家族のライフスタイルが変化したときは、「どうしたら、できるだろう?」。やりたいことを軸にできる起業は、両立に向くカタチの一つ

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講演録『母親で女性で経営者の秘訣』Part2

 

「家族のライフスタイルが変わるときは、女性が自分の仕事のやり方を考えなくてはならないと思うんです・・・」。会場から出た投げかけに、スピーカーが出した答えとは?

2017年10月1日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション6C


▼登壇者情報

スピーカー/
岸本 亜泉
書家

宮脇 恵理
システム会社経営者

大嶋 博子
株式会社リードポテンシャル 代表取締役

質問家/
熊倉 達之
一般社団法人リラクセンスボディセラピー協会



家族のライフスタイルの変化と自分の働き方

熊倉:さらにちょっと聞いてみたいと思うんですけど(会場を見て)、いいですか? お聞きして。今日、この場に来た理由を教えてください。

参加者:個人的なことになるかもしれないんですけども、家族のライフスタイルのチェンジってあると思うんですよね。たとえば、ご主人がサラリーマンかどうか存じ上げないんですが、転勤とか…。あと子どもの受験とか、先ほども出てきましたが介護とか、何か他の要因で。

そういう時ってどうしても、これも“女性が”ということではないんですけど、やっぱり女性が自分の仕事のやり方を考えなくてはいけないタイミングって出てくるのかな、と思うんですよね。そういうときに、どのように対応してらっしゃるのかな?というのをお聞ききしたいなと思いました。

熊倉:ありがとうございます。(大嶋と目が合い)、お願いします。

大嶋:今おっしゃるように、やっぱりなんだかんだ言ってもね、家庭の中で、男性が主になっているおうちが未だに圧倒的に多いと思うんですね。私も、実は5年前に夫が急に海外転勤になって、家族もろとも引っ越しました。やっぱり「家族はできる限り一緒にいたい」というのがまず根底にあったので。

「バンコクに転勤だよ」って言われた時に、口が思わず「いいね」って言っちゃったんですね(笑)。『魔法の質問』の恐ろしい癖で、「あれ? 言っちゃったよ」って思って。

そこから考えたんですよ。まさに「どのようにすれば行けるだろう?」(笑)。とりあえず、行ってみたんですよ。でも答えはシンプルで、「私は日本で会社をやっている。(日本に)帰ればいいじゃん」、それだけです。

だから、月に2往復くらい飛んで、年間200何十日、ずっと日本に戻って仕事してたんですけど、それをやった時にいちばん思ったのは、「起業していてよかったな」と。

これが組織(の一員)だったら、そんなこと誰も認めてくれないし、そもそも「飛行機代はどこから出るんですか?」という話もあるし。でも、自分が経営者であれば、仕事のスケジュールも、そういった経費の使い方も、すべてが自分の判断においてできてしまう。

特に、私のところはまだ1人会社なので、他に社員とか役員とかいっぱいいたら、まただいぶバランスが違うんでしょうけど、幸い身軽だったので、私は4年間、まさに行ったり来たりしながらず~っと会社を経営し続けたんですね。

海外にいると特に、すっごく頑張ってお仕事して輝いている女性が、組織であるがゆえに辞めざるをえなくて(夫の赴任にともなって海外に)来るというパターンをいっぱい見たんですよ。だから、そういった変化があるような人がパートナーにいる場合こそ、実は起業というのは最も合理的な働き方でもあるのかなという気はします。

宮脇:そうですね。私もライフスタイルを変えなくてはいけないようなタイミングのときは、「どうやったらできるだろう?」をやっぱり考えますね。

わが家は主人も私も割と出張が多い。母は旅行に行ったりしたいわけですよ、ふだんお世話してくれているので。なので、家庭内のスケジュールは、居間に、すごくでっかいカレンダーを置いて、そこにみんながスケジュールを書き込むようにしているんですね。それを見ながら自分の都合もつけていくというのがあるのと、今、ひろちゃん(大嶋)の話を聞いて思ったんだけど、うちの会社の中でも1人、その子は男の子なんだけど、奥さんの転勤に合わせて「帰りたい」と。

大嶋:へぇ~~。

宮脇:その時に私も主人も、その人はすごく重要な人材だと思っていたので「どうすればいいんだろう? じゃあ、そこに拠点を出そう」みたいな。

大嶋:素晴らしい!

