「大人になりたい」と子どもが思えるように、 私たち大人の背中を見せる

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講演録『世界の教育』Part3

 

「自分はこれでいいのだ」と、まず大人が自分自身を知ること。そして自信を持って子どもに背中を見せること。日本の教育の未来について、それぞれの想いを語っていただきました。

2017年9月30日開催
しつもんカンファレンス in OKINAWA セッション2B


▼登壇者情報

スピーカー/
いぬかい良成
教育活動家

高橋香織
しつもん財団事務局

山脇恭子
社会福祉士。上海ネットラジオとpodcastにて、子育て相談「ままサプリ」を展開中。

質問家/
塩沢 節子
横浜市に小規模保育園の代表


 

自分が笑顔になれる方法を知ることから

せっちゃん :きょうちゃんのラジオね、『ままサプリ』、すごく面白いんです、ぜひ。そこで「ママが笑顔で世界が変わる」だっけ? チャーリーが言ってたことがまさにそれで。

チャーリー : 「ママは笑顔で留守がいい」とか、そーいうんじゃなくて?

会場 : 爆笑

せっちゃん : ママの笑顔というところでも、どうですかね? どうしたらママが笑顔でいると思います?

かおりん、どうですか? ママでもあるもんね。

かおりん : はい!今日ここに娘も来てるんですけど。

え、なんだっけ? どうしたら笑顔になれるかなぁ……?

チャーリー : 鏡見るとか。

会場 : 爆笑

チャーリー : 失礼しました。

かおりん : それも大事だよね~。鏡を見て笑顔になれたら最高ですよねー。

私は自分との対話の時間をすごく大事にしていて、わりとーあのーー、1人の時間を。

人によって違うと思うんです。だから、「自分が何で笑顔になれるのか? 何で気持ちいい状態になれるのか?」というのを知らないと、絶対たどり着けないし、「私がこうですよ」って言っても違う人は違うし。だから、答えは皆さんの中にあると思うんですけど。

私はわりと、自分自身との対話を通したり、1人になる時間だったり、自然の中に身を置いたり感じたりする時間が大切だったので、そうですね、自分の心地いいなー、気持ちいいなーと感じることを増やしていけたら。

意外と気づいていないことってたくさんあると思うので、本当に些細なことでいいと思うから、そこをやっていけたらいいんじゃないかな?これ、私の意見です。

せっちゃん : きょうちゃんはラジオやってて、どうですか?

きょうちゃん : かおりんとまったく同じなんですけど、やっぱり、パッと感じることに正直である、パッと感じるひらめきに。それを「今できないから」と言ってると、自分自身に嘘をつき重ねることになってくるので、思考したことじゃなくて、何か感じたことに、ママがもっともっと自由になったらいいのかなって思うんですよね。

日本は先進国だし、本当に豊かで、本当に素晴らしい国だと思うし、帰ってくる度に「帰ってきたい」と思うんですね。なんですけど、中国の女の人も、この前親子留学に行ったセブの女の人も、働くことが当たり前で、みんな本当にすごく笑顔が素敵です。

「日本人て笑顔がないよね」って言われたんですね。「なんでみんな笑わないの?」ってセブの3人の先生にも言われました。「こんな豊かなのに、なんでみんな笑わないの?」、確かに笑わないなって思ったんですよね。

だからそこが、社会のせいとか国のせいとか言ってると全然変わらないし、長いことかかるので、家庭のママからなのかな、チャーリーがおっしゃったように。そこが変わると、子どもってたぶん「大人っていいなー」とか、「大人になりたいなー」とか(感じると思うので)、「あ、好きなことやって生きていけるんだ」っていう子どもを、もっともっと増やしていただきたいかなーって思いますね。

中国の人もよく笑うし、よくしゃべるし、セブの人もよく笑うし、よくしゃべりました。

 

私たち大人の「背中」を見せていくこと

チャーリー : そのへんで言うと、子どもが自信を持って「自分も社会に出たい」と思うのは、やっぱり大人たちの背中を見て、大人たちの自信にあふれた背中を見ていればたぶん「こんな大人になりたい、こんなママになりたい、パパになりたい」って思うと思うんですね。

僕は実は子どもが不登校になったことがあって。

あ、ちょっと宣伝させていただきますね。『子どもは悪い子に育てなさい』って本をそこで売っていますので、のちほどお買い上げいただいたらサインしますけれども、本来税別ですが、税込で1300円となってます。

