お母さんで経営者。両立のカタチは人それぞれ違うけれど、秘訣は「一人で完結しようとしない」こと

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講演録『母親で女性で経営者の秘訣』Part1

 

経営者でありながら現役のお母さん。複数の役割を両立させる秘訣として3人のスピーカーが語り始めたのは、“できないことを手放す勇気”。

2017年10月1日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション6C


▼登壇者情報

スピーカー
岸本 亜泉
書家

宮脇 恵理
システム会社経営者

大嶋 博子
株式会社リードポテンシャル 代表取締役

質問家/
熊倉 達之
一般社団法人リラクセンスボディセラピー協会


熊倉 達之(以下、熊倉):みなさん、3つある中でまずはこちら(のテーマ)を選んでいただきありがとうございます。本日、質問家を務めさせていただきます、熊倉達之と申します。

よろしくお願いします。

しつもんカンファレンス2017

熊倉 達之 ニックネーム・ゆるゆる
http://relaxsense.com/

一般社団法人リラクセンスボディセラピー協会を妻と共に主宰し、「からだに質問して、からだが無意識に望んでいる答えを引き出す方法」をお伝えしています。「自分も相手も共にゆるんでしまうヒケツ」を学んでいただく中で、こんな不思議な体験をされる方も→https://youtu.be/DaYdwFsP8T8


熊倉:
ということで始まりましたが、だんだんヒートアップしてくるのかなと思うのですけど、『母親で、女性で、経営者の秘訣』ということで、いろんなものを引き出していきたいなと思って打ち合わせに臨んだんですけど、僕が何もしなくてもみんなどんどんしゃべってくれたので、僕の今日の役割はなるべく余計なことをしないことだと思っています。

この役割をいただいたときに、「なぜ、ぼくがこの役割になったのかな?」って考えていたり、感じたりしたんですけど、実は私に妻がおりまして。彼女はちょうど(3人の方と)同じ役割なんですね。はい。母親で、女性で、そして経営者。僕は経営してないので。

ま、そんなところをいちばん間近で感じさせてもらっているのも、一つの要因かなと思いながら、そんな目線で質問できたらと思います。

お三方を知っている方もいるかと思うのですが、初めてお会いする方もいるかと思うので、まずは、みなさんがそれぞれふだんどんなことをされている方なのかを簡単に。もしかすると、それだけで終わってしまう可能性があるので、簡単に教えていただけると嬉しいなと思います。

じゃ、ひろちゃん(大嶋)からお願いします。

大嶋博子さん(以下、大嶋):みなさん、こんにちは。大嶋博子と申します。

私は研修会社を営んでおりまして、ほぼ、大手の企業さんを中心とした社員さんの教育に携わっています。簡単に言うと。女性を育てる本を出版しています。

やはり、現場で働く女性を笑顔にしたい。やっぱりつまらなそうに働くのは人生もったいないなと思うので、そういったことを全力で支援するという会社をやっております。

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大嶋 博子 ニックネーム・ひろちゃん
https://www.facebook.com/hiroko.genkiwakuwaku/

株式会社リードポテンシャル 代表取締役
会社と社員のやる気と元気を引き出す研修を行っています。企業研修を手掛けて20年。これまで8万人以上の人とご一緒した経験からどんな人でも、いつからでも、人は変わる可能性を秘めていることを実感。20代のころに、自分自身が受けたたった一回の研修で、その講師の在り方と影響力にほれ込み、30歳の時に弟子入り。モチベーションアップでは日本の第一人者と言われた師匠の下で10年を過ごす。その師匠が10年目に亡くなり、そのマインドを語り継いでいくことを決意し、起業。
自分自身が旅行業界初の女性営業職というパイオニアであった経験を活かし、女性の育成に力を注ぐ。2013年に「女性部下のやる気と本気を引き出す上司のルール」を出版。
今年は女性が自分らしく活躍するためのマインドと仕事術の本を出版予定。


