講演録『これからのメディアと宝物』Part2
『魔法の質問』のチームでつくる電子書籍の出版社のカバーデザインの話から始まり、書名を決める最強ツールの紹介まで。書籍のマーケティングの基礎を知りたい人は必読です。
2017年9月30日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション1C
▼登壇者情報
スピーカー/
藤岡信代
問出版社代表編集長
高橋宏比公
GRAFICO DESIGN inc. 取締役YELL 代表 、Art Director/Graphic Designer
橋本幸明
しつもん家
質問家/
寒川井誠
コンテンツ・クリエイティブ・デザイン(株)代表
のんちゃん: やっぱり何と言っても大事なのは、表紙ですよね。カバーデザイン!(笑)。
Hico: 沈黙が長かった(笑)。
いやいやいや、デザイナーの立場からすると、やっぱりそこは大切にしてもらいたいところで。確かに中のページも見られるような構造にはなっていますけども、全部が全部、見られるわけでは。
寒川井: 立ち読みもできるもんね。
Hico: やっぱり電子書籍を購入する段になって、まず目に入ってくるのは、左上のちっちゃな書籍のカバーの絵だと思うんですよね。あそこで勝負しないとあかんわけですよ!あそこでグッとね、お客の気持ちを掴まないといけないわけで。
やっぱりそこのところは個人ではやらない方がよくて、それなりのプロに任せた方が。
のんちゃん: 絶対そうですね。
Hico: はっしーさんのときはどうですか?
はっしー: そうですね。やっぱり表紙ってすごく大事で、「ジャケ買い」っていう言葉を聞いたことあります? CDのジャケット、いいなぁっていうので(買うこと)。
私の場合は、ランサーズっていう仕事請負サイトでいろんなプロジェクトをやったことがあるんですけど、電子書籍の表紙も、「こういうタイトルの本を出すので、表紙デザイン作ってくれませんか?」って。2万円+消費税。
コンペ方式でやるんですね。私の時には10人くらいの方からお申し込みがあって、1人のデザイナーは2、3点くらいのデザインで、かなりクオリティーの高いものができてきて、その中でいいな~って思った人に、「ここをもうちょっとわかりやすく修正してください」って。
だいたい10日から2週間くらいで表紙デザインが出来上がりました。
Hico: 2万円で、だいたい10人くらい。1人の方が2、3案でだいたい20案くらい。その中から選ぶことができて、しかも出来上がるまで2週間くらいで終わってしまう。
はっしー: そうですね。
寒川井: すごいね!
Hico: やりにくいなぁ~(笑)。
カバーデザイン案が生まれるまでのストーリー
Hico: 今回、僕が『魔法の質問』の『しつもん出版(現・問出版社)』から、「今後出ていく電子書籍のカバーデザインを統一したい」っていうオファーをミヒロさんからいただきまして。「どうやったら、しつもんらしいカバーデザインができるだろう?」ということで、一つのミッションに関わったんですけど。
お見せしますね。
寒川井: 見せてください。あ、ちなみに『しつもん出版』っていうのは、ご存知の方もいらっしゃると思うんですけど、電子書籍専門で出版会社を『魔法の質問』のチームで作ろうっていうことで…。
のんちゃん: 編集担当です!(笑)。
寒川井: (のんちゃんに手を向けながら)編集担当で、いつでも本を出版できる形を作ろうと思っていて。で、(Hicoに手を向けながら)表紙を担当していて…。
Hico: (のんちゃんを示して)編集長です。
のんちゃん: よろしくお願いします。
Hico: ミヒロさんからは、ジャンルのテーマをいただきまして、文庫本・新書タイプのものが1つと、ビジネス本タイプのものが1つ。海外のビジネス本を出した場合っていうのと、自己啓発のものと、あと女性向けのものの表紙。この5つのジャンルで表紙デザインを考えてくれないか(とオーダーがありました)。
やっぱりデザイナーですので、全部が「しつもん出版から出てるよ」っていう、しつもん出版らしさを表現したかったのと、他の電子書籍や出版社と大きな差別化を何かしたいなと。そういうところに着目しながら、進んでいきました。
それで、先ほどミヒロさんからいただいたお題の中にビジネス書のタイプがあると言ったんですが、(一般的なカバーデザインがプリントアウトされた紙を持ちながら)ビジネス書ってこのくらい表紙に情報量があるんですよ。
寒川井: 改めて見るとすごい文字数ですね!