宮脇:ほんとになんか、たぶん、こう最初からできないという思い込みじゃなくって、できるための方法を探していけば、必ず解決策はあって。

大嶋:だよね!

宮脇:そうそう。そこに周りを巻き込んじゃえ!みたいな感じですね。

大嶋:で、もしね、それでできなかったら、またその時考えればいいだけの話であって。

宮脇:そうそうそうそう。

大嶋:やる前からごちゃごちゃこねてもわからないんだから、もったいないよね。

岸本:はい(笑)。もうほんとに一緒だと思います。私もライフスタイルが変わったら、それに合わせてビジネススタイルも変えていきます。

柔軟にいつも変えていて、自分にしかできないのであれば、それができる人をつくって任せるとか、「この期間は私できないから、ここお願い」とか、もしくは「これ自体を手放して新しくつくろう」というふうにして、いつもこう、コロコロコロコロ生活に合わせて、暮らしに合わせて、ビジネスをつくっていってますね。

逆に、そういうビジネスしかつくらない。もし、ずっとやらなきゃいけないものだったら、私1人ではやらなくてチームでやるとかにして、自分がいつでも抜けられたり、戻ったりできるようなスタンスで、仕事をつくるときもそこを意識してやるという感じですね。

参加者:ありがとうございました。

熊倉:(質問者に)いかがですか?

参加者: やっぱり自分の中の思い込みというか、ほんとにその時になってみないとわからないことって、いっぱいあると思うんですよね。

たとえば、誰かにお願いしたら引き受けてくれるとか、さっきの話じゃないですけど、拠点をつくるとかもそうですけど、柔軟に対応するというのがいちばん大切なのかなというのを改めて……。肝に命じてじゃないですけど、教えていただいてよかったなって思います。ありがとうございました。

熊倉:今話している中で、たまたまちょっと、くれちゃん(会場の参加者)と目が合っちゃったんですけど(笑)。今、女性に聞いているじゃないですか? 男の立場からお三方を見てきて、何か聞いてみたいことはありますか?

しつもんカンファレンス2017

起業したいんですけど、何からしたらいいですか?

くれちゃん:かっこいいな~って思って。

すみません。僕、起業したいんですけど、どうしたらいいですか?(笑)。起業してみたいなって思って。何したらいいかな? 最初に何したらいいですかね?

大嶋:どういうことをしたらいいか?

熊倉:そう聞かれて、どう答えますか?

大嶋:う~ん、何をしたらいいか?

熊倉:さっき楽屋でも、そんな話がちょっと出てましたけど。

岸本:出てたっけ?(笑)。

熊倉:さっき、やりたいことがあって起業する…。

大嶋:あぁ、いちばん最初の話。

基本的にまず、自分自身が「絶対にやりたい」と思っているかどうかというのが、いちばん大事かなって思うんですね。

たとえば、さっきも両立の話もあったんですけど、確かに超忙しいのは事実です。たとえば出張とかすると、子どものご飯とか作る時間があまりにもなさすぎて、「なんで私は夜中の3時に必死になって夕ご飯を作ってなきゃいけないのだ」と思うことが、なかにはあります。

その超忙しい状況が、会社員をしていて人が決めたスケジュールだったら、最高に腹立つと思うんですよ。でも、とどのつまり、自分が決めてとってきた仕事だから、文句言えないし、しかもどんなに忙しくても、疲れたなと思う瞬間はあるんですけど、嫌だなって思ったことはないです。だって、自分が好きでやってるから。

だから、まずは「絶対にこれをやりたいんだ」という想いを自分の中で確認して、それ以外のことは、変な話ですけど、できないんだったらお金払うなりして人にやってもらえばいいし。もしかして、それでもできないんだったら、事業形態が変わらないといけない時期に来ているのかもしれないし。

