講演録『また行きたい!を生み出すホスピタリティの秘訣』Part3
後半は、未来のホスピタリティの在り方について。これからのAI時代、サービス業に求められるホスピタリティをいかに続けていくのか? スピーカーと質問家が最後に共有した思いとは?
2017年10月1日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション7A
▼登壇者情報
スピーカー/
鈴木 克彦
あなたの才能を見つけ出し売上げ平均4.9倍にする起業家育成の専門家
上杉 祐子
(有)フェスティーナ 代表
田頭 和み
豊受株式会社 代表
1日1組様限定お食事処「おなかま」 女将
質問家/
兼重 日奈子
(有)ねぎらいカンパニー代表
人にしかできないことをいかに伝えるか?
兼重:それぞれに考えずにやれちゃう天才肌のお二人と、組織やチームとして文化を創っていくところからされているパターンをお話しいただいたのですが、これからは、未来に意識を向けて、今後、どうなっていったらいいでしょうか?
どんな形にしていくと、お客様に『また行きたいと言ってもらえる』と思いますか?
和み: はい、人間じゃないとできないことをしたらいいと思います。
鈴木: そのとおり、そのとおりだね。
兼重: う~ん、なるほど
和み: というしかないかなと思っています。
兼重: なごちゃん流に言うと、それは、どんなものですか?
和み: たまたま、手仕事で手料理。手でやることが多い。本当に将来なくなっていく仕事が増えていく中で、人間しかできなくて人間にお願いしたいというのは、究極、ホスピタリティだと思っています。やっている方もやられている方もハッピーなものです。
兼重: ありがとうございます、まさに。鈴木さんは?
鈴木: サービス業のほとんどがこれからの時代はAIに変わっていくんでしょうね。ホスピタリティに取り組んでいないところが、ほとんどAIに変わっていくんでしょうね。なぜかと言うと、ホスピタリティは人の温かさを伝えるのに、AIってあり得ますか?
これは無理ですよね。だって人じゃないから。人の温かさとか機械ではできないことを考えていかないと、単純作業はAIに変わる可能性が高いでしょうね。
兼重: そうですね~。
鈴木: まったくホスピタリティなしで、これからのサービス業を考えていくのは、難しいのかもしれない。普通のお店は淘汰される時代が来るのかもしれない。
兼重: 経営者は今、そちらに流れている経営じゃないですか。生き残っていくためにですよね。
鈴木: そうですね。
ゆうゆ: 私は『また行きたい』と思うのは、『また会いたい』。美味しい物をいただきました、美味しい時間だった、ということだと思うんです。人とのふれあいがあるから、『また戻りたい』と思う。
人間にしかない五感というものをどれだけ大事に伝えられるというか、また、テレパシーがあるから、思いを伝え合うことができる人との繋がりをどれだけ持つか、ということが大切だと思います。仕事を超えた所で。
兼重: そうですね、みんな、思いをどのように伝えたらいいかなぁ~と思っていると思うんですけど、ホスピタリティを形にする上で気をつけていることとか、言葉にするときとか、どんなことがありますか?
(少し沈黙)
想いを形にするには?
ゆうゆ: 私ですか、どれだけきちんとマニュアルどおりにしても思いが入ってなければ、「私、やるべきことをやりました」と言われても、「でも、それでは…」なので、思いはライブ感なので形と言われても…。
兼重: 形というのは、思いを行動にするために。
ゆうゆ: それこそ行動に移さないと伝わらない。
鈴木: まあ、思いを行動にすることはもちろん大事だし、思いを表現する、言葉と表情に表現するというのが大事。ほとんどの人が「わかりました。いいですよ」とか、なんかやりたくなさそうに言うんだよね。
兼重: あらあら
鈴木: やってあげたそうに言ってくれると、また、頼みたくなるのに。そういったちょっとしたことをやらないんですよね。このちっちゃい、一手間をかけたい。
和み: 確かに
兼重: 和みさんは?
