言いますね。

多賀: ふ~ん。

鈴木: だって、子どもを自由にやらせたら、責任とるのは親でしょ? 部下に自由にやらせたら責任とるのは上司ですよね。当たり前だと思います。でも、責任取りたくない人が多いんだよね。

多賀: ふ~ん。責任をとりたくない。ふ~ん。そこなんですかね、責任……。

 

目標の達成方法より目標の設定方法が大事

小園: ま、そうですよね。責任。わかりやすく私も太鼓の話で思い出したことがあるんですけど、目標の達成方法とかよく言うじゃないですか。目標の達成方法よりももっと、目標の設定方法のほうが重要なんじゃないかと思っていて。

会場: ふ~ん。

山本: たしかに。

小園: 特にその今の太鼓のメンバーのブロックを外していくじゃないですか。「うわぁ~」っていくんですよ。やっぱり最初は、ブロック外して、ぐわーっと伸びるんですけど、その後プラトーというか伸びないという時がくるんですよね。その時に私が意識しているのは、「五分五分のチャレンジを与える」ということを意識していて。

鈴木: わかる。

会場: ふ~ん。

小園: できるかできないか五分五分という。ここの見極めってけっこう難しくて、たとえばステージに出すときにセンターに置くのかサブに置くのか、どのパートで出すのかというのもやっぱりあるんですね。

その時に、ま、全員というのはなかなか難しいんですけど、誰もが主要のメンバーに対して参加できる、今こいつ伸び悩んでるという子に対して、五分五分のチャレンジをさせるんですよ。

それやったら、五分五分だと向こうだって半分ビビるじゃないですか。その時に私の二つ目の英語のフレーズが出てくるんですよ(笑)。

山本: いいですね(笑)。

小園: ほんま、この二つしかないんですよ(笑)。

多賀: 重要ポイントですね(笑)。

小園: 英語というか、全世界に通じる。中国人にも欧米人にも日本人にも言うワードが「Challeーーーーーnge!!」って言うんですよ。

全体: (笑)

小園: だからあの、「挑戦してみ」とかじゃなくて、ふざける感じでハイテンションで、「Challeーーーーーnge!」って言う。で、なんか言ってきて、「でも…」ってきたら「Challeーーーーーnge!」って(笑)。

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会場: (笑)

小園: 「あぁわかりました」ってすぐなるんで。ほんまそうですよ、与えるほうが軽いノリというか、もともとこういうキャラなんで、はい(笑)。

「Challeーーーーーnge!」って言うたら、もう「わかりました」って言ってやってくれるんですよ。

で、五分五分なんで、もちろんうまくいかないこともあるんですけど、別に構わないんで。できなかった時に、ベテラン組というかできるメンバーがいると思っていて、できなかった時にできるメンバーがカバーするということがすごく重要で。

それを入ってきたばっかりの頃は、誰かがカバーしてくれた。それを、自分ができるようになったら下にやってあげなさいということを、これ、応援団で教えてもらったやり方なんですけど、「俺に返さんでいいから下に返してあげろ」というのを伝えることで、すごいまとまりとか。

鈴木: 縦社会だね。

小園: 応援団ですからね、育ったのがね。

鈴木: 体育会系だからね。

小園: はい、そういうのがあったかなと思いましたね。ま、目標設定ということで。

 

本気にさせたかったら、自分がまず本気の姿を見せる

多賀: 今、目標設定という話が出て、ま、体育会系繋がりでもあるんですけど、のっぽさん、元はバスケットボール選手、プロの選手であって。

小園: 日本代表ですよね?

鈴木: はい。

会場: へぇ~。

多賀: で、日本一にも2度輝かれて、その後、チームを変わられて昇格請負人というふうになられて。一個上のステージに上げていくというところで活躍されていたと聞いていて。

まさに、その目標の設定の仕方というところが1つポイントだったのかなって思うんですけど、何か心がけられたことはありますか?

