講演録『シンプルでラグジュアリーに生きる』Part1
「このテーマこそぴったり」「いまの自分のテーマ」と感じたというスピーカー3人。まずは「シンプル」という言葉に感じることを語り始めると、言葉の意味以上に含まれるものがありました。
2017年10月1日開催
しつもんカンファレンスin OKINAWA セッション4A
▼登壇者情報
スピーカー/
又吉 千恵子
ヨガティーチャー、エッセンシャルオイルアドバイザー
田中 春美
インタビュアー
金城 男
陶冶処風庵オーナー
質問家/
靖子
ライフエッセンス・コンシェルジュ
靖子: 皆様おはようございます。朝早くからこちらのお部屋にお集まりいただきましてありがとうございます。
今ご紹介にありましたように『シンプルにラグジュアリーに生きる』というテーマで皆様と共有していきたいと思といるんですけれども、朝早いので、少し緩めるというか、皆様のエネルギーを統一していきたいと思います。
昨日からいらしている方は、「このカンファレンスが終わったときどうなっていたら最高ですか?」という質問があったと思うんですけれども、今日からいらした方は、「今日がどんな一日になっていたら最高ですか?」ということを、もう一度、自分の中で言葉にしていただいて、近くの方とシェアしていただいていいですか?
お願いします。お隣の方でも、初めましての方でも。
(シェアタイム)
ありがとうございます。少し念頭に置きながら、今日一日過ごしていただけたらいいなと思います。
靖子 ニックネーム・靖子ちゃん
https://yasuko.me/ライフエッセンス・コンシェルジュ
その人、本来の魅力を引き出し、その魅力が最大限に伝わる場、イベントをプロデュースをしています理想のLifestyleを目指していく生き方・在り方のエッセンスをお届けしていく活動も
靖子:昨日までモデレーターがいちばん端に座って3名のトークが多かったと思うんですけれども、先ほどバックヤードでどう居たら4人が心地良いのかという話になりまして、こういう形になってます。そこもまた違う角度で見ていただけたらなと思います。
『シンプルにラグジュアリーに生きる』は、「シンプル」「ラグジュアリー」の2つの単語が入り、それぞれ皆さん受け止め方はいろいろだと思うんですが、お三人の波乱万丈なストーリーからいいエッセンスを持って帰っていただけたらと思います。お三人が存分に話してくださると思いますので、楽しみにしてください。
まず簡単にお名前をご紹介させていただきたいんですが、私の左にいらっしゃるのが春美さんです。何が仕事か、どんな仕事かわかりますか? 結構自由に生きながら人と人をすごく繋いでいる方なので、そこのお話を掘り出していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
田中 春美 ニックネーム・はるみさん
https://www.artoflifeharumi.com/英国、シンガポール、これまでの引越の数は40回以上。好奇心の先に出会ったものは、時空を超える様々な人達の想い。その語る言葉の奥にあるゴールド(真価)を引き出していくと、自然と変容が起きる。これらの経験を生かし、インタビューを通して、その想いを広く分かち合といます。様々な生き方に出会うために、Life Shiftingを楽しみながら、今日も地球のどこかで移動中
靖子:男さんはご自身でちょっと…
金城 男(以下、金城): 男と言います。今日はお目にかかれてありがとうございます。沖縄で、沖縄の焼き物が好きで、沖縄の土と食材を使ったお店をしています。
今日はこの場に感謝しています。ありがとうございます。
金城 男 ニックネーム・だんちゃん
http://shitsurai.ti-da.net/e5852719.html沖縄が好きで。土でつくられる器に 土で育まれた地のモノを遣い日々を創り 愉しく遊ばせて貰とます。陶冶処風庵の金城男と申します。今回もマツダミヒロ様からのご縁で、皆様とご一緒させていただけることを心より感謝致しております。
靖子: じゃあ千恵子さんも簡単に。
又吉 千恵子(以下、又吉): 千恵子と申します。沖縄に住んでます。
ミヒロさんから「このシンプル&ラグジュアリーのテーマが千恵子さんにピッタリなんだけど話してくれないか」というお話があった時に、「うわーすごい、この人、人を見てる」と思いました。私にとって本当にピッタリなタイトルだと喜びましたので、今日は何が出てくるかわからないんですけど、よろしくお願いいたします。
又吉 千恵子 ニックネーム・ちえこさん
http://shangrila0822.ti-da.net/YogaとEssential oil をこよなく愛し人生を一瞬一瞬楽しむ事を唯一の目標としています。
靖子: ちょうど皆さんにお聞きしたいなと思っていた質問なんですね。ミヒロさんからシンプル&ラグジュアリーというテーマを投げかけられた時、どんなふうに感じましたか?