Hico: すごいんですよ。キャッチコピーから、本のタイトルから、サブキャッチコピーから、帯(おび)も。
のんちゃん: あの(本に)巻いてある紙を『帯(おび)』って言うんですけど、そこに何を入れるかっていうのが、けっこう売上を左右するんですよ。
寒川井: そうなんですか。
のんちゃん: そうなんです、そうなんです。
Hico: で、もちろん作家の名前も必要ですし、これが海外になってくるとさらに訳者…。
寒川井: 翻訳された方のお名前もここに入ってくるわけですね。
Hico: これだけの情報をどうやってわかりやすく、常にしつもん出版からのものですよっていう統一感も表現しながら見せていくには?って、考えて考えて考えて、見つけたものが……、みなさんもお勉強したと思うんですけど、
(ドラえもん風に)「魔法の質問 曼荼羅チャート」です。
知らない方もいらっしゃいますか? 魔法の質問では9つのマスを使って、自分の抱えている悩みだとか問題だとかをクリアにしていくっていう1つのメソッドがあるんですけど。これを使うと、さっき言ったこれら(タイトルやキャッチコピー著者名などなど)の情報がうまく、いわゆるマスの中に1個1個情報を入れていくと見やすく表現できるのではないかと。
この9つのマスをベースにして……、
のんちゃん: ジャーン(笑)。
Hico: (自作のプレゼンシートを見せながら) 、“ しつもん出版の書籍は魔法の格子で出来ている”っていうことで……。
寒川井: それ用意したんですか、わざわざ(笑)。
Hico: いや、これはですね、僕がミヒロさんにプレゼンテーションしたときのペーパーですね。最終的にこういう細かいマスにしました。
寒川井: ほぉ~。
Hico: これがベースになっていると、これらを太い線で仕分けたり、細い線で仕分けたり、あるいは面で仕分けたりっていうことが可能なので、かなりバリエーションを多く表現することができることに気がつきました。
しかも、今回は電子書籍ということで、紙の本ではないので、まず角丸(かどまる)にできるということ。
のんちゃん: あの~、角が丸くなっていること。
Hico: 紙のハードカバーの書籍だと、えらいコストがかかって……。
寒川井: えらいお金がかかる。
Hico: 現実的じゃないです。
のんちゃん: 製本してからカットすることになるので、金型を作って…という話になると、莫大なコストになるんですね。
寒川井: ですよね。ありえないですよね。
のんちゃん: 書籍って、最初に出版した分だと出版社はペイしないんですよ。増刷がかからないと、重版されないと儲からない仕組みになっている。(印刷・製本は)そもそもものすごくコストがかかることなんですよね。
Hico: そうですよね。
のんちゃん: 徹底的にコストカットするんです(笑)。
寒川井: でも、できないよね。(笑)。
Hico: それを贅沢にできるのが電子書籍だっていうことで。
寒川井: これいいね。
Hico: これ、探して探して探して、他のユーザー、カスタマーはそういう表現をしてなかったので、「もしかしたら、これは角丸にしたらいけないのか?」と。「そういうレギュレーションがKindle側にあるのかな?」って思って、Kindleにも確認したところ「いや、そういうレギュレーションはありません」と。
「角丸にしてOK」ということだったので、角丸で表現することと、今回は採用しませんでしたけど、帯の位置も通常は(本の)下の部分に帯が入るのが通常なんですが、電子書籍は横だろうが上だろうが、重力がないのでどこでもかけられる。帯は落ちてこないです。
のんちゃん:巻いてないしね(笑)。
Hico: そう、巻いてない。グラフィックだしね。
こういう帯は、誰もやっていないんで使えるのは面白いです。
それと通常の紙の書籍がCMYKっていう4色の色の表現に対して、電子書籍はRGBっていう色で表現しますので、すごく発色のよい色でカバーデザインを表現することができる。