大嶋:
一応、母の部分も言いますと、今から20数年前に、出会って1カ月で口説き落とした夫がおりまして、出会って1カ月目で「結婚してください」と言わせた大事な夫がおります。そして、その間に高校3年生になった息子が1人の3人家族です。どうぞよろしくお願いいたします。

岸本亜泉さん(以下、岸本):ひろちゃんの声が、全然さっきの打ち合わせと違うんだけど(笑)。

大嶋:バレちゃった?普通にいきます(笑)。

会場:爆笑

大嶋:(会場に向かって)笑いすぎだよ。

宮脇恵理さん(以下、宮脇):ひろちゃん(大嶋)が素晴らしい自己紹介をするから、緊張するんですけど。大分から来ました、宮脇恵理と申します。

私は16年くらいシステム会社を経営してきていて、4年くらい前から自分のやりたいことを探す中で、働く女性の応援がしたいなということで、女性起業家支援の仕事を自ら起業して、今、毎日楽しく過ごしています。

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宮脇 恵理
http://www.igc44.net/

大分県大分市出身。システム会社を経営する中で、女性の経営者や起業家のコミュニティの必要性を感じ、2015年に県内の女性起業家が集まる団体運営を事業化しました。これは、魔法の質問認定講師になる際に自分への問いかけをする中でやりたいこととして見出すことができて実現したものです。直感力を大切にして、自分がやりたいと思う事を一歩一歩積み重ねて形にしたいと思っています。

宮脇:母という面では、大学生になる息子と中学3年生の受験生を抱えておりまして。毎日ですね、お仕事と家庭と、笑ったり怒ったりしながら過ごしているところです。今日はよろしくお願いします。(拍手)。

岸本:はい。初めまして。東京都から来ました、岸本亜泉と申します。今は、書家を育成しております。

一般社団法人心書協会という協会の中で、書けば書くほどどんどん自分らしくなれるっていう、魔法の筆文字のメソッドがあるんですけど、それを教える講師を育成していたり、あとは、女性の起業支援というオンラインスクールで、インターネットで動画で「起業ってこうやってするんだよ」「自分の強みってこうやって探すんだよ」というのをわかりやすく簡単に伝える仕事をしています。

母の部分でいうと、9歳の息子と1歳の娘と、あと35歳の陽気な夫がおります。よろしくお願いします。(拍手)。

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岸本 亜泉  ニックネーム・あいちゃん
http://aikishimoto.com/

書家。25歳で起業。1万人以上の方に作品提供、国内外でパフォーマンスやワークショップも行っている。現在は書を教える講師育成に力を注いでいる。その他コンサルティング、女性起業支援、モデル活動やメディア出演など幅広いフィールドで活躍中。プライベートでは陽気な夫と9歳の息子&1歳の娘をもつ主婦

 

起業のきっかけとタイミングはいつ?

熊倉:ということで、よろしくお願いします。

それぞれ起業をされて、経営をされていると思いますけど、そもそも起業された時期というか、タイミングはいつ頃だったのかなと思うんですけど、どうですか?(岸本を指して)

岸本:あ、私からですか? 私ね、10年前なんですけど、息子を身ごもったときに…、1回、一瞬だけ専業主婦したことがあって。

熊倉:一瞬?

岸本:一瞬だけ。一瞬専業主婦して、息子を妊娠したのがわかったときに「あ~暇だな」って思って、その時に起業しました。

専業主婦って初めてで、それまでずっとバリバリ働いていた人が仕事を何もしなくなって、ずっと暇だったんです、家で。それで、起業……、起業しようというより、「暇だからなんかしたい」っていうのが始まりですね。はい。

熊倉:じゃあ、なんで?っていうと、暇だったから。

岸本:そう!暇だったから。

熊倉:そうなんですね。ありがとうございます。宮脇さんは?

