人が育つときに大事なのは「動機づけ」。無意識にかけているブロックを外すと、育ちはじめる

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講演録『何があったら人は育つのか?』Part1

 

それぞれの立場で人を育てる3人のスピーカーが、「育つ」をキーワードに話し始めたことは、「どこに意識を向けるか?」ということ。あらためて「育つとは?」

2017年10月1日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション5C


▼登壇者情報

スピーカー/
山本 伸之
組織力&人間力向上型コンサルタント/講師。

小園 英昭
『コゾノ式良くなる人事組織研究所』主宰。和太鼓奏者。

鈴木 克彦
起業家育成の専門家

質問家/
多賀 健


多賀 健(以下、多賀): はい、ではお時間になりましたので、始めさせていただきたいと思います。

みなさん、おはようございます。

会場: おはようございます。

多賀 今回、『何があったら人は育つのか?!』のテーマで、人材育成とかコンサルタントとかで実績をあげてらっしゃるお三方に会話をしていただいて、その中でみなさんヒントを持って帰っていただけたら嬉しいなと思っています。

せっかくですので、こちらですね(ワークシートを見せながら)、セッション後のところに「この時間が終わった時にどうなっていたら最高ですか?」という質問があります。

お時間30秒くらいとろうと思うので、これが終わった時にどんなことがわかっていたら、どんな気持ちになっていたら、どんな状態になっていたら、今日この時間に参加してよかったなって帰れるか、自由に書いてみてください。

会場: (ワーク)

山本: (多賀に小さな声で)今日のテーマって何でしたっけ?

多賀: 『何があったら人は育つのか』です。

山本: わかりました。手放します。

多賀: はい、ありがとうございます。まだ書いていらっしゃる方もいるかと思いますが、始めさせていただきたいと思います。

まずはですね、お三方に、今どんなお仕事をされているか、できるだけ簡単に。5行ぐらいで(笑)自己紹介をいただけたらと思うんですけど、みなさんこれ(マイクを指して)、放棄というか、誰もマイクを握っていらっしゃらないんですが、まずマイクを握っていただいて(笑)。

会場: (笑いが起きる)

多賀: 喋りたくない感じが若干出ているんですけど(笑)。じゃ、こちらから順番にということで。

山本 伸之(以下、山本): 何を喋るんでしたっけ?

多賀: え~っと、お名前と、今何をされているかを簡単に。

山本: え~、山本伸之と申します。ニックネームはヒューさん。ヒューヒューのヒューさんと呼ばれています。

企業を対象にコンサルティングとか研修の仕事をしているんですけれども、キーワードは2つあって「組織力」と「人間力」向上型のコンサル講師という立場と「、教えないメソッド」ということで、教えないで研修とかコンサルティングとかをやるというのをやっております。

(多賀の方を見て)5行で、こんなもので(いいですか?)

しつもんカンファレンス2017

山本 伸之  ニックネーム・ヒューさん
http://www.humanpit.biz/

気づきを誘発する“教えないメソッド®”主宰。組織力&人間力向上型コンサルタント/講師。
組織風土改革、自立型プロジェクト等のコンサルタントとして、次世代リーダー養成、チームビルディング、ファシリテーション、質問力等の教えないアプローチによる研修講師として活動中。

多賀: ありがとうございます(拍手)。

会場: (拍手)

小園 英昭(以下、小園): さすがうまくまとめられたなぁ~と思いました。え~っと、小園…、こちらではぞのんと呼んでもらっています。

いつもは上海のほうに住んでいまして、そこで日本人の…、日系企業さんの日本人の管理職さんと中国人の従業員さんが一緒にいるのが現地法人なんで、そこで起きるいろんな問題を解決、生々しい問題を解決したりとか。

最近増えているのは、「ある程度、落ち着いてきました、よくなってきました。さぁこれからどうやって上に持っていけばいいですかね?」というご相談に対応する仕事をしています。

それと同時に、向こうで10年くらい和太鼓を教えていまして。小学1年生から50代超えたおじさんまで老若男女、多国籍な人たちが一緒に集まる、それを全員一緒の教え方をして教えるというですね、これも非常にチャレンジングだったんですけど、そういったこともやっております。

はい。ぞのんでございます。よろしくお願いいたします。

しつもんカンファレンス2017

小園 英昭
http://koozoo-hr.com/

『コゾノ式良くなる人事組織研究所』主宰。和太鼓奏者。
自らの数奇なサバイバル人生から、どんな「逆境」にあっても「今ココにある資源だけ」を駆使して「伝説級の成果」に導く独自のメソッドを開発。大阪出身。上海在住歴15年。日本と奥さんをこよなく愛する男。

