「ラグジュアリー」とは、その瞬間にある“豊かさ”。内側に溢れたものがあれば、外側で埋めようとしなくなる

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講演録『シンプルでラグジュアリーに生きる』Part2

 

「ラグジュアリーはその瞬間にどれだけ感じることができるか」。心の在り方を語り合うほどに、スピーカー3人の共感は深まっていきました。

2017年10月1日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション4A


▼登壇者情報

スピーカー/
又吉 千恵子
ヨガティーチャー、エッセンシャルオイルアドバイザー

田中 春美
インタビュアー

金城 男
陶冶処風庵オーナー

質問家/
靖子
ライフエッセンス・コンシェルジュ


ラグジュアリーとは、○○○のこと

靖子: シンプルというところをキーワードにして話すと、皆さんに届いた部分もあると思うんですけども、そこからラグジュアリーという言葉を使うと、贅沢な感じが少ししてしまったり、お金をかけなければいけなかったりと、もしかしたら思ってしまうかなと思うんですけれども、春美さんにとってのラグジュアリー、さっきも少しエッセンスを言っていただいたと思うんですけども、「ラグジュアリー」について…

田中: 概念の話ばかりでボワンとしてきて、ごめんなさい、なんですけど、ラグジュアリーという意味を調べた時に、シンプルという言葉を調べた時に面白いなと思ったことが、さっき言ったわかりやすさの意味の他に、ノットラグジュアリーと書いてあったんですよ。これは反語なんだなあと思って。

で、ラグジュアリーって、何だかやっぱり煌びやかなシャンデリアとかを思い出すと思うんですけど、私の思うラグジュアリーと、ここでミヒロさんがテーマにしたのは、日本語で言う「豊かさ」だと思うんですけれども、ちょっとリッチネスなほうで、意味深い、奥にあるものという意味で捉えている私がいます。

豊かさと、本当に、さっきのシンプルに通じるんだけれど、もっと目に見えない部分、人の繋がりであったりとか、形の無いものをいかに持っているかが大事だと思います。

靖子: 男さんどうですか? ラグジュアリーと言うと、ちょっと女性性が強い、女性的な、女性の方がよく使う言葉かもしれないんですけれども。

金城: 僕なりの捉え方なんですけれども、海遊びが好きで、時間がやっと取れた、海に行きたい、で、沖縄って満潮・干潮とあって満潮の時間帯しか海に入れないんですよ。

で、いざ海に行けても波が無いと遊べないんですよ。だから自然と当たり前のことを受け入れる、要は「どうにもうまくいかないなー」と思うことも多いと思うんですけど、まあ仕方ないことのほうが人生は多いから、だからほんとに条件が合った時は目一杯クタクタになるまで遊んで、それが僕の中でのいちばんの喜びなんで、他の人とは違う目線かもしれないけれど、とにかく自分が楽しみたいことをとことん追求してやるというのが、僕なりの「豊かさ」かもしれないです。

しつもんカンファレンス2017

靖子: そうやって自分がラグジュアリー、豊かな時間を過ごすことで、自分が満たされることが、ラグジュアリーに繋がるような感じですね。どうですか? 千恵子さん。

又吉: 私にとってのラグジュアリーは、まったく物質的なものではなくて、アメリカにいた時にコマーシャルでマスターカードの、日本でも最近やっていますが、「メモリーはプライスレス」というやつ。それがやっぱりラグジュアリーに繋がっていく。

これしか天国に持って行けないし、人と人との交流の間で生まれた愛の感覚というこの感覚だけ、あと感謝の気持ちとか、そういったフィーリングがすごく感じられる時に、「あー、なんて幸せなんだろう」とか、「なんて豊かなんだろう」という、そういう感覚がラグジュアリーなんじゃないかな、と思います。

 

瞬間を大切にする生き方

靖子: ラグジュアリーはそれぞれ違うと思うんですけども、でも基本は同じことをお伝えしたいということだと思うんですが、千恵子さんが沖縄に住んでいるだけじゃなくて、今まで生きてきた中で、ここをもっとシンプルにしたいな、ラグジュアリーにしたい、という今後の思いとかありますか?

又吉: 今、結構満足しているんですね、今のライフスタイルとか。もっとこうしたいは無いです。今にしか生きてないので、今を感じる時にすごくラグジュアリーを感じるんですね。だから、この瞬間とかこの空間とか、この人が「うわぁ、なんて豊かなんだろう」と感じるので、これ以上何かしたいとかは無いんですけど、人生は刻々と何か起きますよね。それに対する自分の在り方とか向き合い方が、ラグジュアリーな自分でいたいなと思いますね。大切にするという意味で。

靖子: 日々の中で大切にしていきたいことがそこにある。

又吉: そうですね。今ある瞬間を見逃したくないというか、味わい尽くしたい、的な。

田中: そこが共通しているかなと思ったのが、その瞬間の中にどれだけ自分が遊びを持てるか。遊びって神様との繋がりみたいなものと聞いたことがあるんですけど、たぶんそれを感じているのかなというのをちょっと思いましたね。

靖子: 春美さんのその大事にしていることを伺っていいですか?

