未来のブランドは“個性が表現されたもの”。 その人を中心にファンが集まって、完成する

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講演録『未来のブランドの授業』Part1

 

ブランディングコンサルタント、ロゴデザインを手がけるデザイナー、そして3つの業態を経験した旅館オーナー。ブランドづくりの現場にいる3人による『未来のブランドの授業』は、「未来のブランドって何?」という問いかけから始まりました。

2017年9月30日開催
しつもんカンファレンス in OKINAWA セッション3C


▼登壇者情報

スピーカー/
深澤 里奈子
湯河原リトリートご縁の杜Goen no Mori 代表取締役

上野 律子
魅力ぶらんど 代表、女性視点ブランドコンサルタント

高橋 宏比公
GRAFICO DESIGN inc. 取締役YELL 代表 、Art Director/Graphic Designer

質問家/
田中 聖世
まさよ操体サロンオーナー兼セラピスト


田中聖世(以下、ひじりちゃん):しつもん家の田中聖世と申します。よろしくお願いします。ニックネームはひじりちゃんなんですけども、75分間皆さんと楽しんでいきたいと思います。

本日、未来のブランドの授業のセッションのテーマということで未来のブランドとはなんだろうなと、テーマをいただいてからずっとこの1カ月間くらい考えているんですが、「未来のブランドとは?」「そもそも過去のブランドとはどんなものなのか?」現在は?未来?を考えながら75分楽しんでいけたらいいなと思います。

まず簡単に私の方から他己紹介させていただきますと、右手の方が上野律子さん、リッチーです。女性視点のブランドコンサルタントです。

真ん中の方が、深澤里奈子さんで、りなりな。「ご縁の杜」という旅館の方で、実際にブランドを実践して作られている方になります。

いちばん端っこの方が世界のデザイナーひこさん(笑)。ジャガポックルなどのデザイナーなどもされている方で、本当にブランドのロゴの部分を作っていらっしゃいます。

 

個性が表現されたものが「未来のブランド」

ひじりちゃん:それぞれ皆さんにお聞きしていきたいなと思いまして、世界のブランドではなくって、未来のブランドというのは一体どういうものだと思いますか?というところから始めたいなと思います。

りなりなからお願いしてよろしいでしょうか。

深澤里奈子(以下りなりな):はい、深澤里奈子です。りなりなと呼んでください。

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

深澤 里奈子 ニックネーム:りなりな
湯河原リトリートご縁の杜Goen no Mori 代表取締役
http://goennomori.jp/

26才で旅館の女将を引き継ぎ3代目として事業継承。宿をベースに教育事業、潜在的医療事業を展開。人々が本来の自分に還り本質的な一歩を踏み出せる世界を目指して、生き方への‘気づきの場’を創り出している。


りなりな
:未来のブランドというよりも「未来を作ろう」という感覚はなく、今日、テーマがブランドになっていることはありがたくて、自分が作っているものが結果としてブランドというか、その、みんなが望むものになっているのかなと思っているんですけども。

私は、神奈川県湯河原町で「湯河原リトリート・ご縁の杜」というリトリートの宿をやっております。26歳のときに継いで17年目なんですけども、半分の時代を旅館、料亭をやっていました。この1年半前にですね、自分の本当にしたいことを思いっきりやっていこうと思って、振り切って、リトリートの宿という形に変えました。

ブランドが作りたかったというよりも、自分がそうしたいと思うことをやり始めたら、そういう結果になって、「1年半前に急に出てきたご縁の杜って何だ?」みたいな、本当にありがたく、「1回行ってみたいな」と言っていただける場所になってきたというのが、結果としてのブランドなのかなと思っています。

未来のブランドというのは、先にあるものというよりも、今ここでやりたいことを素直に表現していくことが、結果として適した未来のブランドづくりなのかなとなります。

ひじりちゃん :すごいですね。そっか! 17年間されているんですね。

りなりな :そうです。2000年から始めて、26歳で継いで2008年まで旅館という形でやって、2008年からどちらかというと教育業を中心とした考えで旅館をやって、2016年からは、教育と医療とを合わせたリトリートという形で、意識とかエネルギーを変えていこうとやっています。

ひじりちゃん :何年目くらいからブランドみたいな感じで認知されてくるようになってきたんですか? 17年前に切り替えられて。

りなりな 17年前は「深沢旅館」という、おばあさまから代を継いだという感じで、2008年のときに「料亭小宿ふかざわ」という名前にしました。料理を中心としたおもてなしを意識するみたいな感じですね。

そこから、2016年に名前も全部変えてしまって、「ご縁の杜」になってからは出す料理も料亭料理ではなく、ヴィーガン料理。卵、乳製品、お肉、お魚を一切使わない。それは使わないことが良いことではなくですね、自分の体を整えて本当に自分の中の声を聞くには大地に近い食べ物を食べる方が、そういう時間があるといいんじゃないかなというふうに思って、その料理を選択しました。

ひじりちゃん :ありがとうございます。

りっちー、お聞きしても良いですか?