宮脇:えっと、私はですね、実は家業が建設会社で、最初、社会に出た時にOLを5年したんですけど、結婚して出産するというタイミングで、その会社は「出産をしたら辞めなければならない」という時代だったんですね。今みたいに続けていくということができなくて。

私、社会に出た時にすっごく「仕事って面白いな」って思って、仕事はずっと続けたいと思ってたんですよ。そしたら父が「そんなに仕事をしたいんだったら、家を手伝うか」という話になって。建設会社に入ったんだけども、OL時代に少しパソコンをやっていたので、システムのほうを任されて。そこから数年後に主人と独立分社化、というのが起業のスタートですね。

でも、ずっとそのシステム会社をやってきて、システム会社はシステム会社で楽しいんですよ。ただ、建設系のシステムをずっと開発と販売をしていて、周りがぜんぶ男性なんですね。お取引先もお客さまも男性で、女性としての何かというのを考えることはなかったんだけども、ふとですね、自分のやりたいことを考えるきっかけがあって、「10年後の夢は何ですか?」って聞かれたんだったっけな?

その時に「あ、私って家業を守るということをずっとやってきたけど、自分のことをちょっとこれから考えてみよう」って思った時に、「じゃあ、私がこれまで経験してきた女性の経営者としての生き方みたいなことが、何かお役に立てないかな」って思ったり。

世の中にたくさんセミナーがあっても、私が心ときめくものがなくて。「じゃあ自分で作っちゃえ」って始めたことがきっかけで、周りにも女性の起業家さんとか経営者の方がたくさん集まるようになって、4年前に女性の起業家支援の会社をつくったという経緯があります。

熊倉:なるほど、そうなんですね。ありがとうございます。

大嶋:え~っとですね、そもそも、独立起業するということ自体が1ミクロンも望んでなかったんですね。自分のタイプとして、どっちかというとトップに立つというよりは、2番手3番手でわちゃわちゃ騒いで突っついてる方が楽だし、得意だなというところがあって、別に責任を背負うなんてまったく思ってなかったんですね。

20代は旅行会社で営業という、いわゆる会社員をやっていました。で、研修会社に来たきっかけは、1人の講師の研修を受けて衝撃を受けた。その人に一生ついていきたくなっちゃったから弟子になった。

私にとって何をやるかよりも、「誰とやるか」がいちばん大事なんです。その人とともに仕事をして生きていきたい。ということで、10年間弟子をしてきました。そしたら、10年目にその方がくも膜下出血で突然亡くなっちゃったんですよ。要するに出会いから始まって、いきなり別れがやってきた。

私は、その人が教えてくれたことがほんとうに自分を変えてくれたし、大好きだったんですね。

その人は社長だったんですが、経営者が変わってしまう……。そしたら、組織が変わってしまった。そうすると、納得いかないんですよ、「こんなんじゃなかった」。でも、その時に文句を言ってる自分の顔がすっごく嫌になっちゃったんです。

私は人のやる気とか元気とかを育てるマインドのことを主に研修で教えているので、それを言っている自分が「ブーブー文句言って働くっておかしくないか?」って思った時に、じゃあ自分で、100%責任も取れるということで「独立しよう」って決めたのが、2012年ですね。なので、今年で独立をしてから6年目ということになります。

しつもんカンファレンス2017

熊倉:ありがとうございます。きっかけもみなさんそれぞれですよね。

テーマとしては「母親で女性で、そして経営者」ということで、さっきも楽屋で話したときに、今こうすごく静かなんですけど、こういう感じじゃなかったんですよ(笑)。あ、まずは3人とも常にマイク持っておきましょうか(笑)。

宮脇:いつでもしゃべれるようにね(笑)。

熊倉:さっき僕ね、まったく何もしなかったんですよ(笑)。さっき話をしていて、しゃべるネタはそれぞれ個人個人、たっくさんあるんですよ。ほんとに一部だけ聞いていても「へぇ~!」って思いながら、僕ずっと聞いてるだけ。あっという間に休憩タイムが終わってしまったんですけど、ただ、「今日来られているみなさんが、どんなものを求めて来ているんだろうというのがまったく分からないよね」という話をしてましたよね。