「目的は何?」というのと、そこに自分の好きというものがあるかどうか。ここさえブレなければ、どうにかなるんじゃないかなって私は思います。

宮脇:私はですね、もうすることを決めていて起業したい子もそうだし、スタッフもそうなんだけど、未来質問を必ずするんです。「3年後にどうなっていたいの?」とか。5年後10年後というところを、「大風呂敷を広げて考えてね」というのは、必ずするようにしているんですね。

なりたい自分がほんとに自分の中で確実に想像できたときは、起業の道って、「じゃあ、そうなるためには何をするの?」というところをどんどん深掘りしていけるので、そこから先の答え探しはみなさん自分でされるのかなぁと思います。

岸本:私は「起業したいんですけど……」って女性に質問された時に、「何のために起業したいのか」というのはもちろんと、「大切なものは何か」というのを必ず聞くようにしていて、自分が大切なものをしっかり大切にしながら、女性の場合は特にですけど、起業しないといけない。

でも、そういう話をしていったら、結局、「起業がただしたかっただけ」とか、「起業しなくてもお勤めでもいいんじゃない?」という時もあるし。

だから、「何のために?」「こういう暮らしをつくるために」「もうちょっと自分でこういう時間をつくって、子ども見ながら働けたらいいなぁ~」とか、「なるほどね、じゃあ自分で柔軟にできる起業のスタイルがいいかもね」って。

しつもんカンファレンス2017

岸本:起業しているときに、確かに女性ってすごく忙しいなって感じる時期もあると思うんです。スタートアップの時期って、どうしても大事なものをこう、目を背けたり、ちょっと見失ってしまったりというのがあるので、必ず「大切なものは何か?」というのをはっきり出しておいて、「それを常に見ながら進んでいくことを大切にしていくといいね」って。

好きとかどうとか言う前に、私はそこを「優先順位を出しておこう。優先順位は変わっていいから、まず今の大切なものを書き出しておこうね」というのをいつもしています。

ま、それは自分がそれで失敗したから。

仕事、仕事、仕事ってなりすぎて、すごく家族をないがしろにして、すごい失敗をしたから。そういう想いって別にしなくても済むなら…というので、先に話すようにしていますね。

熊倉:(くれちゃんの方に向かって)らしいですね(笑)。
かっこいいですね。ありがとうございます。

 

いちばん大変なときは、どうしてた?

熊倉:さっきも楽屋の方でしてきた質問があって、これまでずっと経営を続けてきて、大変だったことってたくさんあったんじゃないかなと思うんですよね。うちなんか、ほんとに大変な人(妻)を間近でずっと見てきているので、よりそう思うんですけど。

ほんとにたくさんありすぎて、何をしゃべっていいかわからないかもしれないんですけど、「ほんとにこれが大変だった」と思ったことってどういうことがありますか? もしくは、時期とかでも。

宮脇:私からいいですか?

私ね、やっぱりスタートアップの時がいちばん…。出産を機に自分の家業(を継ぐ)というか、最初に起業したので、子育てのいちばん忙しい時期とスタートアップの時期が同じで、すごく忙しかったんですよね。

で、今、あえて質問されたから思い出したんですけど、会社にですね、ベビーベッドを置いてたり(笑)、歩行器あるじゃないですか? あれに紐を付けて、遠くに行かないようにしてやっていて。

スタッフの人にね、もうほんとに助けてもらったんです。(子どもが)泣いていて、私が接客をしていたら、もうみんなが乳母みたいになってくれて。そういう環境でね、子育てをしてきたんですよ。

だから、私が今できることとしたら、今度はね、そういう環境を自分の周りの人たちにつくってあげたいと思っていて。だからね、「子どもを産んだら会社に連れておいでよ」と言うんだけど、みんな連れてこないんだけど(笑)。

その時期が大変だったかな。

大嶋:なるほどね。私、今思い出した、聞いていて。そういうふうに、師匠だった社長に「連れてらっしゃいよ」って言われて、ほんとに私、連れて行っちゃたんですよ。

こういう打ち合わせテーブルみたいなところで打ち合わせをして、こっちを見ている人とかがいるなか、息子はこっち(私のそば)で座ってバナナとか食べてたという。そんな生活が当時あったり、私は研修しに行っちゃうから、子どもを事務所に置いていくと、まだ子どもも産んでいない独身の20代の子がうちの息子のオムツを替えてたり。

そういった意味では、小ちゃい研修会社の事務所に当時は所属していた感じだったんですけど、そういう時代に「なんでもありだよ」という、受け入れてくれる環境があったことが、ほんとうに今思い出すとありがたかったですね。

(宮脇の方を見て)連れてっちゃうと、びっくりするかな?