田中: 私が大事にしていること?

靖子: シンプルでラグジュアリーに生きるということを今まで感じてやってきた中で、大切にしていること、今。

田中: 千恵子さんが言ったように、この瞬間ですよね。だからよく聞かれるのが、久々に会って「今後どうするの?」と言われると、「ごめんなさい、わからない」としか答えられないんですけど、「この瞬間がすごく大事かなあ」と。

この瞬間にどれだけ自分の世界が広がっていくかのほうがワクワクするし、そこの創造性だったりクリエイティブな発想だったりアイディアだったりというのを、そこにワクワクし始めちゃうと、もう何も物はいらない。

しつもんカンファレンス2017

又吉: この場にいない感じがするよね。私の好きな言葉で、一休さんの言葉で、「宿のそことも定めなければ踏み外す道も無し」という言葉が好きなんですよ。だからスーツケース1つに憧れると思うんですけど、この瞬間に起きるこのダイナミックさがすごくワクワクするし、生きているという感じ。

前はもう、計画計画の人生だったんですけど、今は何も無くて、たとえば3日前にお友達に「スカイマークで往復こんなに安いのがあるから、富士山の麓に金運神社というのがあるから行かない?」と言われて、「あ、行く」と言って昨日行ってきて、日帰りで。そしてよく考えたら、「あれ? 10月1日は何かあったっけ」と考えて……(会場笑)。「それまでに帰ればいいんだから大丈夫」と昨日の夜の10時に帰ってきて、明日、早起きだからちょっとアロマを嗅いできたんですけど、すぐこう乗っちゃうんですよ。だからダメだって、ダメじゃないですけど、うまくいっているんです。(笑)

田中: スケジュールが立てられなくなりますよね。

又吉: そうなんです。立てたくない。

田中: そうそう。立てたくない。わざとないってわけじゃないですけど、立てないことが楽しい。

靖子: 考えないということですね。

又吉: そうそう。

靖子: 考えないということは、入ってきたことを受け入れられるタイプか、できる状況。枠が無いから整えていけるという。

田中: 整えなくてもいいんだという。枠が無いから、たぶん、入ってきたものがスーッとその状態になる。

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又吉: 昨日はまさしくそんな感じで。今日も、ちょっと緊張して早く出たらクリスタルボウルに間に合って、フワーとまた居眠りもできたし、考えないほうがうまくいきます。

これはもう100%確信してます。計画も立てないほうが。だから、最近よく人に聞かれるんですけど、「次はどうするんですか?」とか「目標は?」とか、「夢や希望は?」とか。最近は明るく、「夢も希望も目標もありません」と言っています(笑)。

靖子: 今日のトークも、モデレーターなので、構成を考えようとする本能が出るじゃないですか。でもメンバーを、テーマが決まってから、日々いろんなSNSがあったり皆さんに聞いてみたりしたら、考えなくてもいいなというか。皆さんのそのままを感じてもらうことのほうが、『シンプルにラグジュアリーに生きる』を伝えられるなと思って。

田中: 靖子さんのシンプルとは?

靖子: 私ですか? 私も、シンプルに見えるようで実はその奥に深いものがあるなと思っているんですね。だから今日初めてお会いしたりとか、去年お会いしてるけど、どう捉えていらっしゃるのかなとバックヤードで聞いた時に、あ、同じだなと思えたので、すごく安心したというか、さすがミヒロさんだなという感じでした。

 

ストーリーのある物だけを持つ

靖子: 男さんに器を持ってきていただいてるんですけども、その器からも、受け取れられるメッセージ性だったり、そういうものをシンプルに結びつけると、どんな感じですか?