寒川井: CMYKは、色を混ぜればどんどん黒に近くなる。でもRGBは光の3原色で混ぜれば混ぜるほど白に近くなっていく。発色がいいんですよね。
Hico: そうです。なので、それを生かした写真の扱いだとか色の指定をしていくと、すごく目に留まりやすくなるかなと。
ここ(紙を見せながら)に今表記されているものが、電子あるいはデジタルでの特徴を生かしたデザイン表現になるかなと。これとさっきの魔法の質問曼荼羅チャート……、
のんちゃん: 格子ね。
Hico: はい。魔法の格子を組み合わせて作ったのが……。
のんちゃん: ジャジャン。
Hico: これ(デザイン画がプリントアウトされた紙を見せながら)が、まず文庫タイプと呼ばれている……、
のんちゃん: かわいいですよね。
Hico: 上にさっきの魔法の格子をどう使ってるかっていう設計図が載っています。
寒川井: ふ~~ん。
のんちゃん: 『窓』になってるんですよね、ここが。
Hico: はい。
のんちゃん: ここのデザインを窓ってよく言うんですけど。
寒川井: あ、なるほどね。
のんちゃん: 枠があって、窓が開いている感じ。
寒川井: へぇ~。
Hico: で、これ(別の紙を見せながら)が海外のビジネス本タイプですね。
のんちゃん: かっこいいですね。
Hico: これは面で扱った場合ということですね。このグリッドを面で使った場合……、
のんちゃん: みなさん、「自分だったらどのシリーズで出すかな~」っていうのを想像しながら考えていただくと、実現が早いかもしれないですね。
Hico: 先ほどもお話しましたが、文庫本もこれも角が丸くなっている。他の電子書籍ではまだ見たことがない表現ですね。『しつもん』らしいでしょ?
のんちゃん: そう、いい! すごくいい!
Hico: これはやっぱり内容がハードなんで、海外のビジネス本は。こういうちょっとハードな表現になりますけども、角丸にするだけですごくググッとしつもんらしくなりますよね。
のんちゃん: すごくいい。かわいい。
Hico: で、これ(また別の紙を見せながら)がしつもんで扱うビジネス書、日本のものですね。
のんちゃん: 私、これすごく好き。
寒川井: いいね。
のんちゃん: 私ここから出したい。
Hico: いいじゃないですか。縦横これは太い線で表現してますけど、やっぱりベースはさっきの魔法の格子でできているという。
寒川井: これ自分でデザインするときも使えそうですね。チラシ作るときとか。名刺考えるときとか。
のんちゃん: ベースがあるからね。
Hico: グリッドっていう、スイスデザインって言われるものがベースであるんですけども、それも含まれてるかな。ただ、それも曼荼羅チャートっていう素晴らしいアイテムがあったので、そこに着目した僕がえらいっていう(笑)。
(会場拍手)
で、これ(また別の紙を見せながら)が自己啓発書。ちょっと柔らかい、写真を使った。
のんちゃん: これもらしいですね。
Hico: 今のところ色も……、ちょっとこれ(3つのうち1つを指差して)はきついですけど、柔らかいトーンで表現していきたいな~と。
のんちゃん: ちなみに縦と横を組み合わせているって、けっこう高度なデザインなんですけど、すごくすっきり収まっていて。これを素人の人がやると、だいたいとっ散らかってる感じになるんです。
新しいけど、難しいんですよ。なかなか人がやらないっていうことは、難しいってこと。
Hico:ここ(紙を指差しながら)がいわゆる帯っていう捉え方ですね。なので、普通は下にあったりしますけど、さっきもご覧いただきましたが自由なんです。捉え方が。
だから、どのシリーズもしつもん出版から出す自己啓発の本は、このフォーマットっていうことであれば、いろんな作者がいて、いろんな色、写真があるんですけども。違うんだけども同じっていう。
それぞれの内容が違うように、見た目が違うように、でも全体の匂いは同じ。
のんちゃん: そうですね。あのレーベルの感覚っていうかシリーズの感覚なんですけど。
どこの出版社から出すかっていうのがあるじゃないですか。