多賀: よろしくお願いします(拍手)。

会場: (拍手)

鈴木 克彦(以下、鈴木): はい、えーっと、鈴木克彦と申しますけれども、僕がやっているのは「人の才能を伸ばす」というキーワードで、起業家の育成と組織の中でのリーダー育成です。「部下を伸ばせるリーダーを育てる」をテーマに仕事をしています。

しつもんカンファレンス2017

鈴木 克彦
http://h-resource.net/hp/

元プロバスケットボール選手 あなたの才能を見つけ出し売上げ平均4.9倍にする起業家育成の専門家
現在は、独自に生年月日の理論を開発した「統計心理学」をベースに、世界トップクラスから学んできたマーケティング、教育、ホスピタリティの理論を加えビジネスを次のステージに導く指導を行う。日本一結果が出る起業塾を東京・大阪で主宰している

鈴木:え~、それとニックネームですか?

会場: (笑)

鈴木: 最近、ミヒロさんくらいしか言わないんですけど、のっぽさんって言われます。

山本・小園: (笑)

小園: のっぽさん、通り名じゃないんですか?(笑)

鈴木: あ、ひとつだけいいですか? 僕、昨日ドアに指を挟みまして。

小園: あ~、痛いっすね。

鈴木:腫れてるんですよね、すごく。で、こうやって(太ももの上に)手を置いていても、中指が曲がってしまって(ファックユーの形)。

会場: (笑いが起きる)

鈴木: みなさん、変なふうに思わないでくださいね。

会場: (笑)

鈴木: 別にみなさんにそういう意味はないですから(笑)。一応それだけ、事前に伝えておこうかなって思って。

多賀: はい、ありがとうございます(笑)。

さっき楽屋トークをやってたんですけど、もう~凄い勢いで話されてて、僕が入る隙間がないくらいの会話だったんで、きっかけは投げさせていただくんですけど、お三方の会話がきっとヒントになるかなと思うので、そんな感じで自由に進めていただけたらと思います。

しつもんカンファレンス2017

多賀 健  ニックネーム・健ちゃん
https://ameblo.jp/ohanayaken/

『自然とつながる 自然につながる』 滋賀県野洲市出身。
約17年間の花屋生活の中で「花のチカラ」を感じ、フラワーセラピーや心理学を学ぶ。
前向きやポジティブがいいのではなく、「その人らしく在ること」を大切に 花や自然を感じることで、自然と自然に本来の自分に気づく「花かたらいの時間(とき)」も大人気。

 

あなたにとって育つとは?

多賀:まず、テーマが『何があったら人は育つのか?!』ということだったんですけど、これまた抽象的といえば抽象的で、まずは人が育つ…、「育つ」って何なの?というところで、人それぞれ定義が違うかなと思うので。

もしかしたら、成長とか、変化とかと同義語なのかもしれないし、違うのかもしれないし。「あなたにとって育つとは何ですか?」と。もう簡単に、ほんと定義だけでも、思いつくことをご自由に。

小園: 育つ…。

多賀: じゃあ、お一人ずつ。(小園をうながして)ぞのんさんから。

小園: おぉ!来ましたね(笑)。育つ、何でしょうね?

ま、ざっくりイメージしていたことを言葉にするならば、「できないことができるようになること」なのかな。

会場: う~ん(腑に落ちた感じ)。

小園: という気がしてますね。

多賀: (拍手)。はい、ありがとうございます。じゃ、次、こう順番に。

鈴木: 違う答えを言ったほうがいいんですよね。

多賀: さすがです!(笑)

小園: 先に言ったほうが得ですよ。(笑)

鈴木: 育つというのは、何かに向かって育っていくことだと思うので、その目的がないとわかりにくいのかなというのが、まず一つですね。

あともう一つ、僕が思うのは、育つ人には必ず動機があるということですね。やる理由がないと、育たないです。

だから、多くの人たちがモチベーションのことをやる気とか訳しますけど、僕が見ている限り、モチベーションってそもそも訳すと動機なんですよね。「動機づけ」ですから、やる理由がない人は成長が遅いですね。

会場: う~ん。

鈴木: やる理由がないのに成長を願っている人たちいっぱいいるんですけど、やる理由がない人は成長が遅いです。

多賀: ふ~ん、なるほどなるほど。

鈴木: 答えになっていますか?

多賀: はい、ありがとうございます(拍手)。ヒューさんはどんなふうに思いますか?