鈴木: そうですね。共有させるということですかね。みんなを本気にさせるというのがいちばん大変です。

全体: う~ん。

鈴木: 目標に向かって本気になれば、ま、できないことってあんまないですね。だけど、本気にさせるのは大変だよ。

小園: (笑)

多賀: どうやって本気にさせたんですか?

鈴木: こっちが本気になることですよ。本気の姿を上が見せないと、本気になんないです。本気になっている人が周りにいないのに、どうやって本気になる?

本気って本を読んでなるの? あ、本気の本を書いてる人いたらごめんね(笑)。

全体: (笑)

鈴木: そうですよ。周りにプロがいないのに、プロになるのは無理です。本気の人がいないのに、本気になるのは無理ですよ。知らないんだもん。

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小園: そうですよね。それはほんと中国の現地法人で頻繁に起こってる話ですよね(笑)。

鈴木: ね。マネージャーも本気でやってないのに、心動くスタッフいないでしょ?

多賀: ま、でも、周りにその本気の人がいるのかって言われた時に、いる人はいいですよ幸せでね。でも、「私の周りに本気の人がいないんですけど」という人もいるかと思うんですけど、そういう人はどうやって自分を成長させるとか、変えていったらいいですか?

鈴木: 2人(小園と鈴木)本気。別に家族とか社内の中にいるという問題じゃないと思うんですよね。自分がその人たちと日々時間を共有していることで影響されることっていっぱいあって。

やっぱり自分がいちばん尊敬している人たちのアイデンティティにだんだん近づいていくというのは、やっぱり教育の中にあるんですよね。

上司が尊敬されていなかったら、尊敬される…自分が目指している部下というのは育たないわけです。やっぱり親が尊敬されないと「私たちみたいになりなさい」っていってもなかなかなれないわけですよ。

教え方というよりも、生き方とか考え方のほうがやっぱりすごく大切で、そういう人たちとみなさんが時間を共有していかないと、ま、なんとなくの時間を過ごしていくわけです。

やっぱりみなさんが本気になるところからスタートしたらいいと思うんです。

多賀: 今ちょっとだけ思い出したんですけど、指導者の方で全日本の監督経験の方の指導を受けられたということだったんですけど、その経験で何かを感じられたということですか?

それ以前に自分の中に本気はあったということですか?

鈴木: う~ん、やっぱりそうですね。僕も最初は、本気の人たちに影響を受けて本気になっていったというのが現実じゃないですか。

全体: う~ん。

鈴木: 体育会って、あんまり考えてないんで。

多賀: (笑)

小園: そうですよね(笑)。

鈴木: 中学から高校にバスケ部に進学しました。そうするともう、練習の環境が待っているんですよ、やんなきゃいけないの。で、いつの間にかそれが当たり前になっちゃうんですよね。

だから、ある意味、考える暇をもたしてくれないのがよかったかもしれないです。バカにとっては。

小園: 同感。バカとしては(笑)。

鈴木: 考えるということは選択肢があってすごくいいように思うんだけど、逃げる選択肢がいっぱいあるんですよ。

会場: う~ん。

鈴木: だから僕は逃げる選択肢がなかったので、アンソニー・ロビンズなんかも言いますけど、「決断より環境は勝る」ってその通りだなって思いますね。やっぱり誰といるかというのはすごく大切。

 

「人が育つ環境」とは?

多賀: ふ~ん。なるほど。やっぱり環境というところが出たんですけど、逆に言うと、人が育つ環境ってどんな環境というか、どんな条件だと思いますか?

今ひとつ、逃げられないとかというのが出たかな。

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鈴木: 逃げられないの前に、「目標を共有する」ということが大事なんですけどね。

多賀: あぁ~、はいはいはい。

鈴木: 目標を共有できない人たちをチームに入れない、というのもすごく大事です。

多賀: あぁ~。

鈴木: 組織づくりの中ではね。だからスモールビジネスはそれできるけど、大企業はそれ無理ですよ。

多賀: うんうんうん。目標に合わせる。

鈴木: はい。

多賀: どうですか? 「人が育つ環境って何だろう?」って言われた時に思い浮かぶものってありますか?