ビジネス書だったら、やっぱり日経さんから出したいとか、たぶんあると思うんですけど、そのブランド感みたいなことってデザインがすごく重要ですよね。
ブランドを作ってらっしゃるお仕事の専門家だから、非常にいいですよね。パワーが増す。たくさんシリーズが揃ってくると、シリーズのパワーが上がってくるので。
Hico: ありますよね。
のんちゃん: 編集者としてはやりがいがあるというか。楽しみ。
Hico: これ(また別の紙を見せながら)は女性向けの電子書籍の表紙ですね。
寒川井: あ~、誰向けかで、全然デザインが変わるんですね。
Hico: はい。やっぱり柔らかかったり。これもさっきのいちばん最初の文庫本と同じようなフォーマットを使ってるんですが、写真にするかしないかで、これだけ大きく違う。
のんちゃん: あと余白のデザインがちょっとラブリーな。
Hico: はい。ここがね。なんとなくマリーアントワネットが使ってた鏡ですか? 姿見みたいな、そんなのを(イメージして)。女性が好きかなって。
のんちゃん: 素晴らしい。ちょっとね、ラグジュアリー感があって、私は好きです。
Hico: こんなのを今後しつもん出版から出していく予定です。
書名を決める、最強ツールがあるんです
のんちゃん: 今、デザインがすごく違うっていうお話をされたんですけど、いちばん大事なことは「誰に向けて出すかということがはっきりしてる」ということなんですね。それは、紙の本でもデジタルベースの本でも間違いなくって、自分が出すマーケット、ターゲットの読者が誰なのか。
女性なのか男性なのかっていうのでもデザインが変わるし、さっきビジネス書のパターンと最後の女性向けのパターンでわかったと思うんですが、内容も、(デザインから)ニュアンスとして伝わるじゃないですか。
プラスしてすごく大事なのは、書名なんですよ。
寒川井: タイトル。
のんちゃん: 本のタイトルとデザインと、あと内容とターゲットが一致してるということがすごく大事です。自分の好きなデザインじゃないんですよ。
Hico: はい。はい。
寒川井: お届けする人に。
のんちゃん: そうです。大事なことは、読者の方が好むデザイン。読者の方が期待をするデザイン。ということを、ちゃんとそちら(読者)の立場になって考えられるかどうかが、すごく大事だと思います。
たぶん普通の素人の方っていうか、一般の方が自分で出す本とそうじゃない本を見分けるとしたら、この2つのポイントで見分けられるんです。タイトルの付け方とデザイン。
デザインがちゃんとプロの……、なんて言うかな、買いたくなるというか、内容をきちんと伝える上で、魅力的に見える工夫がされているかどうかというのと、タイトル。
本のタイトルが、ちゃんと今の時流に乗ってるかとか、どういう風に言われたらその人が欲しいと思うかを考え抜かれているか。
そこに必ず差が出るんですよ。はっしーさんは素晴らしい本のタイトルをつけていらっしゃったので、すごく考えられたと思うんですけど。
はっしー: そこはちょっと、今日参加されているみなさんに、すごくいいタイトルの見つけ方があるので、ぜひメモっていただきたいんですけども。
さっきも言ったように、本を出す時、電子書籍出す時の材料って、表紙のデザイン、それから本のタイトル、あとは中身の原稿ですよね。
で、デザインはHicoさんのところで作ってもらえるので、じゃタイトルをどうするか。
一つはキャチフレーズ。何か一つ、キーワードを作るんですね。「魔法の質問」でもいいし、「7つの法則」でもいいし、「デザインの力」でもいいんですけど、そのキーワードを使って『書名メーカー』っていうサイトがあります。(残念ながらこのサイトは閉鎖となってしまいました)。
書名メーカー。書籍の“書”に名前で書名メーカーっていうサイトがあって、それにキーワードを入れると、候補のタイトルがいっぱい出てくるんですよ。
Hico: へぇ~!いい世の中だな~。
はっしー: どういうロジックかわからないんですけど、そのタイトルがどれくらい売れそうかっていうのを出してくるんですね。
Hico: あ、そう!