和み: 私、人を動かす話をすると、幸せの4因子という、前野隆司さんが提唱している『ありがとう』『やってみよう』『あなたらしく』『なんとかなる』の4つのキーワードを、冗談みたいにスタッフと言い合うんです。
「なんとかなると思っているでしょ~」(笑)とか言いながら、何がブロックをかけているのかとか、お互いに話を分かち合って、「そうか、それが嫌なんだね」とか。次の日にやってみようかなという気持ちが起こってくるので、やってみようかなと思って安心してもらう。
うちは、食事も安心してもらうので、安心した状態で自分らしい発想してもらうというのを大切にしている。まあ、アクション。
兼重: 最後にもう一度、言ってもらっていいですか?
和み: 『ありがとう』『やってみよう』『あなたらしく』『なんとかなる』、この4つ。
兼重: いいですね。最後が
和み: 本も出されていて、結構、いいですよ。
兼重: 『あなたらしく』がキーワードのように思えていて、ホスピタリティとしてリッツカールトンといえば、リッツカールトンというふうに、そのお店らしさがイメージできたらいいと思うんです。
『あなたらしく』を見つけるキーワードを教えてもらっていいですか?
やり方は何でもいい。ただ最大限の表現をする
鈴木: 自分らしく?自分らしく?
やり方は何でもいいと思うんです。大切なのは目の前の人がこの人と時間を共有したいと思う。ただ、中途半端な表現をしない方がいい。最大限の表現をしてくれたらいい。
変に遠慮するんだよね、みんな。恥ずかしいとか、そんなことを言っちゃっていいのかとか。でも、目の前の人を喜ばせる、常にハッピーにするとか楽しい笑顔に変えると思ったら、そんな演技をしなくていいと思う。
ぼく思うんですけど、「お客さんにみんなハッピーになってもらいたいですか?」って聞くと、みんな「はい」って言うんですよ。でも、みんなで次に「なんでそこまでしないといけないんですか?」って言うんですよ。意味わかる? 「幸せにしたいんでしょ!幸せにしたくないの? どっち?」みたいな。
兼重: なるほど
鈴木: だから、中途半端なところは相手が受け取ってくれないんですよ。さっきから言っているように、また来たいか来たくないか、だけなの。第2のわが家になるかならないかだけなの。
中途半端レベルでやっていると、なんの結果も産まないです。
兼重: う~ん、自分のお店とかサービスはこれなんだ、ということを、やり続けるということなんですかね?
鈴木: 相手が喜ぶことを徹底的にやり続けるだけじゃないですか。わかりやすく言うとね。中途半端にやると、それは伝わらないよというだけです。
兼重: 一ついい事例が出ると、みんな真似て中途半端になっちゃうんですよね~。
鈴木: そうですね~
兼重: 内から出てくるサービスとか、自分しかできないことをやり続けている人が、選ばれるようになっていくんですね。ゆうゆさんはどうですか?
ゆうゆ: 中途半端ということで、私が感じるのは、自分軸ではダメで、お客様に対して「難儀だなあ~」と思う気持ちがある時は、あまりいいことにはならない。難儀と思う時はいつも自分軸。
難儀と手間を惜しまないでやっていると、相手を満たしているようで、エネルギーの循環で自分が満たされていくので、ホスピタリティの点からも『また、来たいと』思ってもらえる。思いと一緒。思いがあるかどうかというのと同じだと思います。
鈴木: そうですね~。
兼重: はい、まさに。手を抜かないところがいいですね。ミヒロさんも言われていましたよね。肩の力はなくけど、手は抜かない。
和み: 一ついいですか?
健康だと「面倒くさい」と思いにくいんですよ。心が悪いのではなくて、「昨日、何食べた?」って聞くんです。だから、今日、わからないことは、寝て、明日考えよう!