小園: えっと~、私、今現地法人で前職だと20名くらいのスタッフがいたんですけど、その時も太鼓の時も学生の応援団してる時も同じなんですけど、「共感してくれる人しか入れない」というところは、採用の段階からすごい意識をしてますね。常に。

だから、応援団という世界も非常に育つんですね。あれ、軍隊のようなところなんですけど、私がいた大学とかって、たまたま多賀さんも同じ大学だったというのもあるんですけど、応援団って学ラン着た怖いお兄ちゃん達とチアリーダー部と吹奏楽部が応援団なんですよ。

だから、150人から200人くらいの所帯なんですね。その150人から200人のメンバーを束ねれる団長というのを4年間育成しないといけないんですよ。

それがあるから回ってるんですね。そしたらその4年間で、短期間で200人を束ねる人間を育てようと思ったら、促成栽培なんで、ぶっちゃけ体罰とか含めて、すべてやらないと間に合わないんですよ。

鈴木: そうですね。

小園: だから、ああいう世界って体罰とか私もやったし、やられたんですけど(笑)。というのがあるのかなって思っていて。

やっぱりその中に入ると、すごい理不尽だし、上下関係とかもう天と地以上の差があるだとか、あと最高レベルの敬語とか、全部叩き込まれて、できなかったらしばかれるという環境なんですね。

でも、そこに入る人間というのは、別にどんな素質を持っているやつでも全然大丈夫で、これ、4年間いると育つんですよ。そういう環境だと。

だから、あとはそこで……、ま、応援団という世界はすごい特殊なんで、耐えれるかどうかという話なんですけど(笑)。

でも、耐えれるというふうに自分の中で割り切りをつけれるやつしか入れない。ってことだと思いますし、太鼓もやっぱり、その演奏を見てやりたいと思う人じゃないと基本入らない。ってか、一切募集してないんで、他では。

演奏をして、その時にいつでも気軽に声をかけてもらえる状態にするとか、注目を集めるやり方をするとかというので、一般に募集してない。

だから、基本的に来てくれた人はその準備ができてる人なんで、あとはやり方でうまくいくかなという感じですね。

多賀: ありがとうございます。今、体育会系2つ続いて(笑)、体育会系っぽくない(山本のことをうながしながら)。

山本: 僕も昔は体育会系だったんですけど、はい(笑)。昔、よく先輩から「歯出すな」とかよく言われてました。

今の話を聞いていて思ったんですけど、私は割と大きな企業さんをクライアントさんにさせてもらっていることが多いので、環境を言い訳にする人ってけっこう多いんですよね。

鈴木: 多いですよね。

山本:「会社の風土がそうだから」とか「上司がこうだから」とか「人間関係がこうだから」とか。結局、どんな上司が出世しているかによって、自分のモチベーションがズタズタにされる経験というのがいっぱいあって。で、出る杭は打たれるとか、チャレンジしろって言ったのに結果を求められるとか。

小園: あるあるある。

山本: 山のようにある。

私、ま、いろんな会社の経営陣を相手にすることもあれば、管理職を相手にすることもあれば、一般中堅を相手にすることもあるんですが、結局大きな企業になればなるほど、環境って変えられないというか、ま、変えられないことはないんですけど、変えようとするとものすごくエネルギーがかかってロスも多いんですよね。

だから、やっぱりエネルギーがあり余っていて、そういう人たちでチームタッグを組んでやり続ける覚悟がないと、なかなか変わっていかないな、というのはあります。

ただ、誰もがみんな「変わりたい、成長したい」と思っているので、その環境とか上司とかを言い訳にしている人は、「それでいいの?」という。

さっきね、(鈴木が言った)「誰が決めた?」っておっしゃってたことがまさに一緒で、「それがネックになっているのを誰が決めたの?」というのと一緒だと思うんですけど。

じゃあ、その変わらないもの、変わりにくいものに意識を向けているのと、自分が変わりやすいもの、自分がコントロールしやすいものに意識を向けていくのと、どっちを選びますか?という話なんですよ。