この本にも書いたんですけど、子どもが小学校6年生のときにチアのダンス大会で世界一になったんですね。で、そのあとに中学校でチアダンスのエリート校みたいなところに入りたいって言って、入れたんですけれども、結局その学校でやっかみに合って、先輩たちからいじめられて、うちの娘はやっぱりこういう親に似たのか「お前らふざけんなー」って、生徒全員に対してダーって戦ったんですね。

でも今の時代は、そのあとにラインやSNSで総攻撃なんですね。逆に「お前ふざけんなー」「二度と学校に来れないようにしてやるー」みたいな感じになって。娘は「もう行かね!やめた!」って感じで、まぁ、今いないですよね? さっきまで一緒にダイビングしてたんですよ。もう19歳になりました。

中1から高2までずっと不登校でいたんですけども、僕、どうすればいいかわからなかったんですね。女の子だし、男の子だったらまだしも性も違うし、何考えてるかわからない。たぶんお母さん方って男の子に対してそうだと思うんですけど。

そのとき自分は、学びもしました。心理学だったりNLPだったりコーチングだったり、いろんな学びもしましたが、あとは自分の背中を見せること。「じゃあ何すればいいんだろう?」と考えて、単純かもしれませんが、山登りを始めました。で、キリマンジャロっていうところに登ったんです。

講演録『世界の教育』Part3

会場 : おおーー(どよめき)

チャーリー : 来年はアコンカグワに登るんですけど、今年はちょっと低くてキナバル山というところ。毎月1回は日本の山に登っていて、なんかそーゆうキチガイの親を身近で見ていると、「やっぱりこの親、勝てないな」とも思ってると思うんです。でも、「この親カッコイイな」とも思ってると思うんです。

昨日飛行機の中でこっちに来るときによく結婚式でかかる「おと~うさん、おか~さん♪」っていう……、なんて曲?

せっちゃん : え? なに? 歌??

かおりん : え?? もうちょっと歌って。

チャーリー : そこしかわからないんですよ、「おと~うさん、おか~さん♪」

知りません? 若い子いません? 年頃の人?

かおりん : 誰も見当たらない(笑)。

チャーリー : あれ? 聞かなかったことにしてください(笑)。

本当にもう、飛行機の中で泣いちゃって。

せっちゃん : え?歌ってくれたんですか?

チャーリー :パパって言って、ピッて(イヤホンを耳に。というジェスチャー)さしたんですね。

会場 : ええーーーー(どよめき)

チャーリー : 「聞いて」って。結婚式でもないのに、そんな歌……。雑誌読むふりしてポタポタ泣いてしまいました。

せっちゃん : えー、感動するー。

チャーリー : で、大好きなお父さん、大好きなお母さん、産んでくれてありがとうっていう歌なんですけれども。いつのまにか私がちっちゃい頃と違ってふと気づいて見てみたら白髪だらけの頭でシワだらけの顔になっちゃって…、という歌詞だったんですけど、やっぱり、子どもって、親の背中だったり、親の姿を見てるんですよね。

だから、そんな姿を、かっこ悪い大人じゃなくて「きちんと生きてるよ」という姿を見せていけば、子どもは育ってくれるんじゃないかなって最終的には思いますけどね。なんか頭でどうこうって考えてるよりも、「あなたなら何ができるのか」というところを一歩踏み出せばいいのかなっていう気がしますね。

講演録『世界の教育』Part3

せっちゃん : 子どもにどうしたいかじゃなくて、どういう子になって欲しいかより「自分がどうしたいか」ってことですよね。

チャーリー : そうですよね。

せっちゃん : ね、自分に矢印向けて、どうしても先に言っちゃう、でも「自分できてるんだろうか?」って思うとね、「あ、できてない」っていうところで。子どもは全部それを見てるので。

チャーリー : そうですね。

せっちゃん : 黙っていてもわかってるし、赤ちゃんでもわかってるので。

昨日もそんな話になって。小さければ小さいほどね、そんなに言葉ができないですよね。でも、この先生好きとかそうじゃないとかも、全部わかってるんですよ。それは一生懸命遊んでくれるからとかじゃなくて、すべての何かを見てるんですよね。

生きていくために、自分はこの人について生きていくじゃないですけど、わかってるのでね。それがずっと、親に対してはそう思いますよね。

チャーリー : 「親は子を選べない、子は親を選べない」って言いますが、実は、子は親を選んで生まれてきているという。ただそれは無意識の中で選んできているので本当のところはどうなのかっていうのはありますけど、胎内記憶がある子どもの「私が選んできました」って話は、結構、聞きますよね。

せっちゃん : では、そんなところで。
他にも聞いてみたいなと思うんですが、どうですか?