東洋医学なので、全部、臓器に繋がっていますから……。顔を見て、その臓器に繋げるんですよ。見ると、肝臓が疲れているとかがわかります。
私の健康の定義は、心と体は同一なので、同時に幸福感を感じるかどうか。起きた時に幸福感がある。「その状態で考えましょう!」って、言うんですよね。健康じゃないと、面倒くさくなっちゃうんですよね。
兼重: サービスをちゃんとするには、心も体も健康。
それを続けていける秘訣を、みなさんから伺いたいと思います。みなさんがホスピタリティを続けていくための何かいいアドバイスをお願いします。
ホスピタリティを続ける秘訣は、お客様の笑顔を見続けること
ゆうゆ: 私はさっきから鈴木さんのお話が聞きたくて聞きたくて(笑)。私は続けられるかどうかわからないですけど、喜びは必ず人との関わりから生まれると思っています。成長する喜びとか、どのようなものでも。
兼重: え~と昭和30年、創業なんですよね。
ゆうゆ: うちの母が…、そうですね。
兼重: 事業としては、ずっと続けて来られたということなので、それをお聞きしたいです。
ゆうゆ: 2代目には辞めるという選択肢が無く、一度受け取ったバトンを手に転びながらも走り続けた。修行の連続だと思い続けていました(笑)。
でも、やはり「ご縁」に恵まれ、「機会」を与えられ、綱渡りのような人生でもその時々で手を差し伸べてくれる人がいて事業を続けてこれたのだと思います。
鈴木: 単純なのね。う~ん、周りを楽しい人ばかりにしたらいいんですよね。だから、周りの人を楽しませたり幸せにしていたら、そういう人たちの中にずっといるので、単純にシンプルな答えでいいと思うのと、あとホスピタリティも高めるために実践していくことは、ハードルが高いんです。チャレンジをしないといけない。そこには、勇気がいる。
お勤めをしている人に、「今まで仕事していて良かったと思う瞬間はどんな時でした?」と質問したら、一番は『あなたにお願いして良かったと言われた時』、二番めは、『上司に認められた時』、三番めは『ひとりで出きないことをみんなで頑張って成果を上げた時』でした。
結局、幸せ感を感じるためには、一歩踏み出さないと行けないところがあるんです。だから、勇気を出して一歩、踏み出して欲しいな!
鈴木:何か特別なことじゃなくて、表情一つでいいと思うんです。「嬉しい、ありがとう」と言うのを、本当に嬉しそうに言う、そういう小さなチャレンジからしてくれたら、周りにいる人、みんなハッピーになるんじゃないですかね。
答えになってますか?
兼重: なっています。ありがとうございます。なごちゃん、どうですか?
和み: 続ける。私もスタッフも頼まれると、燃えるんですよ。いちばん上の『あなたで良かった!』に近いと思うんです。
鈴木: 自分の存在感を感じるからね。
和み: そうなんですよ。とにかく、「頼まれてきて」と言っています。基本的にがないビジネスをやっているんです。頼まれたことをやっているだけです。いつも誰かが頼んできてくれたことを形にして出して、「他にも欲しい人がいますか?」とやってきただけなのです。
ある日、お婆ちゃんが「あなたのご飯を食べたい」と言って来てくれたので、お弁当を作ったら、「ご飯とお味噌汁もつけて」と言われただけなので、いつもサービスは自分で考えるんじゃなくて、相手が言ってくれるというのを続けているだけ。スタッフにもそのことは、共有していて、『あなたが頼まれてきて』という感じです。
鈴木: もう一つ言っていい?
継続するためのいちばんのコツは、目の前の人が喜んでくれている顔を見続けることだと思います。
兼重: そもそも何のためにこれをやっているか、その笑顔が見たい、というところに立ち返るということですよね。
鈴木: 自分の存在感を確かめて、自分のやっていることが間違いないと、毎日、確かめられるのがいちばん、自信を持って仕事ができる。
和み: 醍醐味だと思っていて、私のビタミン剤です。
兼重: ほんとですね。はい、ありがとうございます。
ゆうゆさん、最後に一言どうぞ!
ゆうゆ: 嬉しいです。同じ場を共有してくださって、ありがとうございます。
兼重: はい、本当にステキなお話が聞けたと思います。ありがとうございました。
撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介