仕事には、好むと好まざるとに関わらず、24時間の中で1番、自分の大切な時間を使ってるわけじゃないですか。それがどんどん積み上がっている中で、「今の選択でいいの?」

鈴木: そうですね。

山本: ということを問いかけて、でもだったらコントロールしにくいもの、変えられないものに意識を向け続ける人生をこれからも長く続けるのか、そうじゃないのに行くのか。

というのは、やった上で、自分がモチベーションをアップできるような種を見つけるようなワークをやったり。制約条件を取り外すということに意識を向けたり、というのはやります。

 

誰かの評価ではなく、自分自身に問いかけ続ける

鈴木: 僕、山本さんに一つ質問があるんですけど、僕ね、大企業あんまりやらないんですね。
「自分がやりたいことをやるためには一つ捨てろ」って言うんです。いつも。

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全体: ふ~ん。

鈴木: 「何か一つ捨てるといいよ」って。で、その時、大企業の人たちに言うのは、「評価を捨てろ」って言うんです。起業家とか家族とかの中でいうと、人の目なんですよね。人の目を捨てると、たぶんね、見える世界って変わってくるんです。

多賀: ふ~ん。

鈴木: そうするとたぶん、やりたいことがいっぱいできると思うんですけど。でもなかなかできないんですよね、組織の中にいるとね。

山本: そういう意味で言うと、人の目ってやっぱり気になるじゃないですか。

鈴木: はい。

山本: で、今おっしゃった、人がどんな目が気になるかというと、自分の意識とか行動を否定的に見ている人の目が気になるわけですよね。でも、見つければ必ず仲間というか、ベクトルが同じ人は見つけられる訳ですよね。

だから、どこに意識を向けて、1人だと折れちゃうのでなかなかリターンは少ないけど、自分たちで考えようという仲間を増やしてくというのが、その3回シリーズ5回シリーズの中で、自分一人だけでできることって限られてるので。

鈴木: はい。

山本: そういうそのチーム作りというか、その、自分が気になるキーワード。たとえば、動機でもいいですし、こんな未来でもいいですし、大切にしている価値観とかそういうキーワードが近い人同士でチームを…、自分たちで選んで作ってもらって、その中でどうフォローしていくか、サポートしていくかというのを考えてもらうというのはやりますね。

鈴木: そのブレーンの中での評価というのを楽しんでればいいんですもんね。

山本: そうですね。結局、その評価ってその人にとってほんとにそれほど大事なものなの?

鈴木: 最初だけだと思います。そこに自信だとかやりがいだとか見つけちゃったら、もうどうでもいいことですよね。

山本: そうですね。

鈴木: 最初の区切りをつけるまでというのは、すごく大切のような気がしますよね。

山本: だから、気になることを「ほんとに大事なことなのか?」って自分で問いかけ続けてもらうという感じ。

鈴木: はい。質問ですね。はい。ありがとうございます。

山本: 答えになってます?

鈴木: えぇ、もう十分です(笑)。

多賀: やっぱり自分で問いかけ続けるというのが、すごくポイント、質問が大事。

鈴木: やりたいことをやろうとしたら、そこしかないんじゃないですか?

多賀: う~ん。

鈴木: やりたいことをやるのに、自分の答えがずっとイエスじゃなかったら進んで行きませんからね。

 

今の立場になったそれぞれの道のり

多賀: う~ん。ちなみになんですけど、お三方さんが人を育てるとか、コンサルティングする中でたくさん成功事例を重ねてるかと思うんですけど、それって、最初からうまいこといったんですか? いちばん最初、人を育てるとか人材育成に関わったきっかけって、ま、長くなるとあれなんで(”短く“とジェスチャー)