上野律子(以下りっちー) :はい。未来のブランド? さっきも一緒にお話をしていたときに、「過去のブランドって何だろう?」「未来のブランドって何なんだろう?」というのでいくと、ブランドという言葉自体はあまり変わらないのかなという話が出ていたんですね。

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

上野 律子 ニックネーム:りっちー
魅力ぶらんど 代表
女性視点ブランドコンサルタント
http://longlife-brand.com/

女性視点を生かしたブランディングを、企業・商品・サービス・個人を対象に研修やコンサルティングを行っています。魅力あるブランドが増えることで社会や未来の子どもたちがハッピーになることを願って活動しています。しつもんを学ぶ事でクライアントが主役となり、自らの行動が加速していると感じます。カンファレンスで、魅力ブランドな方々とご一緒に学びどのような変化が生まれるか楽しみです。


りっちー 
:もし変わるとしたならば、過去のブランドがどういうふうに変わっていくのか、あえて考えてみるならば・・・

ひじりちゃん :あえて(笑)

りっちー :あえて(笑)

今までだったら、わりと画一的な感じだったり、カテゴリーが大きかったと思うんですけども、ネットがつながったり、いろんなSNSがあったりして、いろいろな人がいるなというのがわかってきているので、「多様性の時代」とよく言いますけども、すごく細かくなっていってるんじゃないかな、という気がするんですよね。

「えー、こんな趣味みたいなニッチなところに、こんな人たちがいるんだ」とか、「あ、私と同じ想いの人たちがいるんだ」って、そういうところに共感する人たちが、たとえばね、お宿に来たりとか。前だったらそういうお宿さえも求められていなかったのが、多様になって、えーっと「リトリート」「ヴィーガン」というものがわかってきて、そういう塊の人たちが世界から来たりとか。

そういう意味では、「未来のブランド」というのはもっともっと特化したり、こだわったりだとか、そういうブランドがもっと出てくるんじゃないかな、と話をお聞きしながら思いました。

ひじりちゃん :はい、ありがとうございます。世界のデザインに(笑)携わるひこさんからは……。

高橋 宏比公(以下ひこ) :世界のデザインはどこから出てくるんですか?

ひじりちゃん :インスピレーションで。直感派なので(笑)。

ひこ :あー、ありがとうございます。

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

高橋 宏比公 ニックネーム・hicoさん
GRAFICO DESIGN inc. 取締役YELL 代表 Art Director/Graphic Designer
https://www.behance.net/grafico_design

主な仕事/じゃがポックル(ポテトファームブランド全て)パッケージデザイン、北海道電力ロゴ、ROYCE CHOCORATE WORLDロゴ、ロイズ生チョコレートビジュアル、横浜QEENS EASTロゴ、ほか様々な業種のロゴ・ツール・広告のデザインなど。

受賞作品、作品掲載書籍多数。 しつもんや心理学、デザイン思考を活かした 地域社会の貢献人を目指し勉強中です。 よろしくお願いいたします。

 

ブランドは「安心や信頼の証」

ひこ :あの、そうですね、先ほど控え室の方で、未来のブランドについてお話をしていて、思ったんですけどもね。「過去のブランド」というのは、皆さんよくご存知のエルメスだとかヴィトンだとか、「持ってみたいわ」という感じのバッグとかあるじゃないですか。

昔のブランドは、そういう老舗とかメーカで、今も脈々と続いていて、企業だとか、とりもなおさずこのブランドというのは、我々カスタマーにとっては「安心や信頼の証」ということだと思うんですよね。

ひじりちゃん :安心や信頼の証?