山本: え~、ネガティブに聞こえるかもしれないんですけど、このお題をもらった時に、僕の場合は特に何があれば人は育つかって…、「何もなくても育つじゃん」って思ったんですよね。

子どもが1年経てば、2年経てば勝手に育つのと一緒で、別に何もなくても育つよなって。

で、「何があったら」というのは、行きたいところがあって、現状があって、逆があって初めて言えることなんじゃないかなと思ったので、僕の答えは、「何がなくても人は育つ」だし、あなたにとって育つとは?というのは、育つって、育てるでもなく、自ら成長していくというよりは、「自然に育ちました」みたいな。

主語がない感じなので、なんか自然体。で、時間の経過とともに変化することが育つことなのかなという。

会場: う~ん(納得した感じ)

山本: 僕の答えはそんな感じです。

 

テーマを受け取った時に感じたことは?

多賀: ありがとうございます。

スピーカーに選ばれてテーマが与えられた時に、おそらくみなさん、そのテーマについて考えられたと思うんですけど。

今、「(テーマを)見た時にそう感じた」とヒューさんがおっしゃったんですけど、ちなみにのっぽさんやぞのんさんは、このテーマで話してくださいって言われた時に、最初に何を感じられました?

小園: 「何を求められているのかな?」というのは、正直……。ま、相変わらずミヒロ節、相変わらずの無茶振りをしてくるなって、ぶっちゃけ思ってまして。

鈴木: (笑)

山本: 同感です(笑)。

鈴木: ありがとうございます。ですよね(笑)。

会場: (笑)

小園: だからその~、答えというよりも、それがきっかけで、いろんな関連することが思い浮かんできて、だーっとこう、なんて言うんですかね、頭の中の失敗したこととか。いっぱい失敗したことあるんですけど、うまくいったこととかが繋がってきて。

で、答えはないんですけど、そういう頭の中が活性化してくる状態のままで、今日ここに来ました(笑)。それが、まぁ、ね、たぶん仕掛けられたかな(笑)。

多賀・山本・鈴木: (笑)

小園: やるな!ミヒロ!(笑)とかって思いながら(笑)。いつもなんですけど、すごく感謝してるんですけど、それで今日ここに来ました。

しつもんカンファレンス2017

多賀: のっぽさんはどんな感じですか?

鈴木: このテーマですか、このテーマそうですね、一言で言うとミヒロさんらしいというか、ゆるい感じなんですけど。

僕がやっぱり最初に知りたかったのは、「みんなが育ちたいのか、それとも育てたいのか、どっちなんだろう?」とすごく思いましたね。

全員: う~ん。

鈴木: ま、僕はどっちでもいいので。

山本: なんか主語がわからないなって。

鈴木: そうそうそう。そういうこと、そういうこと。

多賀: 自分が育ちたいのか、誰かを育てたいのか。

鈴木: そうです。どっちで話したらいいのかなというのは正直ありましたね。ま、出たとこ勝負でしてもいいやって。(笑)

山本: それも同じです(笑)。

鈴木: (笑)

多賀: では、あんまり周りを巻き込むのはあれですけど、せっかくですので(会場の方々に)聞いてみたいと思います。

自分の成長に対して興味があってこの会場に来たよという人、手を挙げてもらえますか?

鈴木: (会場の様子を見て)あ~、まずそこですよね。

多賀: たとえば、部下だとか家族だとか、自分の親しい人、近い人の成長に自分がどう関わるかというところに興味があって来られた方?

山本: なるほど。

鈴木: また微妙な数だな(笑)。

全体: (笑)

ミヒロ: 狙い通り(笑)。

鈴木: ミヒロさんの意図がわかった(笑)。

 

教えるのは、技術ではなくブロックを外すこと

多賀: ちょっと話が変わるかもしれないんですけど、さっき、のっぽさんのお話の中で、「人育つ上で動機づけはとても大事」っておっしゃってたんですけど、たとえばその他に、人が育つときに「これが大事じゃない?」という要素がもしあるとしたら、何だと思いますか? 動機づけオンリー?

鈴木: 他にですか?

多賀: ないならないで、全然いいんですけど。

鈴木: いっぱいあるでしょ(と言って、隣の小園の肩をたたく)。

会場: (笑)

小園: なんやろ?