小園: ま、自分ができないからそれをやっている感じですよね。だから、めっちゃ下手でしたよね。

出身が応援団ってのもあって、もう上意下達、命令、従えコラ!みたいな(笑)。

全体: (笑)

多賀: パワハラというか(笑)。

小園: パワハラ。今で言うパワハラ。なんで、今の時代に生まれてたら私は犯罪者になるんじゃないかなと思うんですけど。

鈴木: それで中国行ったんだ。

全体: (笑)

小園: ま、中国行くとわかりやすいんですよ、彼ら。日本人って表面は「わかりました」って言いながら腹ん中で言いたいこと我慢してるじゃないですか。

でも、中国人ってすごい素直というかわかりやすいんで、表に出してくるんですよ。すごいわかりやすいんですよね。

だから、なかなか中国人の場合は「わかった」って言うたやろ、お前!という、水戸黄門の印籠みたいなのが使えないというか。最初から嫌というんで(笑)。

だから、それは鍛えられたというのはあったかと思うんですけど、だけど全然育成とかというのはできなかったですよね。

なんでできへんねん、こら!としか思ってなかったという。なんでやらへんねん、ボケ!みたいなパワハラ系でした。

多賀: ヒューさんどうですか? 銀行員時代がスタートというのをちらっと聞いたんですけど。

山本: ま、僕は昔から勉強とか学校の授業とかが嫌いで、なんで嫌いだったかよくわかってなかったんですけど。

大学卒業して、就職して、十数年たったときにふっと「あ、教えられることに抵抗してたんだ」って気づく機会があって。

で、今私がなんで教えることをやっているかというと、教えることが機能するには3つの条件が揃わないといけないと思ってて。それは何かというと、①教えてほしいテーマで、②教えてほしいタイミングで、③教えてほしい人から学べる。

しつもんカンファレンス2017鈴木: あぁなるほど。確かに。いい仲間と学ぶことも大事ですよね。

山本: そうそう。誰と学ぶかもほんとに大事なんですけど。

鈴木: そうですよね。

山本: それが結構、その教えたい状態って、受け取り側は教えてほしいテーマじゃなかったり。

鈴木: なるほどね。

山本: 教えてほしいタイミングじゃなかったり、あんたから言われたくないよみたいなことだったりするわけじゃないですか。

鈴木: 僕は大丈夫ですかね?(笑)

山本: この部屋に来てる人は、自己責任(笑)。

鈴木: はい。自己責任(笑)。

山本: ということがあって、銀行ってすごい手かせ足かせが多い職場だったんですけど。あと、私、北陸の福井県という小さいところの銀行にいたんですけど、最後の3年間は「東京で新規のプロジェクトをやれ」って言われて、私がチームリーダーで、営業の男の子と経理部の事務女の子と3人で動きなさい。って、そこから新規開拓が始まったってところがあってですね。

それがとってもいい経験になったというか。何もないところからでもチーム作りってできるし、お客さんにも価値を感じてもらえるし、成果って作り上げられるんだな、という。

もちろんその右肩上がりじゃないです。もういっぱいどん底味わいましたけど、そこからこの“教えない”とか、教えないと育つということをおっしゃってましたけど、そういうこと含めて、結局、コントロールしようと思ってできることって限られてるし、昔はたぶん過去の成功体験が通じてたと思うんですけど、もう昨日の成功体験が通じない時代になってるんで。

“教えない”をずっとやり続ければやり続けるほど、教えることの大切さってすごく実感している部分があるんですけどそういう意味では、すごくうまくいかない経験を会社員時代も、講師コンサルをはじめてからも半年間まったく仕事がなかったですから。

ま、そういうことはすごくいい経験だったなとは思いますけどね。

多賀: ありがとうございました。のっぽさんどうですか?