のんちゃん: あ、でもそれは過去のデータから……。種明かしをすると、編集者は売れている本をいかにパクるかということを考えているんですよ。
寒川井: ん~~ん。
のんちゃん: 売れている本の書名の空気感とかニュアンスが、時代感覚を表すことが多いので。やっぱりその時その時の空気感を表す言葉というのがあるんですね。だから、売れる言葉を持ってくる。だけど、差別化する。
はっしー: そうです、そうです。
それがね、何十個も出てくるんです。たとえば「7つの法則」だったら、それ入れると「世界の中心で7つの法則を叫ぶ」(笑)。
Hico: 出た!(笑)。
はっしー: そんな感じで、聞いたことあるようなやつがい~っぱい出てくる。それで、売れそうなやつがね、何万部とか出てきて。
のんちゃん: へぇ~~。
はっしー: その出てきた書名候補の中で、仲間というか、近しい方に「どれがいちばん買いたいか?」って(聞く)。
寒川井: そこで関わるっていう。
はっしー: そうですね。だから、ほんと自分の頭では絶対見つけられないような面白い切り口のものがいっぱい出てきますので、『書名メーカー』使ってみてください。(残念ながらこのサイトは閉鎖となっています)。
のんちゃん: あと、手っ取り早くAmazonで自分が出したいジャンルの本を見てみると、今の感覚がわかるので、どういうところに出ていけばいいのか。
あとですね、比較する対象。自分の宝を見つける時の比較対象は先生じゃない。偉い先生じゃない方がいい、というのがあったけれど、本を作る時は、売れている本を参考にしないとダメですよね。
Hico: あ~ですね。
企画書持ち込みをする人が、市場を知らないことも
のんちゃん: だから、まず「市場がどうなっているのか?」をよく知るっていうのが、すごく大事なんですね。
私、企画書を拝見する機会もあって、いっぱい持ち込みもあったんです。編集長時代に。「こういう本出したいです」って。
企画書見て、ほとんどの方の共通点は、自分のジャンルのことを知らないんですよね。
寒川井: ほぉ~~。
のんちゃん: そもそも自分のジャンルにどんな本が出ていて、どんな本が売れていて、その理由が何かっていうのがわかっていたら、自分の本をどうやってそこに合わせるか。あるいは、差別化するということが選べるじゃないですか。
でも、そもそも調べてないと、「それに対して自分がどうするか」ということが決められないんですよ。だから、なんて言うのかな、比較してどうっていうよりも、「(市場が)どうなっているのか?」というのは知っておいた方がいいんですね。
Hico: だから、個人で出す電子書籍と言えども、それなりのリサーチャーのマーケティングが必要だってことですよね。
のんちゃん: うんうん。そうですね。でないとやっぱり、出しただけっていうことになってしまう。それは印刷の書籍でも同じだし、電子書籍でも同じだと思うんですよね。
でも、みなさん、本を出すことがゴールじゃないと思うんですよ。自分が伝えたいことというか、みなさんにお役立ちのことをたくさんの人に伝えて、役立ててもらって、「世の中がよくなってほしい」とか、「たくさんの人を幸せにしたい」っていうのが目的だと思うんですね。
そのためには、やっぱり広まってほしいじゃないですか。そしたら、やっぱりどうやったら受け入れられるのか、どうやったらみんなが「欲しい」って思ってくれるのか。というところまで考えることが、すっごく大事だと思います。
Hico: そうですね。
寒川井: デザインに入ってますもんね。
のんちゃん: あ、そう!