ひこ :はい。ヴィトンのバッグはヴィトンのバッグが丈夫で使い勝手がいいという。そういう信頼や安心の証で「好きだわ」という人が多いと思うんですよ。

それがブランドということになると思うんですけども、これがもしかすると未来というのは、先ほどもお話ありましたけども、個人とかどんどん細分化されていってミニマムな世界でブランディングというものが、語られるようになるのかなと今、お話聞いていてちょっと思いました。

りなりな :なんかそうですよね。個性、個性が表現されたものが、結果「ブランド」みたいな感じがするんですよね。

だからブランドというと、有名なという概念もありますけど、個性が本当に出たときにそれが確立されるという感じがあるので、今はほんと個性が出しやすい時代なので、それぞれがそれぞれの個性を表現することができる時代になって、そのブランディングという言葉にするとあれですけども、それが徐々に、小さいことであろうとも、その個性を表現していること自体がその人の輝きになって、その輝きがみんながこう見つけるみたいな、そんな感覚がこれからのブランディング、ブランドみたいな感じがしますね。

ひこ :そうですね。その方にいわゆるファンができて、ファンが「その方は良いよ」ということで、どんどんどんどんその方のファンが増えていく結果、それが”ブランディング”ということになるんです。

そもそも、ブランドはありますけども、ブランディングという言葉自体がおかしい話で、ブランディングというのは、カスタマーがすることなので、企業やメーカ側がするようなことじゃないんですね。

だから今後もその一人の人が自分の生き方に素直に生きることによって、周りにファンができてくる。そのファンが増えることがいわゆるブランディング。ファンにとっては、その人がたぶん何かの中心になる存在なんだと思うんですよね、そのときには。

それが先ほど言った「信頼」だとか「安心」だとか、「その人の話を聞いていると安心するわ」とか、「その人が考えていることを実行すると間違いないわ」だとか、そういうファンがどんどん増えていったときに、その人のブランドができるということだと思うんです。

 

ブランディングと自己肯定感の関係

りなりな :そうすると、自己肯定感のある人のほうがブランディングしやすいんですよね?

ひこ :はい。企業がブランドを作り上げるときに、企業はそもそも世の中に必要とされて設立されるんですよ。

なので、企業が自分の会社で扱っている商品やあるいはサービスのポテンシャルをまず上げて、それに対して商品が売れるように営業努力をして、まずここまででだいたい9割くらい整う。最後に、たとえば僕がやっているデザインみたいなものでお手伝いをして、見た目を整えてあげて、やっとその、お客様がブランディングしてくれるステージに立つ、上がることができるかなって。

これが個人だとすると、企業といちばん違うのは、人によっては「自分なんて」と思ってたりだとか、自分の自尊心を低く思っていらっしゃる方がいらっしゃって。この方は、起業をして仕事をしてお客様とやりとりする中で出てくる問題が、自分を高く売れないということです。

あるいは、値づけするときに、どうしても高く値をつけられない、そういう問題が出てきます。自尊心が高くないと、やっぱり自分がやっていることに自信がないので、どうしても相手に言い負かされるとか、「自分のやっていることは高く売れないんじゃないか」というふうに思ってしまいがちなので、その辺が企業と個人の大きな違いになってくるかなって。

望まれてできる企業と、中には自分なんて望まれて生まれてきていなんじゃないかという人も中には出てきたりする。これが大きな違いかなと思いますね。

ひじりちゃん :そうですよね。私、フリーになって1年ちょっとなんですけども、今やっと「ブランドを作っていきたいな」とちょうど思っているところなんですね。

好き放題生きてきて、1年間自分のやりたいように表現してきて、こう売り込みとか気にせずに表現してきたんですけど。ブランドを作っていくことで必要としている人に認知されるように自分を作っていきたいなと考えているときに、このテーマの質問家の役割をいただいたんですけども。

 

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

田中 聖世 ニックネーム・ひじりちゃん
まさよ操体サロンオーナー兼セラピスト
https://ameblo.jp/masayo-soutai/

治療院を営む両親の元に生まれ、「真の健康」とは何かを小さい頃から自問自答する子供でした。
一人でも多くの方に、「真の健康」を届けるパイプ役となりたい、そう強く思うよりになり、会社を退職し、サロンを2016年にオープンしました。
新しい「真の健康」を未来のブランドとして作っていきたいと思い、現在、構築中の真っ只中にいます。
そんな中、今回いただいた役が、「未来のブランドの授業」の質問家ということで、私自身、とても楽しみにしています。スピーカの方とご一緒する参加者の方とともに「お互いの未来からの投資の時間」として楽しめたらと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 

 

外面のブランディングをどう捉えるのか?

ひじりちゃん :ブランディングと言うと、たとえば、キラキラ起業女子とかだと「私ってシャネルのバック持ってるの。すごいでしょ」みたいな、リアル充実感みたいなものをアピールするイメージがあるんですけど、やっぱりこうブランディングというのはポジティブに捉えたらいいものなんですか?