鈴木: 教えるということですか? 僕教えるというのは、バスケットをやってて教えるというのをいちばん最初にやったのは、大学くらいから教えてたんですよね。当時…、今もそうかもしれないですけど、バスケットの基本って教えられる人がいなかったんですよね。

全体: ふ~ん。

鈴木: ビジネスの世界に置き換えると、ビジネスの基本を教えられる人がいないなと思うんですよね。で、ビジネスの基本って何というと、たぶんみんな、ぽか~んってクエスチョンマークが頭に浮かぶ人、いっぱいいるでしょ?

うん。そういうことを日本で教える人がいない。というのに気づいたのが、やっぱり社会に出てからだったんですよね。それで、ビジネスの基本というのを教えるようになって、で、起業家の育成にきたというのがあるんですけど。

だから僕バスケットやって、大学生から教えてましたけど、バスケットの場合は、ユニフォームを脱ぐという瞬間が出てくるわけですね。もうプレーヤーとして活躍できないという時が来るわけですよ。

なので、チームのために、教えるということ以外に役に立てなくなるタイミングがくるから、教えるということに関してはそういう自然なきっかけが来ましたね。

多賀: ちょっとプロフィールを拝見した時に、まだ選手をされていたタイミングで、心理とか、人の動くところの勉強を始められたみたいなことを聞いたんですけど、何かきっかけがあったんですか?

鈴木: えーっとね、25でリストラだったんですよね。熊谷組という会社でバスケットやってて、日本一のタイトルを2回とらせてもらったり、次の年がリストラの決定の年で、最後のシーズンはNHKが1年張り付いていました。スポーツ界では最初の大きなリストラでしたから話題になってたんですけど、それで結局優勝できずということで、移籍をしました。

そうすると当時、僕、25の時ですから、24年前って大企業に中途採用という制度がないんですよ。

しつもんカンファレンス2017多賀: ふ~ん。

鈴木: なかったんですよね。なので、仕方なくトヨタ系の会社だったんですけど、チームとプロの契約をさせてもらって、プロの一期生で嫌が応なくさせられたという経緯があります。

だからこの業界を僕たちが作っていくんだという使命感は、すごい強かったですよね。なので、自分たちの生き方だとか、ここでどうやって結果を出したらいいのかということを考えていくときに、やっぱり人というものにすごく興味を持ち出したのが正直なところです。

25くらいの時ですね。それで心理学とか、ま、いろんなものを勉強し始めましたね。当時はね、なかったんですよ! セミナーなんかないですよ。僕がセミナーを始めたのが97年。2000年から自分の会社を作ってやってますけど、その時にセミナーなんてやってると「怪しい」って言われたもんね。

会場: (笑)

鈴木: そんな時代だったんで、ほんと勉強するのは大変でしたけど、人に興味を持ち出したのはその時からですね。

 

怒らない。期待しない。執着を手放す。

多賀: で、そうやって積み重ねていって、今があると思うんですけど。

鈴木: はい。そうですね。

多賀: そのスタートした時の自分と今の自分で、変化しているというか成長している部分がもしあれば、ここがいちばん成長したなとか、ここがいちばん変化したなとか、あるとしたらどうですか?

鈴木: え~とね、怒らなくなったかな。

山本: (笑)

多賀: ふ~ん!それはなぜ?(笑)

鈴木: もうだいたい反応はわかってるから。

多賀: はぁ~。なるほど。

鈴木: 思ったように動かないのは想定済みだから…

多賀: うんうんうんうん。

鈴木: 忍耐力がつきましたね。

多賀: ふ~ん。待てるようになった。

鈴木: 待てるようになりましたね。あと、いろんなパターンがわかった。

多賀: ふ~ん。うまくいくパターン、うまくいかないパターン。

鈴木: 全部うまくいかすんですけど…

多賀: (笑)

鈴木: 言い訳のパターンが大体わかってきたので、その対処の仕方もわかってきたし。だから、最初から「こいつ何だ?」とは思わなくなりましたね。

多賀: あぁ~こういうところね、みたいな。

鈴木: いちいち間に受けてました。最初はね。

多賀: なるほどなるほど。ぞのんさん、何が変わりましたか?

小園: 自分がですか? 何が変わったか? そうですね、何変わったかな?