なので、他のところはそういうやり方をしてないかもしれないですけど、みなさんどんなことを求めて来られてるのかな?というのをちょっと聞いてみたいなと思うんですけど。

宮脇:おもしろい(笑)。

大嶋:そうだよね。

熊倉:たぶんこう、前に座っていただいている方は、何か求めてらっしゃるかなと思う…。

と言うと、だいたい前に座ってる方になるんですけど、ちょっとお聞きしていってもいいですか? もちろん、言える範囲で構いませんので。

(会場の目が合った参加者に)いいですか? いきなり巻き込んですみませんが(マイクを渡す)。

 

スピーカー3人のそれぞれの両立のカタチ

参加者:私自身はまだ子どもがいないんですね。経営者でもないんですけど、職場のマネージメントをしていまして。やっぱり店長とかそれなりの経験をした方が、今、結婚して、出産してまた戻って来てるんですけど、その、両立ってどうしてこられたのかとか、どういう協力を得てとか。逆にどういうサポートをこっちがしたらいいのか?というのがわからなくて。

ちょっとテーマとは違うかもしれないんですが、なんかそういうヒントが得られたらなと思ってここに来ました。

しつもんカンファレンス2017

熊倉:ありがとうございます。(拍手)。

そっか。両立。

宮脇:やっぱり両立って聞きたい…

大嶋:そうだよね。

宮脇:だろ~な~とは(笑)。ね、さっき話してたんですね。

岸本:両立って、じゃあどういう状態であれば、私は両立できているんだって、人それぞれだよね~って話していたんですけど。

私はちなみに、世の中で言うすごい完璧なお母さん、完璧な経営者みたいなものをいち早く手放したんですね。

それを全部、家事も育児も掃除もやんなきゃいけない、仕事も全部自分でやらなきゃいけないというのを手放して、「私はもうこれしかできない。もう料理は作りたくない。カレーしか作らない(笑)」って決めて、掃除は大好きだからしたい。

で、お仕事も自分の得意なこと、「アイディア出したり、そういうのはやりたい。お金のこととかは難しいから、そんなの無理。システムのこととか無理」ってなって、じゃあそういうのを全部できる人をちゃっちゃと探していったという感じで。

だから「え!ご飯作らないの?」って驚かれるんですけど、「え?なんで驚くの?」って。「なんで、お母さんが毎日料理を作らなきゃいけないの?」という、世の中のこうでなければならないというのを、もう、なんて言うかな、手放すというのをしたら、今両立できている。

そういう「こうでなければならない」を持っている人から見たら、私は「全然両立できてないじゃん」って言われるかもしれないですけど、私からしたら最高に両立している。

おかんも呼び寄せて、地元が京都なんですけど、京都から呼び寄せて、一緒に住んでもらってる。全部やってくれる。というのが、最高に両立できているスタイルなんですが、どうですか?(2人のスピーカーに)

宮脇:私ももうほんとに同じで、早い時に私にできること……。最初はですね、結婚した当初はすごい頑張ってたけど、「もうできない」って早くにわかってきたんで(笑)。

平日はもう家のことは……、朝は会社に行くまではちょっと頑張るんですけど、帰ってからは疲れるんで、基本しない(笑)。

私も実母と一緒に住んでいて、実母に「ごめんね、お願い!とっても助かるわ」という、いつもお礼の気持ちは精一杯伝えるんですけど、(家のことは)しないですね。

で、土曜と日曜とかは、やっぱり主人と子どもと過ごす時間を大事にはしているんだけど、それもけっこう設計してますかね。

だからその両立ということが、ほんとに「家事も仕事も」ということが前提になっているのであれば、私は両立はできてはないけど、私自身はすごく充実しているからいいのかな。