金城: 日々の意識、美意識とかは急にはなれないじゃないですか。でも素人で初めて触れて10年になると、それなりに形にはなって、これ沖縄の土と釉薬と、要は葉っぱだったりを燃やして、これ、土地のものなんですよ。それに大嶺先生という素晴らしい先生が手を加えて形にしているんですけど、物の本質を日々見るようにすると、見え方は変わりますね。

靖子: その物1つ1つにも、想いだったり土地のエネルギーだったりが感じられる物を大事にしている…

金城: たとえばプラスチック。沖縄の海見ました? 綺麗じゃないですか。でも歩くとこのプラスチックが研磨されて、砂みたいになっているんです、ゴミ。

プラスチックは良いは良いんですけど、捨てたりするこっち側の理由なんですけど、ちゃんとしたのがいいな、と。プラスチックよりちゃんとした物で日々暮らしているほうが自分にとってはいいなというのがすごくあって、それでいつも持ち歩くようにしているんです。

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靖子: 普段から持ち歩いてるんですか? 去年もね、持ってきていただいていたんです。

金城: なるべく外でも、自分の物を持っておこうかなあというのが日々あって。馬鹿かと言われますよ(笑)。

又吉: 憧れです。禅のお坊さんたちが3つくらいの器を丁寧に扱って、お茶を飲んで、また納めてというのに、すごく憧れていて。

今も自分が使う物、毎日使う物って限られているので、好きな物、しっくりくる物、いい物というのを厳選していくと、やっぱり世間的には高かったりとかするものだけど、やっぱり大切にするから、これも数は多く持たなくてもラグジュアリーを感じられる秘訣じゃないかなと思います。

靖子: 男さんは日々いろいろ変えられるんですか? 今日はこんな感じとか。

金城: 今日はちょっと背伸びして良い物にしました(笑)。

靖子: 後で見ていただいて実際に触れていただくと、きっと男さん、男ちゃんが日々感じていることを少し感じ取れると思うので、少しそんな機会も作ってみたいと思います。春美さんはスーツケース2個ですが、物というところでは…?

田中: こないだ葛飾区にある寅さんミュージアムに行ったら彼の持ち物が展示してあって、似てるなーと思って(笑)。耳かきとか、「人間、これだけあればいいんだ」と提示してくれてるなーと思ったんですけど。

私の場合は女性だから、「アクセサリーとかどうしてるんですか?」とよく聞かれるんですけれども、いろいろもらったりとか、メモリアルな物とかすごくあるんですけど、最終的に行き着いたのは、この指輪1つ。これはおじいちゃんがしたのをうちの父親がして、私に譲ってもらった物なんですね。もうストーリーのある物しか自分の中に残さなくなりましたね。

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又吉: 指輪でまた共感したんですけど、これもうちのおばあちゃんからいただいた物(指輪)で、昔はいろんなブランド品とかあったけれど、今これだけになっています。そしてストーリー性のあるもの、大切な先輩からいただいた物とか、昔の彼氏からいただいた物とか(会場笑)、この3つくらいしか無いですね。

靖子: その物のストーリーとか人のストーリーが乗っかってくるので、その人が大切にしている物の話を聞くと、その人が、その人となりがわかったり、その人のライフスタイルやその土地のことを感じられるというのはすごくあるなと私も思っていて。

物に満ち溢れないシンプルさということで、器とかではなくって、お店ではない、男ちゃんの生活のところではどうですか?

 

外側よりも、内側をいかに満足させるか

金城: 土地を器に見立ててじゃないですけど、僕は小心者なんで外に出るのが苦手なもので、朝起きて、この土地の中で目一杯楽しく、仕込みして、来てくれる人をワクワクしながら迎えて、終わったらお酒飲みながら水撒きして、時間があれば海に行けるし。

それで夜、妻と「今日1日こうだったね、明日どうだね」と言って終わるんですけど、一歩も出てなくても全然何も無いんですよね。だから、この土地が好きでいるから、そこに今日構えているお店があるというのはすごくラッキーだなと。若い時にちょっと挑戦して手に入れたんだけど、今はここから出なくてもすごく幸せな日々だなと思います。

靖子: 土地を器に見立てると今おっしゃったのが、その発想がすごく東京とは違うというか、何と言うのかな…

田中: でも地球が器。

金城: そうそう。

又吉: 昨日東京に行って思いました、あぁ緑が多いなとか、ちょっと紅葉がかった木とか、そういうようにすごく、「あー、なんて素敵な所なんだろう」と思いましたね。

靖子: 自分がシンプルでラグジュアリーに生きていくと、見える視点も変わってくる。自分がワサワサしていると、ワサワサした都会の雑音だったり、もしかしたらこのホテルに泊まっていたりとかしても、ざわついたエリアに気がいってしまうかもしれないけれども、シンプルに生きようとか、ラグジュアリーに生きようとすると、きっとその空間だったり、空だったり海だったり自然のものに目がいって、きっと昨日からいらしている方も、豊かということを……、昨日も皆さん、何もしていないけれど「平和だね、豊かだね」と口々に言っている姿を見たので、きっとそういうことなんだろうなと。