期待するということが著しく減った、という感じですかね。

鈴木: (笑)

多賀: ほぉ~!

鈴木: 期待してないわけじゃないでしょ?

小園: 期待… あ、そうですね。失敗経験がたくさんある中で、失敗したものって、「教えたからこれできるようになってるでしょ」というのがあると、そこに至ってないということに対してギャップで怒りが出てくるんですよね。

山本: あぁ~わかる。それは確かに。

鈴木: (笑)

小園: 内側から怒りが出ちゃうんですよ。でも、そこに気づいたのって、中国人に対してそれをやってる時って、それがなかったんですね。期待値がなかったんですよ。

山本・鈴木・多賀: なるほど~。

小園: だから、どう出るんだろう?というのがまったくわからなかったので、まったく期待値を持たずに教えるとか、いろんなこと試してやってたというのがあって。

その時はもうぐんぐんぐんぐん、変わっていったんですよ。だから、めちゃめちゃ面白いな!って思ってたんですけど、なまじ言葉がわかる日本人とか子どもとか、あと奥さんとか……

山本・鈴木: (笑)

小園: 太鼓のメンバーはですね、みんなやってると「わかってるやん」って思い込んでるところもあって、期待値というものを自分が無意識で持ってたんですよね。

鈴木: あ~、わかるわかる。

小園: そこに至らないことに対する憤りというのが自分の中にあって、それが喧嘩の原因になったりとか、奥さんとの喧嘩とかもほとんどそれなんですけど(笑)。

というのが、「中国人の時には持ってなかったよな、うまくいってた時ってそれ持ってなかったよな」って気づき始めて、なんかそういう期待というのをあまり持たなく……なりつつあるかな。

まだできてないですけどね、完璧には。はい。それが変わってきたことかもしれないですね。

多賀: 期待をしなくなって、そういうイライラもしなくなった。

小園: そうですね。だから、伸びた分だけ嬉しい、みたいな。

多賀: うんうん。基準値が変わって。

小園: そうです。だからここ(手を水平にして目線の高さに上げる)から見てると、足りないからマイナスしかないじゃないですか。でも、基準値(手を水平にしたまま胸の高さに下げる)が今の人たちのレベルだったら、伸びた分だけ嬉しいじゃないですか。

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多賀: なるほど。お互いにハッピーですよね。

小園: そうそうそう。特に中国人に対してはそれがすごいあって、それをこう、純粋に嬉しいから「できるやん!」とかって言うと、彼らは単純なんで、ほんまにそれを繰り返してくれるんですよ。

だからもう、どんどんどんどん伸びていくみたいなことがあって。でも、最初はそこ気づかなかったんで、やっぱり期待値かなみたいな。うん。というのはありましたね。それがいちばん変わったかな。

多賀: はい。ありがとうございます。ヒューさん、どうですか?

山本: あのやっぱ、自分の変化ってたぶん自分がいちばんわからないので。

鈴木: わからないよね。

山本: はい。なので、どう変化したかはわからないんですけど、ま、一つは執着を手放せるというか、結構どうでもいいやというか。自分にとって大切じゃないものにこだわらなくてもいいようになってきたというのが一つと。あと、ときどきお客さんから言われて嬉しい言葉が、「山本さんって仕事でやってないよね」って言われる。

会場: あぁ~。

山本: ことがあってですね、なんかそれはすごく嬉しい言葉だなって思って、「え? 私、仕事としてちゃんとやってますけど」(笑)みたいな感じで言いたくなるんですけど(笑)。

なんかそういうふうに、打ち合わせとかしてる時にお客さんから言われると…、お客さまって日常を見てるわけじゃなくて、3カ月おきとか6カ月おきとか、去年のお話があったときには1年ぶりにお会いするということもあるので、そういうところでいろいろフィードバックをいただけることがすごくありがたいなと、そんな感じです。

>>>パート3へ続く

しつもんカンファレンス2017

撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介

 

 

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