頭で考えるのではなく、 湧きあがる情動にしたがって 「こうありたい」を あらゆる活動で一致させる

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講演録『未来のブランドの授業』Part2

 

ブランディングとは、提供する側の「こう思われたい」と、お客様の「こう思う」が一致すること。企業がブランドをつくるときのプロセスや、深澤里奈子(りなりな)さんの「ご縁の杜」の実践からブランディングを考えます。

2017年9月30日開催
しつもんカンファレンス in OKINAWA セッション3C


▼登壇者情報

スピーカー/
深澤 里奈子
湯河原リトリートご縁の杜Goen no Mori 代表取締役

上野 律子
魅力ぶらんど 代表、女性視点ブランドコンサルタント

高橋 宏比公
GRAFICO DESIGN inc. 取締役YELL 代表、 Art Director/Graphic Designer

質問家/
田中 聖世
まさよ操体サロンオーナー兼セラピスト


『魔法の質問』にすべてが入ってる

ひじりちゃん :ひこさんから皆さんに、未来のブランドの授業をするとしたら、いま授業中なんですけども……(笑)、どんなことがありますか?

ひこ :それはとりもなおさず、「しつもん」です。しつもんの中に、自分をブランド化する要素がすべて入っているはず。

たとえば、いちばんわかりやすいのは、“自分を満たす”。「シャンパンタワーの法則」、あれはいちばんわかりやすいところで、そこから始まります。

ひじりちゃん :そうですね。自己肯定感!

ひこ :そうです。自分を満たしている人は自分の名刺、さっきの話じゃないですけども、自分の名刺を交換するとき堂々としているし、「あ!この人素敵だな」と思わせる匂いを出していると思うんです。満ちている人は。

“ゴリヤク”の話もそうだし、「7つの法則」だとか、しつもんにすべて入っているはずです。

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

ひじりちゃん :『魔法の質問』にはすべて入っている……?

ひこ :はい、魔法だから…(笑)

 

ブランドにするにはポテンシャルを高めることも大事

ひじりちゃん :いちばん大事なのは満たされているかどうかにつきますか?

ひこ :自分が好きなのはもちろんいいんですけども、忘れないで欲しいのは、自分のポテンシャルを高めることは大切なので。

自分大好きでもいいですけども、もちろんそれは大切なんですけども、自分の良いところ、自分のお金で売れるところは大切にしてもらって、ポテンシャルを高めてもらって、自分ブランドにしていくっていう、そういうブランドの、未来のブランドの授業はすべて「しつもん」のなかに入っているっていうことです。

ひじりちゃん :質問に答えてひたすら実践していくということが大切になってくるんですね。そういうのもロゴを作るときも大切にされてるんですね?

ひこ :大切です。ロゴを作るときは、まず企業でも個人でも同じですけども、その人が何ができるのか、いやゆるポテンシャルです。

何ができるのか、どうしたいのか、話をしていく中で相手が気がつかなかったことを掘り出すとか、それをひと通り終えると、今度はそのクライアントの周辺、たとえば、その人がセミナー講師であれば、他のセミナー講師はどんなことをやっているのかっていう、その人と同じ業態の周辺を見ていきますよね。

そうすると、「早い話はこうだよね」という、「その中でもこういう特徴があるよね」という、一般的な人にわかってもらうキーワードと、「中でもこの人はここが違いますよ」という秀でた得意分野の部分をアピールすることができるから。

それを見つけ出していって、それを今度は、図形あるいは形に見える化していくのが僕の仕事です。グラフィックデザイナーです。

ひじりちゃん :ブランドっていうのはやっぱり、小さい積み重ねの集大成みたいなものなんですね?

ひこ :企業の、扱っている商品やサービスのポテンシャルを高めるっていうのは、日々の企業努力、商品開発努力は必要不可欠だと思うんですよね。

 

“腹の中から湧いてきたもの”に正直でいる

ひじりちゃん :りなりなはブランドを実践されている方ですけども、愛されるブランドで居続けるために大切にしていることは何ですか?