きっとこのテーマを体感していらっしゃる方たちが、改めて今日、聞きにきてくださっているのかなぁと思います。

田中: ただ、その外側にある景色が無くても、何とかなるんだと思うんですよね。だから、おうちの中にいてもハッピーでいるのと一緒で、外にあるものも、ある意味マテリアルみたいなものなので、いかに自分の内側が整っているか。私は「最高の自分が今どういう状態なんだろう?」と感じるものと、「どういう人が今自分の隣にいるんだろう?」、それがたまたま駅で隣り合った人でいいと思うんですけど、そういう時に自分が改めて見えたりするので。

靖子: 自分と向き合うということを、きっと大切にしてらっしゃると思うんですね、お聞きしてると。

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又吉: やっぱりフィルターを通して外の世界を見ているので、その外の世界は自分の内側の表れでしかないので、やはり自分のフィルターがクリアになればなるほど、見るものが変わってくるというのは、これだけ歳をとると、だんだん実感していますね。20代とか30代の時よりも、同じ東京なはずなのに、全然、変わってきているという。

だから、やはりいかに内側を満足させるか。満足させると外のもので埋めようとしなくなるし、内側に溢れたもので人と接していくので、いかに自分がクリアな目を持つかというのを日々大切にしていますね。

靖子: 今ヨガとかアロマとかもされていると思うんですけど、そこに行き着いたストーリーはどういう…?

又吉: ヨガに行き着いたストーリーは去年の話から続くんですけど、「このままでは死ねない」と思ったんですよ。ネガティブでグチャグチャで、もう一文無しのこの私のまま死んでたまるか、と思ったんですね。

そして、やはり外側でよく言うインドの覚者に会えばとかヨガをすればとか、そういうもので入っていきましたね。で、とてもはまりました。ヨガにはまって、どんどん追求していくうちに削ぎ落とされていったということですね、シンプルに。

靖子: そこで満たされて幸せになられて、今は他の方にもお伝えしたいって想いは…

又吉: そうですね、いや、そんなに…、そんなにと言ったら失礼なんですけど(笑)。マイライフイズメッセージと思っているので、「このライフスタイルがよければどうぞ」というレベルで、それが良いとか悪いとか正しいとか、そういうのは無くって、やっぱり楽しいですよというのは言えますけど、伝えたいというのはそんなに無いですね。

それぞれのライフスタイルが、それぞれのストーリーが素晴らしいと思っているので、そういうストーリーを分かち合う、というのが良いと思います。

しつもんカンファレンス2017

一人ひとりが最高のストーリー

靖子: 春美さんは人をインタビューされて、世界の皆さんに発信したりされているんですけど、そういう方たちとのストーリーに本当にたくさん接している中で、思うことというか、『シンプルにラグジュアリーに生きる』というテーマで共通して皆さんに思えることとありますか?

田中: みんな命なのよね、一つ一つのね。だから、一人一人がすごい最高のストーリーを持っているので、それに私はまず自分が触れたい。で、触れたものの感じというのを、それは私の感じなんですけど、ここにみんな触れてという思いで書かせていただいて。

世界中で活躍している日本人の方をインタビューしているんですけれども、もう知れば知るほど、いちばん最初に私が勉強できるので、すごくラッキーなんですけど、エネルギーをドーンともらえるんですよね。あぁ最高の生業じゃないかなと思っております。

靖子: 全然違って、男さんはお店を構えていらして。その…、ライフスタイルが違うじゃないですか。そんな女性のお二人の話を聞いて、感じることはありますか?

金城: 女性すごいなあと(笑)。男は女には敵わんなと思います(笑)。発想が、僕もまた結婚して妻がいるんですけど、彼女と一緒になったことによってものすごく、物の決断力とか捉え方とか、すごくいい方向に持っていってくれていますね。

僕は食事出して「美味しい」と言ってもらえたりするけど、この間たぶん話したけど、母親にも、もう感謝しか(ない)。女性の思い、優しさ、与えられる側というのは、素晴らしいし。そこも持っていたいなと思いますね。

田中: 男性性・女性性という話に、私はまた違う概念を持っていて、伝えてないと思うんですけど、みんなやっぱり一人一人両方を持っていて、それが一つじゃないかなあとすごく思いますね。

靖子: 昨日とかのセッションでもよく出てきたと思うんですけど、男性も女性性を持っているし、女性も男性性を持っているという。そのバランス…?

田中: バランスを取らなくても、それがその人になっているから、すべてオッケーと私は思っちゃって。そういうふうにカテゴライズするのがあんまり…と思うんですが、その人の良いところをお互いが見ていけば、それでバッチリじゃないかしら。

靖子: そうですね。

しつもんカンファレンス2017

>>>パート3につづく

撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介

 

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