 

アクティブラーニングの実感

参加者 : 大学とかでもアクティブラーニングだって言って、自分たちが主体で学ばせようという取り組みがあるんですけど、実際、僕らの世代の人は、「いや、私できないから」って言ったり、英語に関しても「できないから留学はいいよ」って。結局、興味はあるけど実際にやるかやらないか、「自分はそういうことをするべきではない」と自分で自分を押さえつけちゃう。結果、何もしないというのを、周りを見てそう思ったんですよ。自分がしてるかどうかって言われたら疑問ですけど。

アクティブラーニングと言って、教育側がそういうふうに働きかけているのに、なんかこう、教育されている側からしたら、アクティブラーニングしている実感が湧かないというのはなんでなんだろうなっていうのが気になります。

せっちゃん : なんででしょうかね?

チャーリー : じゃあ、僕からいいですか?

僕、プロジェクトベースラーニング(PBL)研究所の理事をやっているんですけど、アクティブラーニングというのはPBLっていうアメリカの教育で、そこからきた言葉なんですね。

僕が思うに、自分が生きていること自体がアクティブラーニングだと思うんですね。だって自分に何万回っていう「しつもん」をして、自分で判断しながら生きているわけじゃないですか。もうそれこそが自発的じゃないですか。そんなに難しく頭で考える必要もないんじゃないかな?

自分が生きていることですら、1歩歩いていること、今日ここに来ていることすら、すべてがアクティブラーニングなんじゃないかなって、そんな勢いでいいのかなって、これが「YES・NO」、「やってる・やってない」じゃなくて、もうすでにアクティブラーニングだよって、捉えてもいいんじゃないかと思いますね。

せっちゃん : きょうちゃんどうですか?

きょうちゃん :今はアクティブラーニングとかグローバル化とかいろんなことが言われてますけど、あんまり必要ないんじゃないかなと思っていて。すべていいことのように……、グローバル化とかグローバル人材とか(言うのは)、日本だけなんですよ。

海外に行くとそんな言葉はなくて、すごくおかしな造語で、日本人だけ。これは島国の性質なのか、私はもっと日本人であることに誇りを持っていいと思うんですよね。言えないけれども、ものすごく深いものを持ってますから、言わせるとすごく深いことを言うんですよ。

ただ私たちはそういう教育を受けていない。だからディベートとかプレゼンテーションとか小さい頃からやっている人に比べたらできないんですけど、ものすごく深いものを持っているので、そこを引き出すことができたらとっても素晴らしい国民だと思うんですよね。

なので、そこをどうしていくのか。すべて迎合するんじゃなくて、日本独自のいいところを取り入れてやっていくって方法で動いていったらいいのかなって思います。急に今、言えなかった人たちが「言ってください」と言われても難しくて……。

でもこれは練習したらできるようになることなので、たいした問題じゃないと思います。人間性、生きてきたものがすべてだと思ってます。

かおりん : アクティブラーニングに関してお話をすると、しつもん財団としても先生がた向けに、「アクティブラーニングとしてしつもんを活用した授業をこんな風に一緒にやっていきませんか?」という研修をしていたりするんだけど、「取り入れたいけど、余裕?がやっぱりないんだなー」というのが本当に、実感としてあります。それでも工夫して工夫して、取り入れている先生がたもたくさんいます。

だから、私が今聞いていて考えたのは、「アクティブラーニングとは?」というところを、一人ひとりの先生がやっぱり自身に問いかけて欲しいなって思うし、最近はアクティブラーニングという言葉も使われなくなってきたみたいで、「主体的、対話的で深い学び」というふうになってきていて、「アクティブラーニングとは?」がより具体的になって浸透していこうとしているという可能性を、私は希望に感じているので、その「とは?」のところで、小さな一歩として、その先生ができることを工夫してやっていくしかないし、誰でもそれはやろうと思ったらできると思うし、なんかそんなことを考えながら、まとまっているかどうかわからないけれど、お話してみました。