りなりな :そうですね。いちばんは「自分の腹の中からのものに正直でいること」。
これがいちばん楽なんですよね。無理やり何か作ったりしなくても「こうだな」って思うことをそうしてみるっていう。

それでいちばん問題なのが、頭が邪魔するっていうことですね。
思考がね、「そんなことしたらなんと思われるか?」とか「そんなことしたら生活できない」とかね。そういうふうに、頭が危機管理能力ということで邪魔してくれるわけですね。

だけど、そこも承知しながらも、腹から湧いてきたものにふっと正直でいると、自然にアイデアもそうですけども、人からのご縁とか、「ご縁の杜」なんですけども、本当に、ご縁がどんどん広がっていって、自分が本当に求めていた、頭の中で考えていた求めていたものじゃなくて、腹が求めていたものが、パッと目の前に現れて、瞬間的に腹が「そうだな」と思うから、瞬間的に判断が早くなってくるような感じがするんですよね。

 

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

りなりな :「ご縁の杜」にするときの「どういうふうにしていきたいのか?」という話をすると、「料亭小宿」の時にはミシュランをいただけるほど料理はよかったんですよ。なんですけども、ミシュランってブランドじゃないですか。あれ、関係者の方がいたらすみません(笑)。

ミシュランの冠ついてから、そのブランドに合わせようとする自分がいるところに気づいて、みんなで「本当にしたいことはこういうことじゃないよね」みたいな、「高級志向でないよね」ってことなんですよね。本当にしたいことは、お客様とかゲストと信頼を持って個としての対話をしていきたいみたいな。

そういう中で、自分たちも、そして来るゲストも、クリアになっていくにはどうしたらいいかなということで、「料理は大地に近い素材を使ったらいいなー」とか。日の出ツアーとかもやっているんですけども、あと瞑想講座とかもやって。瞑想と言っても、座って静かな時間を取るくらいのペースでやってるんですけども。

 

奇跡の出会いは、未来の情動を感じることから

りなりな :そういうことをすることによって、自分が本当に感じていることに正直になっていくことをただやるだけで、そのなんか、着地点がはっきり見えないのにその方向に進んでいった結果が、ブランドとして、自分の豊かな個性として成り立っていくみたいなそんな感じがあって、料理、自分ができないんですよ。

「どうしても食が大事だ」と思ったときに、料亭料理でミシュランまで取って素晴らしいのに、「もうそうじゃないな」って思い始めたんですよ。

そこで考えたとき、「日本料理なのか? 何、洋食なのか? 精進料理なのか?」、エリアみたいな分野で考えたんですけども、目標設定というか、意図というか、未来の情動を感じるとしたら、ここで出す料理をゲストが食べると本来の素直な自分になって、本来の自分に帰り、本質的な1歩がぐっと踏んでいける、そういう料理を出したいと、求人募集に書けないようなそういう意図の設定をしたんです。書けないような望みっていうか未来の情動。そしたら、「みんなが心が穏やかになって、自分の腹から正直になってみる。そういう場を作っていきたいな」と思ったら、そういう料理を作る人に出会っちゃって。奇跡の出会いがあって。

ひじりちゃん :やってきたんですか?

りなりな :そうです。最初そういう料理を作れると知らないで雇って、そういう料理を作れる人だったんですね。そういうふうに出会いはやってくると思ったんですね。

ひじりちゃん :求めなくてもやってくる?

りなりな :そうです。求めなくてもと言うより、未来の情動、未来のブランドっていうのはあれですけども、私の中で情動ですよね。「こうだったら最高に嬉しい、みんなよくなれる」みたいな。

ひこ :それはすごく大切だと思いますよね~。

りなりな :そうそう。そこにアクセスするだけでそれの材料がポンポンポンポンと用意されていくっていう。結果、ブランドっていう言葉かはわからないですけども、豊かな個性になって、表現されていく。

ひこ :ビジネスしているわけじゃないですか。ビジネスなんだけども、その根っこが「これじゃなくてここ!」っていうところがすごーく伝わってきたんで、それはすごくビジネス成功するよねっていう、そうそう。

 

売り上げは半減。でも盛り返さなくていい

りなりな :結果としてね。

「料亭小宿」から切り替えたときは、売り上げ半分以下だったんですよ。「まったく、ヴィーガン料理なんて、湯河原来て魚食えねえのか」という普通一般のお客様はそうじゃないですか。