こう、そういう人ってなんかこう……

りなりな :そうですね。今、自己肯定感がありましたけども、自己肯定感があがるというのと、外側を固めるというのはだいぶ違う、真逆な感じがして。自己肯定感が生まれて、自分のやることが本当に自分の喜びで、そこに触れたお客さまというか関わる人たちも喜びでっていう形になっていったときに、初めてその外側のことが大事になってくるような感じがして。

そのキラキラ女子は私も思ったんですけども。やっぱり「自分の使命はなんだろうか」ということをすごく探求していて、その探求の手前でやりたいことをやれてないと、見えてこないわけですね。

「やりたいことをやるんだ」「とりあえずやっていくぞ」みたいなときが、キラキラ女子系のやってみるということに立って、それが根っこからじゃないかもしれないけれども、まず自分を解放していくという感じで、それをやり終えたときに「あ、それだけじゃないなー、本当に自分のしたいこと何かな?」みたいな、自己探求をぐーっとしたときに湧いてくるものが、結果としてブランドの要素になっていくような根っこになるんじゃないかなというふうに思います。

ひこ :そこに人が寄ってくるんですよね。その寄ってきた人たちが、この人のブランドを作っていくということですよね。

りなりな :そうそうそう

りっちー :よく「パーソナルブランディングをやっています」というので、私も、お洋服どうするか?見た目どうするか?という見た目も大切なんですよ。見た目も大切なんだけど、ある人を思い出したんです。

名刺を作っている女性の方がいて、目立たないといけないということで、名刺のこんなでっかいパネルの中に顔を入れたものを、コンサルの人に言われたとかでSNSで出してたんですよ。

目立つだろうなと思ったんだけど、その人が楽しそうに見えないなと思ったんですね。その人が楽しければいいなと思うんですけども。

私、広島なんですけど、(広島の)餃子屋さんで餃子の格好をした人がいらっしゃって。餃子の皮とかを売ってらっしゃる業者さんが、餃子の皮のぬいぐるみみたいなものを着てアピールしていたんですね。その人は楽しそうだった。

楽しそうだったからそれはいいと思ったんだけども、名刺のその女性の方は一生懸命そうやって出すんだけど、私は何か楽しそうに見えなくって「痛々しい」と思っちゃったんですよね。

ひじりちゃん :バレたんですね。

りっちー :そうですね。「それってどうなんだろうな」と思っちゃって、見た目の部分とご本人とがマッチしてないと、しんどいなって思いました。

 

自分の名前を嫌いだと名刺交換ができない?!

ひこ :あります。あります。

まさに今の名刺交換なんかも、個人のブランディングで言うならば、自尊心がすごく大きくて、自分のことを愛していなかったりだとか、自分の価値を低いと思っている人は出しにくいんですよ。やっぱり名刺交換しにくい。どっか、堂々と名刺を交換できない、後ろめたさをなんか感じてしまう。

でも、なんというんでしょう。僕はデザインをするときに、あの、自分の名前をまず愛してもらうように、「自分の名前、好きですか?」というところから入ったりします。自分の名前が嫌いだと、名刺出すことがやっぱりダメなんですよ。

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

ひこ :わかります? これ。中には自分の名前が嫌いな人もいて、あの、「自分の名前が書いてある名刺を交換するのがすごく苦手だ」という人もいたりするんですよね。なので、やっぱり先ほどの自分の愛するとつながっていくんですけども、自分を愛して自尊心を高めていないと、ビジネスにすごく大きく問題が起きてくるというか。

りなりな :名は体を表すじゃないですけども、自分の名前を自己探求していくと、結構、いろんな意味があったりとかして、私、里奈子なので、里(さと)、に奈良の奈(な)、子どもの子(こ)なんです。自分を見ていたら場を作るのが好きだなあと思っていたんですけども、誰かに「奈(な)は大きく示す、と書くので、心のふるさとを大きく示す子、素晴らしいね」と言われて、もう私、自分の名前が自分の生き方に生きているのを、この30、40過ぎてから発見する。

それだけでも、本当に自分の生き方に自信を持って生きていけて、それが仕事として何かをするときに、名前から生きるから「いつもいつもその生き方を生きればいい、そこから出るアイデアがただ形になっただけ」とそんなふうに感じるようになりましたね。

ひこ :みなさん、お話聞いているとすごくその人のね、名刺もらいたいと思いませんか?

ひじりちゃん :思います。

ひこ :すでに、ファン化が始まっていると僕は思うんですよ。なので、ここで名刺交換をりなりながしたときに、みなさんが、ここに参加してくださっているみなさんがブランドを作ってくれてる。まず第一歩になるのかな、そんな感じです。

ひじりちゃん :まずは名前からということですね。そっか~。

 

自分を表すキーワードに優先順位をつける

ひじりちゃん :未来のブランドの授業というテーマが今日ついてるんですが、授業としてお伝えするとしたら、未来のブランドを作っていくためにどんなことを大切にしていくといいですか? 