でも、掃除ができてないと自分の気持ちも滅入るので、わが家は”ルンバ”(笑)。もう主人にプレゼンをして「私ルンバがあるとね、すごく気持ちが楽になるの」ってお願いして、ルンバくんが頑張っています。

しつもんカンファレンス2017

熊倉:ありがとうございます。

大嶋:私は、実はもう母を亡くしていたり、子どもが生まれて小さかった頃は、母はまだ現役で仕事を持っていたりしたので、まったくもって頼りにできなかったんです。仕事を辞めた後とかも、「私の人生だ」って言われて(母に)まったく手伝う意思がなかった。

で、「だめだこりゃ」って思って、私は「遠くの身内よりも近くの他人だ」って思って。特に(子どもが)小さい時は、ありとあらゆる人に頼みまくりました。もうそれこそ、お金を払ってシルバー人材センターというところも散々頼んで、(子どもの)小学校時代とかは、たぶん月の夕食の半分はシルバー人材センターのおばあちゃんが作ったと思います。

それ以外にも友人知人とか、保育園時代とかは、そこでパートで働いてくださってる夜間の先生とかいるんですけど、そういう人に個人的に話を持ちかけて「先生、仕事が終わった後、うちの子を連れて帰って、デニーズに寄ってご飯食べさせて、家まで連れて帰ってください」と、お金を払って雇っていたんですね。

だからほんとに自分だけじゃできないし、夫も会社員で残業も月に150時間くらいやっている状態で死にかけていたんで、誰も頼りにならない。

なので、とにかく子どもとか絶対にやらなきゃいけないところだけは、人を使ってでもなんとかして、で、逆に私は2人(宮脇・岸本)と違って掃除は手放しました。「ホコリで人は死なない」(笑)。

ご飯食べないと死んじゃうけど、ホコリでは死なない。我が家はちょっとルンバちゃんを走らせると、10秒くらいで引っかかっちゃう。狭い家なんもので、ルンバは使えないと。なので、あの~、ホコリは基本的に見て見ぬ振りするというのが割とできちゃうんですね。

で、お風呂掃除とかは年に2回ダスキンを呼ぶ。その間も仕事はしているじゃないですか。だから年に2回ダスキン頼むとかは、もうお金で片をつけてやる状態。ということでやっぱり、ストレスが溜まらないようにはしています。

強いていうならば、たぶん後で話題になると思うけど、パートナーシップかなって。これ1人でやっていると、やっぱり腹立つじゃないですか。「なんで私ばっかり?」とか。だから当然、夫も、「あなたの血も入った子どもなんだから、あなたもやるんだよ」というのがあるんですが、夫を育成しました。はい。

ちょっと長い時間をかけて、だいぶ育成しましたので、今は朝私が目を覚ますと、夫は5時から起きてご飯をつくり、洗濯を干し、できあがった状態で「ご飯できたよ♡」って言って起こしてもらえるという。そこまでは、育成はいたしました。

なので、朝は夫。夜は私。わが家はできることをできる人がやるというスタイルの両立をやっております。はい。

熊倉:その話を聞いて、ちょっと胸が痛くなったんですけど(笑)。

ほんとにこう、みなさんそれぞれ、いい意味で諦める、手放す。でも、できるところはしっかりやるというところがありますよね。なんか1人で完結させようってしない。

宮脇:そうそう。頼み上手になりますよね。

岸本:確かに確かに。

 

相手が喜んで頼みごとをやってくれる秘訣

熊倉:でも、頼んでも相手がやってくれる保証ってないじゃないですか。逆に、頼んでやってもらえている状況というか、それは、なんでなんですか?