自分がしたいことはそこ、別にあの、なんというんですかね、頭と口の楽しみ度ではなくて、腹が喜ぶということを場として作りたかったので、それでお客さんが来てくれるようになってくるという。

売上半分になってもやってるんですよ。私ね、売上半分のうちの、あ、売上のうちのほとんどギリギリのところまで経費だったんですよ。それが半分だったらアウトだったんです。アウトになってもやるのかっていう、でも、「やりたいことやろう、本当に自分がしたいことをやろう」と思って選んだら、半分なのにやれるんですよ。

なんか経費みたいなものも、なんで下がっちゃったのかなとうまくなるんですよね。で、生かせてもらえているというか、この周りの人たちに生かせてもらえているとなってるんですね。

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

ひこ :同時にファンもできてるわけですよね?

りなりな :はい。ファンもできて。ありがたく。一緒になって喜びを分かち合う感じなのです。今までは「お客様~↑」とお客様を上に持ち上げるような接客の仕方だったのです。旅館のエリアでいうと商売がそういうやり方なんですよね。

でも今は、本当に来た人と「そうだよね、すごいよね」「私もこういうことありました」「そうだよね」と「こういう情報あります」みたいな感じで、お互いに分かち合って楽しいんだよ。毎日楽しい、そんな感じです。

いろんな人と知らない方がいっぱい来てくれて、分かち合いが始まって、お客様同士も分かち合う。昨日まで他人さんだったのが、日の出を見て「いいですよね」「いいですよね」と幸せを分かち合って、お友達になって、そこからまたビジネスが生まれていく出会いもあったりする。

すごい想像以上の場になってきたというのが、あの、今の事実で、ありがたいなと思っています。

ひこ :これがブランドを作るときのエネルギーですよ。まさに

ひじりちゃん :このエネルギーですか。すごい行きたくなりますよね。

ひこ :でしょ

ひじりちゃん :ちょっと予約しようかなって

りっちー :この中からね。みんなで予約して行かれる方がいらっしゃるのじゃないかしら。

ひじりちゃん :その売上は、今また盛り返してきてるんですか?

りなりな :いや半分ですよ~

ひじりちゃん :あ、今、半分なんですか。今からまた?

りなりな :いや、盛り上げなくていいと思ってるんです。

私なんかずっと旅館をやってきて、右肩あがりじゃないといけないと思って、部屋稼働が、80、90、95、100になっていくみたいな、100%のときもあったんですよ。それがすごく良いことだと思ってたんですけど、疲れてくるんですよ。上がっていかなきゃいけないということに。

「半分になっちゃったんだな」と思ったときに、前年比なんて関係ないんですよね。見る必要がない。今までの資料がまったく入らない。

ひじりちゃん :新しい!未来?

りなりな :そうです。それでやっていけるかなと思ったらやってるんですよ~。

ひこ :やってる(笑)

ひじりちゃん :人数なども変えずに、経費も変えずにそのまま?

 

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

りなりな :スタッフはそれをしようかなと思っている時期から寿退社が相次いで、本当に結婚式も呼ばれて寿貧乏になりそうなくらいですね、結婚式が相次いで、それもいい意味で軽く、それも出会いですよね。その子たちがちゃんと生きるような出会いがあって、うちも軽くなっている。

少なくなってから今まで、年間稼働が1年で350何日で10日も休んでないかったようなところを、「1週間に1回休んだら気持ちが楽だな」「してみようかな、そしたらみんなで休めるし、みんなでどっか行ける」とか思ったら休んでみて、1週間に1回休んでいる状態だとか。

社員旅行とかも、今まで私は会社がお金を出して「ここに行こう、勉強になるから」と連れていく感じをやってたのですが、今ではスタッフも豊かな個性の興味が集まってきた人ばかりなので、「どこどこ行きたいね」「え、私も行きたい」「私も行きたいです」「え、じゃみんなで行く?」、みんながもともと行きたいところだから、みんな自分でお金を出してまででも行くじゃないですか。

だから、交通費とか、車一台みんなでワイワイしながら行くのに、「それは会社でだそっかな」みたいな感じで、会社も嬉しいけど、個人も嬉しいみたいな。個人でも、「交通費、助かっちゃった」みたいな。そういう感じで。