講演録『世界の教育』Part3

せっちゃん : 日本人の癖なのか、「みんな一緒に」とか「迷惑かけちゃいけない」とか、まぁ美徳でもある、ちょっと下がる、そういうところも関係してきているとは思うんですけど、皆さん言ってたように自信を持ってやっていくことが大事だなーって思うんです。

ちょっと欠けてるところを見て「あー自分はダメなんだ」って思いがちなんですよね。中国ではそのちょっとのできるところを「こんなにできるんだ」って思うところがあると思うので、ぜひ、今のそれぞれの皆さんのやっていること、置かれている立場に自信を持ってね、「自分はこれでいいんだ」って、まず思ってもらえたらいいのかなと思いました。

では、そろそろまとめの時間となってしまいましたので、それぞれの皆さんに今日の時間の感想でもいいですし、何か伝えたいことがあれば、チャーリーから一言ずつお願いします。

 

私たちから繋いでいく

チャーリー : 最後に、いつも皆さんにお伝えすること。ちょこちょこいろんなところでお話しさせていただいていて、いつも最後にお伝えしているのは、ダライ・ラマの言葉です。

人は皆、母親から生まれてきますよね。で、全員母親から生まれてきて、人から生まれる意味、いちばん大切なことというのは、母親から愛されること。でも100パーセント愛される人ばかりではないじゃないですか。でも、その欠けた部分を人は学びで埋めていく、という言葉があったんですよね。

本当にその通りで、もしかしたら皆さんも欠けた部分を学びに来てらっしゃるのかなと思いますし、私も学びは永遠にし続けると思うんですね。ですので、皆さんもぜひ一緒に学びながら、子どもたちの未来を一緒に育めたらいいなと思っています。

ありがとうございました。

きょうちゃん : 私は「中国で『ままサプリ』を中国人にやりませんか」と言われるんですけど、中国人のママが悩んでいることと、日本人のママが悩んでいることはまったく違っていて、この私が言っている「自己対話してください」というのは、中国人はもうできているわけですよ。「は? なに言ってるんですか?」となるんですね。

彼女たちはもっとこう、「どんな教育が自分の子どもに合っているのか」とか、そういうことばかり聞きたいので、私はやりませんって言ってるんです。

でも、私はすごく『魔法の質問』に可能性を感じていて、日本だからこそ、今私たちがこういうふうになっちゃったからこそ、(『魔法の質問』は)必要なことだと思っているんです。欠けているからこそ、皆さん学んでらっしゃるし、集まってらっしゃるし、ニーズがあるわけであって、すごく皆さんの力に期待したい。

キッズインストラクターもそうですし、とても意味のあることを今、日本でやっていて、これ、私たちが学んだとしたら、本当に世界の中で私は優秀だと思うので、すごいことになるんじゃないかなと思うんです。

ただ欠けているのが、自信がなかったり、「みんな一緒」という想いだったり、欠けてる部分に注目しちゃうところだったりするだけなんですよね。すごくこれ日本の特徴だし、皆さんに広げていっていただきたいなと思って、最後の言葉にさせていただきたいと思います。

かおりん : 最後にですね、グリーンスクールの先生に聞いてきたことと、私の想いとが一致していたことがあったので、お伝えしたいなと思うんですけど。

「先生の役割は何ですか?」って質問したんです。そしたら、先生は自分に対してアドバンスという単語を使っていました。「ちょっと子どもたちより長生きしている分、知っていることがあるんだよ」という感覚でのアドバンスだったと思うんですけど、「自分も人間として学んでいる途中であるから、そのアドバンスをシェアする役割だと思っている」と言ってました。

私はそんなに講師としての学びをしていないところから、「しつもん」を使って講演、講座をさせていただいてきたんですけど、それも本当に受講してくれる子どもたちからすごく学ばされるんですね。

そんな関係性を、目の前の人から学んでまたシェアしていく循環を、大切にしていきたいなって思っています。ありがとうございました。

せっちゃん :世界の教育というテーマでお話をさせていただきました。もっともっと、聞きたいことがあったという思いもあったかと思いますけど、ひとつでも何か持ち帰っていただいて、お子さんや家庭の中でいかしてもらえたらなって思います。私たちはとても楽しかったですよね?

スピーカー : はい、楽しかったです。

せっちゃん : どうもありがとうございました。

講演録『世界の教育』Part3

撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介

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