岸本:うーーん。

大嶋:なんか、期待すると腹立つじゃないですか。

これさっきの状況だと、社員の育成も一緒だと思うんですけど、期待して、やってもらえないと無性に腹が立つ、というのがあるので、基本、期待を手放す。

私だって、逆にすんごい忙しい時とかに「やってよ!」って強要されたりするのは嫌だし、やろうと思っていることを先に「やってないの?」とかって言われたら、最高に腹立つじゃないですか。だから、基本、期待はしない。

しつもんカンファレンス2017

熊倉:そこがベースということですか?

岸本:私は、いつ誰に、家族や仲間に何を頼んでもやってもらえるように、先に自分からできることを常々やります。

もう出会った瞬間から、「その人のためにできるかな? 私の強みで、あの人の弱みに提供できるものは何があるかな?」というのを、それがお客さまだろうが家族だろうが友達だろうが、常にそうやって関わるようにしていて。

別にそれにリターンを求める訳ではなくて、とにかく、出す出す出す出すってやっていたら「ちょっとお願い!」って言った時に、全員、「全然いいよ、むしろお返しできる機会を与えてくれてありがとう!」とか言われるので、「いや~助かります。ありがとう」とお願いします。

そして、出して盛り上がることに気づいたの。「自分の強みだから、どれだけ与えても出しても、私減らないんだ」って気づいた時に、「何を今まで出し惜しみしてたんだろう?」とか、「いちいち値段つけようとしてたんだろう?」とかって思って。

で、減らないし、出せばもっと愛が出てくるし……、一石何鳥だ?

大嶋:いいね。すごくいい、それ。

岸本:おすすめです。

宮脇:そうですね。そう、今お二人のお話を聞いていて思ったんだけど、やっぱり私も日頃から周りの人との関わりはすごく深く、関係性を作っていますね。あとやっぱり、家のことと仕事のことを両方しようとすると、お願いをしないといけないことってけっこう多くて、その時の環境というのは常に作っている。

さっきの(参加者の)お話にもあったんだけど、私も周りの女性にもよく言うんだけど、そういう環境を常に作っておく。

たとえば私は、起業家支援という仕事をしているんですね。その中で、一時託児をやっている仲間もいれば、お料理を提供してくれる仲間もいて、そういうところとはですね、常に連絡を取りながら、私にできることはほんとに先に先にやっていきながら、信頼関係は保てているかなと思います。

熊倉:ありがとうございます。

またちょっと(会場に)聞いて。今の話を聞いて、感じたことは何かありましたか?

参加者:なんかこう、「みんなやらないといけない」というのが大きいのかなとすごく感じたので、手放すことって大事だなと思いました。はい、ありがとうございます。

 

できないことを手放すことと、相手に感謝すること

岸本:手放す時ってけっこう勇気がいりません?

大嶋:いる!

岸本:できない自分を受け入れなきゃいけないから。それもけっこうあれかもしれない。できない私を認めてることになるから、手放すことってすごく勇気がいるけど、でも…

しつもんカンファレンス2017

宮脇:そうそう。手放したほうがいいし、会社でも家庭…、パートナーシップでも、やっぱりそういう自分を理解してもらうことというのは大事だよね。

大嶋:すごく思うのは、人に何かを頼む時、子育て中って特に、私はけっこう時間が当時からなかったので、お願いする一方なんですよ。普通、世の中はギブアンドテイクで動いているはずなのに、もうね、してもらう一方になる時期があるの。

でもそれって、すごく本当は心苦しいじゃないですか。だから、そういったバランスがとれた女性であればあるほど、そのプレッシャーに耐えかねて「悪いよな~」と会社辞めちゃったりとかするわけですね。

だから、ある意味、人に頼む勇気というのかな? だから究極を言っちゃえば、いちばんの敵は自分の心だと思うんですよ。

宮脇:そうかも。

大嶋:「それをやっちゃダメだ」とか「こんなことを言ったら嫌われる」とか、すごくそれがあると思うんですね。でもその時背中を押してくれたのが、今は亡き自分の師匠だったんです。