田中 春美(以下、田中): 投げられたというかファイルを開けてみたら知ったという感じなんですけど(笑)。「あっ、今の私のテーマなのかな」と思いました。
靖子: ピッタリかなと。
田中: ピッタリかどうかはわからないんですけど、テーマかなと思いました。
靖子: 自分の中でのテーマなのかなと。
田中: なんだろうなと、はい。
金城: 僕もお店を始めて16年になるんですけれども、気がついたらやりたいこととほぼほぼ変わらないんですよ。そこがたぶん、ミヒロさんがシンプルに見てくれたのかなぁと。
靖子: すんなりと。
金城: すんなりと、はい。
靖子: 千恵子さん、あらためて。
又吉: 私はやはりシンプルイズザベストだと思っているので、そういうふうに生きたいと日々思ってるんですけど、そうやって第三者の方から「あなたにピッタリなタイトルだから」と言われたのがすごく嬉しかったです。
あなたにとって、シンプルとは?
靖子: ありがとうございます。シンプルということのほうがラグジュアリーよりも捉えやすいかもしれないんですけれども、千恵子さんにとってシンプルとはどういう……
又吉: 私にとってラグジュアリーは「空間」なんですけれども、深呼吸のできる空間とか、深呼吸が「シンプル」かもしれない。それがすごく幸せ感を感じるので、深呼吸ができる場所、できる人、できる物、それを基準にしています。
靖子: シンプルということ。それはもう自分のライフスタイルの中で自然に取り入れられているものですか?
又吉: そうですね。ヨガをしているので、ヨガは呼吸さえできていればヨガができていると言われているので、日々呼吸にはすごく意識をしていて。やはり、人といても空間にいても、深呼吸ができにくい時もあるんですね。だから私の基準は、深呼吸がしやすい人と、場所と、という感じで。なので、すごくシンプルです、基準が。
靖子: 自分が心地良いと思われることがシンプルに繋がっているという。
又吉: そうですね。
靖子: 春美さんはどうですか、シンプル。
田中: シンプルというのは英語で調べた時に、イージートゥアンダースタンド、わかりやすさというのがあったんですけど、私が思うシンプルってわかりやすさではなくて。
抽象度を上げていくと、よりシンプルになるじゃないですか。その中にはいろんなものが含まれているから、1個に見えるんですよね。だから、その受け手の側がシンプルと思うだけで、実はその中にものすごくいろんなものが包含されている状態をシンプルと言うのだなと思います。
靖子: シンプルに見えるものの奥にはすごく深いものがある。そこは皆さんすごく頷いてらっしゃいますけど、共感できるところですね。
又吉: なので、わかりやすさを最近すごく求める傾向にあるのが、すごく危険だなと思っていて。その抽象度を上げるときに、そこに含まれているものが、それぞれの価値観だったり世界観だったり美意識だと思うんですね。そこの遊びがあるほうが私はすごく楽しいなと思います。
靖子: 何も無いことがシンプル、ではない。
田中: ないです。
又吉: そうそう。
靖子: 男さんは、器だったり食材だったり、そこに来る方たちとの時間の中で、シンプルさを追求していらっしゃるかもしれないんですけれども、お仕事から離れて自分の生活、ライフスタイルの中でシンプルってどういうふうに…、男性的な部分もあるかもしれないので少し。
金城: ちょっとワガママなんですけれども、仕事は目一杯遊びとして捉えていて、来てくれるお客様と楽しい時間を育んで。生まれも育ちも違うけど、出会ったらもうほんとにこの時間を楽しみましょう。
それが終わったら、海が好きなんで、とにかくすぐ海に行くんですよ。だから妻には毎回迷惑かけるんですけど、とにかく海で遊んで、仕事も目一杯楽しんで。
その日々があるというのは、ほんとにありがたいというか。幸せなことだなあと思うし。で、僕は焼き物もつくれないですし、食材もつくれないんですよ。それを最低限(自分の仕事として)とっても丁寧に扱って、皆さんに喜んでもらって。食材をつくる方というのは売って終わりだけど、本当は向こうが偉いんですよ、野菜育てるのもつくるのも。
彼らに、「昨日、東京からわざわざお客さんが来て、こう言ったよ」と言うと、すごい嬉しくなとくれる。で、「また翌日も、いい野菜つくろうね」と。自分だけじゃなくて、周りが笑顔になる場というのは、ラグジュアリーでもないけど何かそんな感じはします。
なぜ今のライフスタイルになったのか?