どうですか? りっちーは? コンサルタントとして。

りっちー :未来かどうかわからないんですけども、個人の方のセッションをするときに、3つのことを言っていて、一つは「好きなことをやってくださいね」。みなさんよく言うと思うんですが……。好きなことだとすごくアイデアが出るし、なんか、頑張れるなと。

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

りっちー :でも、好きだけじゃなくて、2つめはそれができること。
好きだけどできないよ、「英会話を教えたいんだけど英語は話せません」だと、ちょっとできないことになっちゃうので、極端な話ですが。

3つめは求められること。
その全部が重なっているところが、お仕事になったりということです。でも好きなことでできることをずっと追及されていたら、時代が変わって、求められる人になる方もいらっしゃるわけですよね。

時代とともに変わってくるので、今はお仕事にならないかもしれないけど、時代がそういうふうに変わってくることによってお仕事になる方もいらっしゃるし、すぐにお仕事にしたいなというところだったら、その3つを言うケースが私はありますね。

私も20代ではないので、年齢的に「あと何年くらい、どんな生活をしたいかな」ということを考えたときに、8年前くらいに言ってたことなんですけども、あの、自分が本当に好きなこと、こういう素敵なところに泊まったりだとか、「宮島が大好き」とか言って、言われてもいないのにずっと宮島発信をしていたら、宮島旅館の仕事が入ったんですよ。

そのときは「宮島で仕事できたらいいな」とは言ってたんですけど、別にこれがというのはなかったんです。好きなことだとエネルギーが違うっていうのがやっぱりわかりますよね。

あるとき、たまたま宮島の旅館を改装する人が知り合いで、「そういえば名刺交換したとき、女性視点って言ってましたよね」と思い出してくれて。クライアントが女性視点を取り入れたいと言ったときに、「そのキーワードを思い出しました」と言われたんですね。そのときに思い出してもらえるようなキーワードをやっぱり名刺に入れておかないと。「いっぱいできますよ」と言ってても難しいので、どれだけ捨てて、どれだけ残すかはすごく要ります。

ひじりちゃん :常に棚卸しですか?

リッチー :そうですね。自分の中でいっぱいできることはあるけど、「捨てていいのはどれ?」って聞くんですね。「ぜったい残したいものはどれですか?」と。それは相手から求められることだったりとか、自分がやってて楽しかったりとか、あ、そうだなと自分が伝えたいことに近いものだったりだとか。

さっきのね、旅館でいうところであったら「リトリート」っていうのが残っていって、それがわかりやすいものとして、言葉としてキーワードに残っていっているんですね。だから、「3つくらいにキーワードを絞ってください」と言います。

ひじりちゃん :それも名刺に載せるんですか?

りっちー :載せるかどうかは別として、「3つに絞るとしたらどのキーワードになりますか?」という質問をします。

ひこ :プライオリティーを作るということですよね?

リッチー :そうですね。自分の中で。

10個あったら覚えられないじゃないですか、相手の人が。3つだと覚えやすいというので、何屋さんか?ということが一つありますよね。

たとえば、私であったら「ブランディング」をやっているというのは覚えやすいんですけども、ブランディングやっている人はいっぱいいるんですよ。「じゃ、残すものは何か?」っていうと、「女性視点」。それは今までずっと女性のマーケティングをやってきたというところで残したもの。女性の感性を生かす、というところ。

あともう一つは、名刺には「しつもん」というのも出しているんですけども、肩書きとしては二つで一応やって、「3つに絞ると何が残るか?」というところを考えると、捨てていいものとか、捨てちゃ嫌だというものとか、絞り込める感じがしますね。

ひこ :あと名刺も一つに限らないんですよ。僕もデザイナー仲間、あるいは、デザインで勝負するときに使う名刺と、一般の方たち用の名刺を持っています。

たとえば、デザインを僕やっているんですけども、デザイナーって何やっているかわかります? わからないんじゃないですか。絵描いてるんじゃないかと思いませんか?

絵は描いてなくて、違うことをやってたりとかするんですけども、でも、デザイナーの仕事、案外わかっているようでわかっていない人も多くいらっしゃるので、そういう方たち用には、自分の仕事の実績をわかるような、ロゴマークだとかパッケージのキャラクターだとかを載せた名刺を作っています。

だから2種類を使い分けています。それぞれ、やっぱりプライオリティーはありますね。

りっちー :今日いただいたね。

ひこ :わかりやすいでしょう?

りっちー :わかりやすかったです。「このロゴですか!」っていう。

ひこ :そんな感じです。

>>>パート2へ続く

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介

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