手伝ってくれる人が根本的に全然足りなかった時に、「じゃあ、ご主人のお母さまはどう?」って言ってくれたんです。私、東京に住んでいるんですけど、主人の母は大阪なわけですよ。距離が根本的に遠いと。

で、そもそも姑にお願いごとってなかなかハードル高いじゃないですか。そしたら「いや、でもそんなこと言ってないで、お願いしてごらんなさい」と。「姑の立場にしてみたら、大変そうなら何も言ってくれないよりも頼ってくれたほうがむしろ嬉しいかもしれないし、それに対して一生かけて恩返しすればいいのよ」って言われた時に、「ほぉ~」って思って。

で、実際、自分が新人研修とかで10日間いませんというときに、夫の母にお願いして「一生かけて恩返しさせていただきます」って宣言して、なので、これからちょっと大変なんですけど(笑)。介護とかあるかなって。でも、そうやって来てもらったり、夏休みとかも夫の姉の家とかいとこがいるようなところで、3週間くらいずっと(子どもを)預かってもらったりとか。

けっこう、ありとあらゆる人にお願いしてみたら、協力してもらえちゃったんですね。まだ返せずにいるんだけど。だから、そういった意味では、感謝の想いがあるから、たぶんこのあとに介護とかの話になっても、「あ、やろう」とか「返したいな」ってもしかしたら思えるかもしれないし、そういうものなのかなと、ちょっと思ってますね。

熊倉:なんか当たり前そうですけど、感謝って根底にありますよね?

岸本:あります、あります、感謝は。その人にお願いしないとできない自分がいるので、ほんとにありがたいなって思うし。

必ずお願いしたときは「ありがとう」というときに、私はいつもそのお願いしたことによって、「私がこんなことができて、私が関わった人たちがこんなふうになれたんです。全部あなたのおかげなんです」というのを必ず言葉で伝えたり、写真を見せたり、こんなふうに笑顔になったよというふうに、「引き受けてくれてありがとう!」って伝えるようにはしています。

伝えて、言葉で言ってたら、改めて、ほんとにありがたいんだなって。「こういう人に支えられて、私は仕事ができているし、子育ても楽しめているんだな」って、どんどんどんどん沁みてくるから。うん。

言い忘れたときとかも、(電話するジェスチャー)「あ、ごめん。さっき言い忘れたけど…」って電話したりとか、感謝を伝えるようにしてますね。

大嶋:いいね。やっぱり言わなきゃ伝わらないことっていっぱいあるしね。思っているだけじゃね。

宮脇:そうそう、私も昔は…、たぶん今も昔も感謝はしてきたんですよ。だけど、何年前かなぁ? 何年かくらい前に母から「私がすることが当たり前だと思ってるでしょ?」って怒られたことがあって。

そこからね、言葉に出して、(岸本の方を見て)もうほんとに同じ。言葉に出して「こんなことができて、私、こういうふうに嬉しかったよ」って、それを伝えるように変えました。

そしたら、今すごく協力的になっています。

大嶋:でも、他人に手伝ってもらったらすごく感謝すると思うんだけど、身内は危険ゾーンだよね(笑)。ついつい、わかっていると思っちゃうんだよね。「わかってるよね?」とか、特に夫に関しては、「あなたの子でもあるのよ」という想いがあったりするし。

でも考えてみると夫って、家族の中で唯一、他人じゃないですか。親子は絶対に切れないけど、夫は所詮他人というのがどこかにあると思うので、だから伝え続ける努力をしないと、いつの間にか温度差が開くということが起きるのかな、という気はしますね。

熊倉:(質問家の)役割を忘れて聞いていたんですけど、うちの場合は逆の立場で、「言葉ではいくらでも言える。行動で示せ」と言われるんですけど(笑)、逆に、言動を見ていれば、「ほんとうに感謝しているかどうかはわかる」と。

ちょっとね、逆の(夫側の)話ですけど。

 

しつもんカンファレンス2017

(パート2 へ続く)

撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介

 

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