鈴木: さっきいいこといっぱい言ってたじゃん(笑)。

小園: なんか言ってました?(笑)

多賀: さっきぞのんさんが言ってたことをのっぽさんから教えてあげてください。

鈴木: やっぱりこうブロックが多いって言ってたね。さっきね。

全体: あぁ~。

小園: あ~なるほどね。

鈴木: そっから言ってよ(小園をうながす)。

小園: ありがとうございます(笑)。いや~、あの~、ほんと動機というものがすごく重要だと思うんですけど、その動機を自分で覆い隠していることに自分自身が気づいてない、というのがすごく多いなと実は感じてまして。

これ、顕著に表れてるのが、和太鼓の道場なんですね。まぁ、いっぱい失敗してきたんですけど、それはまた後で話すとして(笑)。

今はすごくうまくいってるんです。先ほど言ったように小学校1年生から50を超えた60前のおじいちゃんまで。しかも多国籍。日本語がわからないメンバーもいるんですけど、その人たちが一緒に居て、一緒の場に来て、同じ練習をするんですよ。

同じ練習をしながら、年間50回くらいステージがあるんですね。

全体: へぇ~。

小園: どこかに呼んでもらって。

鈴木: 毎週だ。

小園: 1日に3〜4回とかもたまにあるので。で、ちゃんとお客さまが満足する演奏を、一定の品質以上で提供し続けないといけないというのがあって。

でも、ま、8割くらい、ほとんどが日本人なので、日本人って駐在員さんとか入れ替わっていくんですね、2、3年で。だから、覚えたら(日本に)帰っていくという状態があるんですよ。

そしたら、それを維持し続けるにはどうすればいいだろう?ということに非常に苦労しまして。で、いっぱい失敗してきたんですけど、ま、うまくいってるのは、一つ去年くらいから気づいたのが、教えるのをやめたんです。

教えるの、やめたんですよ。教えるのをやめて、ブロックしているものを外すことにフォーカスしたんですね。

しつもんカンファレンス2017

全体: ふ~ん。

小園: たとえば、ステージで演奏する時に、新規の会員さんを常に集めて来なきゃいけない。どうやったら集まるかといったら、演奏した時にお客さんで見てもらっている人たちが「なぜ私は客席側に座ってるんだろう?」と、「なんで私はステージにいないんだろう?」って、悔しいと思うような演奏しようぜって。

山本: あぁ~、なるほどね。

小園: それでやってると、お客さんが見て「感動しました!」って来てくれるんですよ。それで常に募集というか、新規の人が集まってくるという状態になるんですね。

で、そういう流れができてくると、そういう「ちょっと憧れ」というか「私もやりたい」とか、そういう想いを持って入ってくるのに、バチを持たしてやるともうガッチガチになってるんですよね。

「私、リズム感ないですから」とか、なんかこう怖い顔して打ってみたりとか、子どもがいるからかっこつけて打ってみたりとか、そういうことをしてる人たちがたくさんいるんですよ。

それに対して最初は技術的なこととかを言ってたんですけど、「あ、やっぱり私無理です」って辞めていく人たちがいたりなので、その方法はやめようと思って。

もうブロックを外そうって思って。あんたたち、楽しそうなところに参加したいから来たんでしょというのを思い出させようという指導をするようにしたんですね。それをやると、ま、私が弾けるんですけど、「うわぁ~!!」とか言って。

山本: (笑)

小園: 歌うたったりするんですけど、それやるといちばん最初にブロック外すのは子どもなんですよ。

山本: あぁ~、なるほどね。

小園: 子ども、わかりやすいんですよ。子どもはほんとわかりやすくって、面白かったらずっと居てくれるんですけど、だいたい面白くなくなったら、みんな違う遊びをし始めるんですよ(笑)。

でもそのまま放置してるんですけど、こっちが面白いことをやり始めると、子どもがまずブロックを外すんですね。「うわぁ~!!」って言い始める。そしたら、なんか大人にも伝染してきて、だんだんそのブロックが外れていくという状態になっていくんですね。

それですごいいい雰囲気になってきて。

で、「うわぁ~!」ってなっている時に、言葉がわからない中国人とか欧米人の人たちが、きょとんとしてるんですよ。その時に私がもう常に言ってることは一つだけで(笑)。

「Don‘t think.Just feel!」

全体: (笑)

小園: ブルース・リーが「考えるな!感じろ!」、楽しかったら感じろって言って、それしか言わない(笑)。

それしか言わないんですよ。でも、それですごい雰囲気がよくなってきて、定着率もよくなってきて、表現力もどんどん上がってきてて。だから、何も教えてないんですけど、それが外れてくると動機は思い出すと思うんですけど、そうやって勝手に自分で練習して、勝手に上手くなって、勝手に動画とか見始めたりとか、質問が出始めたりとか。