靖子: 十何年やってこられて、きっといろんな形で試されてきて、今がおありだと思うんですけれども、その形が変わっていく中で、よりシンプルになっている部分はありますか? 試行錯誤された部分もあるかもしれないんですけど。
金城: 昔は大勢のお客様を相手にしたこともあるんですけれども、「食べに来たよー」と言われても、僕その人の顔を覚えてないんですよ。ほんと失礼なことかもしれないけど。
食券切って食べる店もあれば、ファーストフードもある中で、「何でこんな仕事しているんだろう? 今日来てくれたあなたのために僕は何ができるか?」と考えたら、気がつけば、一客一亭。
たぶんそれを嫌がるお客さんもいっぱいいるけど、でも良いお客さんを守るためにはごめんなさいねと一人一人に言ったほうが手っ取り早い。それに気がついたらこういうスタイルになとて。
靖子: それが男さんにとってはすごくシンプルな形になっているということですか?
金城: そうですね。
靖子: それに提供する空間もラグジュアリーなものに繋がっているなという感覚はありますか?
金城: あります。決して高級店とわけではないんですけど、相手も僕のことを理解して予約して来てくれるんで、試しじゃなくて求めて来てくれるお客さんに対しては、こちらも提示したいものがすっと繋がる。
食べ歩きという言葉、僕らのおばあちゃんの世代はそういう言葉もないですし、そこは根っことして違和感があるんですよ。だからほんとにいいものは、自分で見つけて、体験して、広めてくれる人たちが、今僕の周りには来てくれるんで、そこはもう感謝しかないです。
靖子: そこに至るまでの、さっきも春美さんがおっしゃったシンプルの奥にある深さが、そのお料理だったり人との関係性だったり、十何年やってきた中で構築されてきたもので、シンプルに繋がっているという形ですよね、きっと。
千恵子さんは波乱万丈な、去年のVTRを観てもらえるとわかると思うんですけども、すごく波乱万丈でありつつ豊かに生きていらっしゃる方で、ちょっとお聞きしたら、沖縄で一人で小さな島に行かれて暮らしてきたことがあるというお話だったんですが、そういう暮らしに入られて、何か気づいたこととか、シンプルだったり、ラグジュアリーだなということとか。そうしたいと思ったきっかけだったり、そこでの変化を少しお話ください。
又吉: 「シンプルに生きたいな」と思ったきっかけはですね、子育てが終わと末の娘がニューヨークに旅立った後にですね、少し、英語ではエンプティーネスト症候群と言うんですか、空っぽの巣の症候群になって、今まで子育てのために生きてきて、子育てのために働いてきた自分が「何をしたいのか? どうありたいのか?」というのがわからなくなってしまって。
会社を兄と経営してたんですけれども、辞めて、「1年間だけ私に時間をくれ」ということで、「必ず戻ってくる」という約束の元に、伊平屋島という沖縄の北の何もない島に移ったんですね。
で、最初はほんとに間借りしてスーツケースだけを持って行ったんですけれども、何もしない自分に慣れていないので、最初はすごく戸惑いました。でも、島で島の方たちと触れ合ううちに、「本当にシンプルにラグジュアリーに生きているのはこの人たちだなあ」というふうに感じました。
那覇ではですね、一応都会なのでいろんな物とか食品とか家具とかたくさんあった中、「何にもない生活がこんなに居心地がいいものか」というのを感じました。そしてそれを感じてしまうと戻れないんです、その世界に。で、今に至ります。
靖子: 戻られる前に期間を決めてらしたから戻ったという。
又吉: そうですね。経営していたので、まあワガママですよね、「1年間の休みをくれ」という。でもネットは繋がっていたので、従業員の人たちとか指示司令とかネットからできたので、まったく何もしなかったという訳ではないんですけれども。
朝起きて、ただボーっとしてというか。そして、初めて自分のためだけに食事を作って、静かに自分のためだけに食べた時に、号泣したんですね。今までの人生の中で初めての経験だったし、こんなに自分を大切に扱わなかった、自分はいつも歩きながら走りながら食べる状態だったので、ほんとに自分にも悪かったなと反省しましたし、あとは、本当に何もしない自分を許すというプロセスでしたね、1年間。
靖子: 非日常を体験して日常に戻ってきた時に、シンプル&ラグジュアリーと感じたもの、それをどう生かしていくかというところで何か工夫されたことは?