Hico: デザイン。
はっしー: 私は怠け者なんで、いかに手抜きをするかって考えてるんですね。だからさっきの書名メーカーもいろんなものを事前に見ていくのがベストなんですけども、なかなかそれをやれる人は少ないなぁって。じゃあ、先にこれ(書名メーカー)見てみようって。
のんちゃん: そうそうそう。売れる本を一個見ればいいから。
寒川井: 売れている本のコーナーってありますもんね。
のんちゃん: そうです、そうです。やっぱり時代感覚とか、相手のことをよく知るということもあると思うので。
読者の人が何を欲しがってらっしゃるのかなというのは、情報を出す側に必ず必要なスタンスなんですよね。自分が「伝えたい」っていうだけだと、伝えたいで終わってしまう可能性があるので。
Hico: そうです、そうです。
のんちゃん: あ、デザインもまったく同じ発想ですよね。
Hico: 同じです。
のんちゃん:相手が受け取ったかどうかの方が大事なんですよ。私は、実はそこが、出したいだけの人がステップアップするポイントかなって。
著者になれるかどうかって、そこまで考えられるかどうかが、結構大事かなって思います。
Hico: せっかくね、出版するんですから、さっきのまこっち(寒川井)の話みたいに5ページはね……。
寒川井: 一文字もないみたいな(笑)。
Hico: それはどうかと思うわけですよ。多くの人は、やっぱり読んでもらいたいし、伝えたいことがあって書いているわけじゃないですか。
寒川井: うんうん。
Hico: それは多くの人に見てもらいたい、読んでもらいたいわけだし。であれば、やっぱり今のんちゃんが言ったね、リサーチして、伝えたいターゲットをちゃんと見極めて、しかるべき見た目で売り出してあげるっていうことが必要かなって思う。
デジタルの強みは、反応が数字で取れること
のんちゃん: で、その辺を考えると、やっぱり電子の世界ってものすごく有利だなと思っていて。たとえばfacebookの投稿にしろ、ブログの1記事にしろ、デジタルって反応が数字で取れるじゃないですか。
だから、みんなに聞きながら(反応が)取れるんですよ。すごくないですか?
Hico: あ~、さっきのはっしーの話…。
のんちゃん: そうそうそうそう。聞きながら作っていけばいいので。
私がぜひオススメしたいのは、最初から1冊を書き上げるんじゃなくて、少しずつ書いたものを集めたら本になるという発想をもつこと。
昔、私たちも散々作りました。ブログから本を。
寒川井: へぇ~。
のんちゃん: ブログ本っていって、ムックとか書籍とかが流行ったことがあったんですよ。
寒川井: 『魔法の質問』もそうですよ。
のんちゃん: そうそうそう。だから、毎日一個ずつ書いている記事を書き溜めていくと、本になるということが割と簡単にできる。というのと、あと、反応を見ながらできる。
Hico: はいはい。
のんちゃん: いつもいつも「どう?」「どう?」ってファンを作りながら出せるって考えると、ものすごく、なんかね、楽しいじゃないですか。やり取りしながら本を作るって。
そしたら、どんどん楽しく本が出しやすい世の中になっていくなって思うんですよね。
Hico: しかも同時に、仲間と絆が深まるでしょ?
のんちゃん: そうそうそうそう!
はっしー: そうそう。
Hico: ファンも増えていくし。
のんちゃん: そうそうそう。
Hico: で、またファンが喜んでくれるし。面白い循環ですよね。
のんちゃん: 面白い循環。それこそ、会ったこともないけどコミュニティってできていくんですよ。
寒川井: 会ったことなくてもね。
のんちゃん: しかも、ブログって双方向で、コメントもらうこともできるんだけど、ほとんどの人は読むだけっていうことも多いじゃないですか。だけど、なぜか信頼関係って築かれているんですよ。
私の経験で話すと、それこそ10年くらい前に、ブログを書籍にするとか、メルマガを書籍にするとかっていうのが流行ったことがあって、(そのときに)すごく言われたのが、「もうみんな読んだものをわざわざ本にして買うの?」って言われたんですね。
今こういう話をすると「え? わざわざ電子書籍で買うの?」って思われる方がいると思うんですけど、買うんですよ(笑)。なぜなら、ファンだから。
Hico: うんうんうんうん。
のんちゃん: 「まとめてくださってありがとうございます!」って言われちゃうんです。
寒川井: そうだよね。ファンは「あ、ここ読んだことある~」って、読めるもんね。
のんちゃん: そう!
寒川井: 楽しいかも。
のんちゃん: それもあるし、あとやっぱり“まとまっている価値”ってあるんですよ。
ブログとかSNSだと流れていっちゃうから、「あれ? なんかで読んだんだけど、もう一回読み返したいんだけど」って思った時に、戻れないことが多くって。
それが電子書籍だったら、もう検索かけてポンって飛ぶし、好きなページをブックマークもできるし、まとまっているっていう価値を感じて、ファンの方もまた買ってくださるんですよね。また読んでくださる。
撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介