すごいいい循環ができるようになっていて。

「どう教えればいいんだろう?」って悩んでたんですけど、教えるのをやめることをやったら、一気に伸びたというのが、すごいいい経験というか、目から鱗やったなぁというのが実際あった感じですね。

鈴木: いい話ですね。

山本: 素晴らしい。

 

どこに意識を向けるか、そのきっかけと場をつくる

多賀: いいですね。まさに「教えない」って出たんで、ここ(山本をさして)、教えないメソッドのヒューさんに

今は、まずみんなを感動させられる演奏というゴールをボンって掲げて、そこに向かっていく。で、そこに向かっていった時に、動機づけでいらないものは外していくという話だったんですけど、たとえばヒューさんは、“教えない”の中でその動機づけを思い出させるために何かやってることとか、逆に“外す”というキーワードで何か思い出すことありますか?

しつもんカンファレンス2017

山本: えっと、ま、ぞのんさんと天職としてのエネルギーは違うものを持ってると思うんですよ。

会場: (笑)

山本: でも、今お話を聞いていて、やってることは一緒だなって思いました。

私は割と大きな企業さんにお邪魔することが多いんですけど、やっぱり人が育つというか、「自分で自分を変えよう」と思うようになってもらうためには、たぶん鈴木さんがおっしゃった「動機づけ」と、ぞのんさんがおっしゃった「制約条件を外す」みたいなことって、どっちかだと思うんですよね。

僕の言い方で言うと、「痛み」と「快楽」なんですけど、快楽の種を見つけてあげられるような場を作ったり、ワークをするか。それか、「痛みを外しましょう」じゃなくて、その痛みがあることで自分がどこにフォーカスして、その痛み、「自分をこう守りたい」とか「失敗したくない」とか「人に嫌われたくない」とか。というところに意識がいってることで、何が生み出されているか。

多賀: ふ~ん。

山本: その意識を向けてるところ、そこに意識を向けていると痛みを引き起こさないかもしれない、でも「避けよう、避けよう」としていても痛みはずっと意識してますよね。そうなるかもしれない痛みを。

そうすると、そこで同じ行動をしても行動の質が下がるじゃないですか。その積み重ねが、もしかしたら今かもしれませんよね。

会場: ふ~ん。

山本: というふうに、「違うところに意識を向けるとしたら、どこに意識を向けたいですか?」って。

だから、そこに意識を向け続けるとすると、To Doとして同じ行動をするかもしれないんだけど、「どんな変化がありそうですか?」と考えてもらうと、全員に響かなくても、グループワークしていると何人かが「こんな変化がありそうです」って(言ってくれて)、一人一人、答えが違うじゃないですか。そこで刺激が起こって、相互作用とか化学変化が生み出されて、勝手に変わっていく。

全体: ふ~ん。

山本: そんな感じです。

多賀: あえて一回痛みに目を向けるというか……

山本: 目を向けるというか、痛みは悪いことじゃなくて、痛みってやっぱり必要なことで、「痛みを避けたい」というのは防衛本能なので、それは大事な感覚だと思うんですけど、そこに意識を向けすぎていたとしたら、「何が起こっていますか?」とか。「そのままでいいんですか?」という…。

僕は研修をやっててもコンサルをやっててもそうなんですけど、「変わってほしい、行動を変えてほしい」とは絶対思ってなくて。

会場: ふ~ん。

山本: 変わらなくてもいい、と思ってるんですよ。でも、気づいたことで、同じ行動を無意識でするか、意識的にするかによって、見え方とか結果の生まれ方が変わってくると思う。

だからそういう形で、その場その場で出たことの中から考えてもらったり、ゲーム的なワークをしたりとか、そこから振り返る中で気づいたことの中から、僕は場を作ってるだけなんですけど、「こうなってほしい」とか「ここに気づいてほしい」とかってまったくなくて。

気づきも自由なんで。

多賀: きっかけになりそうな場をつくることで、伝えるという。

しつもんカンファレンス2017山本: だから僕は“教えない”なんですけど、教えないという価値を提供しているわけじゃないんです。「教えることをしません」って言ってるだけで。その価値は、結局、気づき方が自由なんで、だからその参加していただいた方の数だけその気づきがあって、要は「変わろう」と思う人もいれば、「変わらないでおこう」という人もいて。

でも今まで意識してなかったことが意識することによって、ま、自分のスピードで変わっていくというか。なんかそういう感じです。

多賀: ふ~ん。なるほど。

山本: 答えになってますか?

多賀: はい。ありがとうございます。

>>>パート2へ続く


撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介

 

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