又吉: 戻ってきた時に、那覇のサンエーなんですけれども、宇宙船?に帰りましたね。「これがラグジュアリーと思っていた自分が何だったのか」と逆に思って、そこから自分の断捨離がたくさん始まるんですけど、今はほんとにミニマリストとして、クローゼットの中もほんとにスカスカだし、いつでも春美さんのようにスーツケース1つでどこでも行ける態勢なんですね。
先ほど春美さんに「お住まいはどちらですか」と聞いたら「地球です」と言われて、「うわー、これ言ってみたい」と思ったので、次の憧れが増えるなと思います。
靖子: 地球に住んでいる春美さん(笑)。今スーツケース1つでと話が出てきたと思うんですけれども、ほんとにスーツケース1つで、まあ2つになったり1つになったりですかね。
田中: そうですね。全財産が今3つで、1つは会社の書類とかなんですけれども、ジャンル的に見たら3つですね。
靖子: もともとイギリスのハロッズという高級店、ダイアナ妃とかもいらしてた所にお勤めでしたので、そこではちゃんと住んでいたんですよね。ちゃんと住んで、ある意味ラグジュアリーな方々と接しながら、日本人としてトップでやっていくというのはすごく大変なことだと思うんですけれども、そこからそれを手放すというか、今のライフスタイルになっていったきっかけだったり…
田中: はい。私人生で40回以上、カウントできなくなっているのでしてないんですけど、引越しをしているんですね。特に大人になってから海外へ自分で好きに行って、行く度に引越し大変なんです。
で、行く度に何かが消えていって、最終的な形が今なんですけど、大きな意味では10年ぐらい前に、その時はシンガポールにいたんですけど、一旦日本に帰ろうと思って、船便で送って飛行機で送って、自分は3つぐらい抱えてと普通の形をしていたんですけど、日本に帰ってきた時に「お友達が旅行に行くので猫の世話してくれない?」と。「暇だからいいよー」と、それが終わって2週間くらい経ったら違う友達が、「うちもちょっと犬いるから来て」と言われて、かれこれ1年半ぐらいそんな生活をしたんですね。「あっスーツケース2個でいいんだ」とその時に思って。
プラス、私は経験してないんですけど、311の震災の時に、実家に置いてあった荷物が滅茶滅茶になってしまって、弟から1カ月後くらいに電話がきて、「もう2階には上がれないから、お姉さん荷物は諦めてくれない?」と電話がきました。「あ、もういらない物なんだなー」と思ったそのスタイルが今です。
靖子: 何かこうしたいからしたというよりは、自然にそういうふうになっていく、必要だからそうなったということですね。
田中: そうですね、私の場合は。
靖子: 最初は戸惑いましたか?。
田中: 戸惑わなかったですね。
靖子: それはもう、自然に。
田中: 自然に。気がついたら、いらなくていいんだなーと。
靖子: それはすごく自分の中でラグジュアリーとかに繋がってくるものだったりもしますか、今となっては。
人との出会いが「豊かさ」
田中: そうですね、特に去年の4月からちゃんとした定収入も無いんですけど、そういう生活をするようになったから見えるものというのもすごく……。あと、3日、長くても1週間くらいしか同じ場所にいないんですけど、そうすると出会うということがものすごい意味を持ってくるんですね。それがすべてリッチネスだろうなあと思います。
靖子: そういう意味で人との出会い、男さんのお店の中で、普段沖縄に住んでいない方たちが来てコミュニケーションをとっていく中で、お話を聞いていてどうですか?
金城: ほんとに人の出会いというのは奇跡みたいなことがあって、僕は結構、無知というか至らないところが多くて、器一つからいろいろ学ぶんですけれども、知っている人が教えてくれるんですよね。それを教えて、お互いまた次に会った時にもう1つ上、もっと知っていくと、お互いがお互いを高め合ってくれるというか、初めて会った時よりも根っこの思うところがすっとハマると、そこは何にも変えられない。人が人を変えていくというのは、この瞬間もそうですけど、と思います。
靖子: ありがとうございます。千恵子さんも、人との繋がりという点でどうでしょう?
又吉: 先ほどの伊平屋の話から繋がるんですけど、一人ぼっちになった時に、今度は友達をこのラグジュアリーな島に呼ぼうと思って、計画を立てるんですね。三段ベッドを買ったりで、だんだんまた物が増えるんですよ。
で、必ず1泊しないと帰れない島なので、あまり来ないんですね、人が。なので、どんどんまた人恋しくなるんですね。で、近所のおばあちゃんとかもちろんいらっしゃるんですけど、やはり私が今まで大切にしてきた人間関係とか、お友達とか親友とかが、スポッと離れた時に、「あー、やっぱり物は無くなってもいいんだけど、人というのは人生の中で欠かせないものだな」と思って、1年で帰って、でも会社には戻れなくなっちゃったんですけどね。そこからまた、違う自分の好きなものを見つけて、人との関わりというのを本当に大切にしています。
撮影:寺前陽司、上田修司、清川佑介