宮脇:そうね、でもやっぱりそういう環境がより増えれば、女性でも仕事と…、両立って世の中で言われているものがどんなものかわからないけども、そういうふうになっていくことが必要なんじゃないかと思いますね。

(岸本の方を見て)どう?

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岸本:あの~、私は……、今ね、思い出したのが、「私ってどんなふうに生きていきたいんだろう? 仕事していきたいんだろう? 本当は?」というのを自問自答して突き詰めた時に、子どもたちとこうわちゃわちゃ楽しみながら、ケラケラ笑いながら、ちょこっとパッと仕事して、仕事してるのをケラケラ笑いながらキャーキャー言ってたら、「あれ?これ仕事になってるよー!」みたいなのがあったらいいなって気づいた時に、「あ!大変。これやりたいんだ」って思って。それを許すことが大変だった、自分に。

だって、子どもたちと楽しみながら「へっへっへ」って仕事するなんてダメでしょ?みたいな。仕事は仕事。プライベートはプライベートって切り分けてた。それを、プライベートと仕事が縦と横の糸みたいなね、こう織り合わさっているような仕事のスタイル、そういうことを自分に許すことがいちばん大変だった。なんかちょっと難しい?(笑)。

宮脇:いやいやいや。そうだと思う、すごく。

だって、「仕事が大事か、家庭が大事か、子どもが大事か」とか聞かれても、全部大事だから(笑)。そう、その何かを犠牲にしたくはないから。

大嶋:そうなんだよね。せっかく……、男性もそうかもしれないけど、女性に生まれて母もできて、妻もできて、自分のフルネームで人前に出ていけるという仕事のステージもあってって。何が欲しいかは人によって違うけど、「欲しいんだったら、全部手に入れてみればいいじゃん」って、単純に思っちゃったりするんですね。

それでどっか歪みが出てきたら、そのときに考えよう、みたいな。

岸本:うん。で、その手に入れていくときに1人で手に入れようとせず、「全員、私の夢を助けてくれ」というくらい、みんなの力を借りて、自分の夢、やりたいスタイルも叶えるし、自分も誰かのピースになりにいって、その人の夢を一緒に叶えて、ライフスタイルを一緒にこう手伝っていくという。

なんか、「女性で、お母さんで、1人でやらなきゃ」という人がやっぱり多いと思うんだけど、もう「みんなで、全員で、それ叶えちゃえばいいじゃん」って思いますね。

宮脇:女性って、女性の特性としてはしがらみがないから、いろんな仲間と繋がっていくのが強みだと思う。

大嶋:強みだよね。逆に言うと、誰かと一緒に喜び合える瞬間というのが、1人で頑張ってる時よりよっぽど嬉しかったりして。

だからこの共感性というのは、女性特有の強みだってよく言うけど、やっぱり仕事も別のものじゃなくて、プライベートもぜ~んぶ繋がった上でというカタチで自然にやってるのが、いちばん私たちらしいのかなみたいな。

宮脇:そうですね。

熊倉:なんかつい、分けて考えがちですけど、そうじゃないんですね。

大嶋、宮脇、 岸本:  (笑)。

岸本:だって仕事は好きだから、子どもたちと遊んでいても仕事のこと考えちゃう。「これカタチにしたらいいじゃん!」「もっとこういうサービスあれば…」って思うし、仕事している時も「あ~、(子どもたち)何してるかな?」とか考えちゃうし。そのありのままを生きてやるという。

切り離してって、切り離せないんですよね~。

熊倉:そりゃかなわないねぇ~(笑)。そうか、そうか。

しつもんカンファレンス2017

(パート3 へ続く)

撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介

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