ひこ :すでに社員がファンだということですよね。

りなりな :そうそうそう。一緒にみんなが。お金かけずにね~~~(笑)。

ひこ :それで一般のお客様がファンにならないわけがない。

すごくそういうふうな印象を受けますけどね。

りっちー :あの、ブランドってよく言うのが、「こう思われたいなー」というのとお客さんが「こう思う」というのが一致するっていうのが、ブランディングって言ってるんですね。

じゃ、「こう思われたい」と「こう思う」が一致するって何かなと思ったら、ありとあらゆる活動で「こう思われたい」が実践されているっていうことだと思うんですよ。「ご縁の杜」っていうそういう存在でありたいなって決めて、リトリートっていうのを決めたから、全部変わってきたんですね。料理も変わってくるし、人も変わってくるし、決めたと言うところで、ベクトルや人が変わってきたり。そのときに「違うな」という人はやめる、というのがよくあるんですよね。

ひこ :今話を聞きながら、この前にここでやっていたおじさんたちの、素敵なおじさんたちのお話を思い出していて(セッション2C『遊ぶ方が経営とビジネスはうまくいく』)、その今の話はですね、たとえば40万円のクルーズにポチッとするかしないかみたいな、あーこういう例えでもいいんだかなーっと思って話を聞いていたんですけども。

 

上位の評価は得てして一般的な評価になりがち

ひこ :あのー、話、変わっちゃうのかもしれないですけども、僕がやっているグラフィックデザインは、さっきは全体が10あるうちの9までが会社やクライアントがやることで残りの1を僕らが背中を後押しできる話をしたんですが、10分の1なんですけども、決して小さくない働きを僕らはするわけで。たとえば、先ほど話に出てきたジャガポックルという商品があって、この商品はそもそもピュアジャガという名前で販売されたんですよ。

ピュアジャガと言う名前で販売されて、ある程度売れていて、中にアンケートを入れていてアンケートのレスポンスがすごく良くて、アンケートを返してくれたお客様は「また買いたい」って言ってる。

そういうお客様が98%くらいいた。来るアンケート来るアンケート、全部買いたいって言う。にもかかわらず商品自体の売り上げで伸び悩んでいた。おかしいおかしいと担当者がやっぱり違和感を感じて、「思いっきりパッケージを変えよう」と何社かのコンペがあって、僕もそれに参加してやったんですけども、コンペティションにかけられたグラフィックデザイン案が全部で9案くらいあって、9案に対して一般のお客様にアンケートをまたとった。

 

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

ひこ :僕が作った、最終的にパッケージになっているキャラクターの案は、決して上位の評価ではなかった。上位の評価は得てして誰もがいいねと思っている一般的な評価になりがちなので、それを担当者が良しとしなかった。アンケートの読み方が上手だったということなんですね。

普通アンケートで高評価であれば「これでいいじゃん」という話になるんですけども、得てして一般的になりがちということが担当者はわかってきて、いくつかの項目の上位、真ん中ではないでも上位にあった、僕が作った案が選ばれて、世の中に出て、おかげさまで今もジャガポックルという皆さんが知っているくらいのネームバリューになりましたけど、ヒットすることができた。

売れてなかった商品がネーミングとグラフィックデザインの力で爆発的なヒットになったと間違いない話なので、あの、少なからず僕らの力はあるのかなと。

これはブランディングのお役に立つんですけども、でもそのアンケート自体にあったように、お客様はこの商品を買いたいと思っている、美味しいと思っている。だから決してポテンシャルは低くなかった。ここが大切です。

あと、そのカルビーの営業の方がすっごく、こう営業努力をしていましたね。北海道内のいろんなお土産屋さん、販売店にしらみつぶしに当たって、フェイスツーというんですけども、商品を置いてもらう場所を確保して歩いていたっていう営業努力は欠かせないですし。

ひじりちゃん :そうですよね。ジャガポックルすごく有名になりましたよね。海外の友達みんな買って帰るみたいな感じになって、ひこさんがそのデザイナーだったんだという感じでちょっとうれしいんですが。

>>>パート3へ続く

しつもんカンファレンス『未来のブランドの授業』

撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介

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